↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら最悪の領主で破滅寸前の領地を押し付けられたので内政チートで立て直します  作者: レモンティー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
81/101

第八十一話 宿敵を追い詰めたのに、老将軍が追撃をやめた

黒鷲平原。

帝国軍の増援四千が、戦場へ現れた。

王国軍の左翼が、危険にさらされる。

「……左翼が持ちません!」

伝令が叫んだ。

エリオは、地図を見つめた。

「……予備隊を左翼へ!」

しかしヴァルクが止めた。

「待て」

エリオが顔を上げた。

「……将軍?」

ヴァルクは、遠くの帝国軍を見つめていた。

「……あれは、囮だ」

「……囮?」

「バルドは、俺を誘っている」

エリオは地図を見た。

「……なるほど」

バルドの本隊は、中央から少しずつ後退していた。

まるで、王国軍に追撃を促すように。

「……追撃すれば、敵の増援に側面を突かれる」

エリオが呟いた。

ヴァルクは頷いた。

「そうだ」

帝国軍本陣。

バルドは、王国軍の動きを見ていた。

「……来い、ヴァルク」

副官が尋ねた。

「……何を待っているのですか?」

「追撃だ」

バルドは笑った。

「俺の本隊が後退すれば、ヴァルクは追ってくる」

「……なぜ?」

「二十四年前の恨みがある」

バルドは続けた。

「俺を討てる機会を、逃すはずがない」

王国軍本陣。

ヴァルクは、静かに剣を下ろした。

「……追撃しない」

エリオが頷いた。

「……はい」

しかし、周囲の将軍たちは驚いた。

「……なぜですか!」

「敵が後退しています!」

「今なら、バルドを討てます!」

ヴァルクは、静かに答えた。

「……討てるかもしれん」

「ならば!」

「だが、左翼の兵が死ぬ」

会議室が静かになった。

ヴァルクは続けた。

「俺の復讐のために、兵を犠牲にするつもりはない」

王国軍は、追撃を中止した。

代わりに、左翼の防御を強化した。

帝国軍の増援は、王国軍の側面を突破できなかった。

バルドは、遠くからその様子を見ていた。

「……追ってこないか」

副官が尋ねた。

「……どうされますか?」

バルドは、しばらく黙っていた。

そして、静かに笑った。

「……変わったな、ヴァルク」

戦闘は、日没とともに終わった。

双方に損害が出た。

しかし、決着はつかなかった。

王国軍は、防衛線を維持した。

帝国軍は、後退した。


その夜。

ヴァルクは、戦死者の報告書を見つめていた。

エリオが訪れる。

「……将軍」

「何だ?」

「今日は、ありがとうございました」

ヴァルクは顔を上げた。

「……何の礼だ?」

「追撃を止めてくださったことです」

ヴァルクは少し笑った。

「……当然の判断だ」

エリオは首を振った。

「いいえ」

そして、静かに続けた。

「私なら、追撃していたかもしれません」

ヴァルクは黙った。

エリオは続けた。

「敵将を討てる機会だと思って……」

ヴァルクは、静かに言った。

「……俺も、若い頃なら追撃した」

「……はい」

「だが、二十四年前に学んだ」

ヴァルクは続けた。

「勝利より、大切なものがある」

エリオは頷いた。

「……兵士の命ですね」

「そうだ」

ヴァルクは静かに笑った。

「勝つために兵を使うのではない」

そして、続けた。

「兵を生きて帰すために、勝つのだ」


その夜。

エリオは、地図を広げていた。

バルドの重装騎兵。

左右への機動。

中央突破。

そして、退却を利用した誘導。

すべてを並べていた。

「……なるほど」

エリオは、静かに呟いた。

「バルドは、敵を追撃させるのが得意なのか」

その瞬間、エリオの手が止まった。

「……ならば」

彼は、地図に新しい線を引いた。

「追撃させなければいい」

そして、少し考えた。

「……いや」

エリオは、ゆっくりと笑った。

「追撃する必要がない状況を作ればいい」


翌朝。

エリオは、ヴァルクの執務室を訪れた。

「……将軍」

「何だ?」

「バルドを倒す作戦を考えました」

ヴァルクは顔を上げた。

「……ほう」

エリオは地図を広げた。

「敵の突撃を止めるだけでは、勝てません」

「……そうだな」

「敵が退却した後の動きまで、制御します」

ヴァルクは、しばらく地図を見つめていた。

そして、静かに笑った。

「……面白い」

エリオは頷いた。

「今度こそ、決着をつけましょう」

ヴァルクは、ゆっくりと立ち上がった。

「……ああ」

そして、古い剣を手に取った。

「二十四年の戦いを、終わらせよう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。