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転生したら最悪の領主で破滅寸前の領地を押し付けられたので内政チートで立て直します  作者: レモンティー


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第七十七話 老将軍の昔の戦友を調べたら、誰も生き残っていなかった

アルフォンス城。

帝国軍の再編が始まった翌朝。

ヴァルクは、古い木箱を開いていた。

中には、二十四年前の戦闘記録が収められている。

黄ばんだ紙。

擦り切れた地図。

そして、戦死者の名簿。

ヴァルクは、その一枚を手に取った。

『王国暦三百十二年 黒鷲平原の戦い』

出撃兵力、千二百。

帰還兵力、三百七十一。

戦死、行方不明、八百二十九。

「……二十四年か」

ヴァルクは静かに呟いた。

あの日のことは、今でも鮮明に覚えている。

黒い騎兵。

折れた軍旗。

そして、親友ローデンの最後の言葉。

『生き残れ』

ヴァルクは、名簿の最後に書かれた名前を見つめた。

ローデン・ハイツ。

戦死。

「……お前の言う通り、生き残ったぞ」

返事はなかった。


その日の午後。

エリオが、ヴァルクの執務室を訪れた。

「ヴァルク将軍」

「何だ?」

「二十四年前の戦闘記録を見せていただけませんか?」

ヴァルクは顔を上げた。

「……黒鷲平原の戦いか?」

「はい」

エリオは頷いた。

「バルド・グランツの戦術を調べたいのです」

ヴァルクは、しばらく黙っていた。

そして、木箱を差し出した。

「好きに見ろ」

「ありがとうございます」

エリオは、記録を読み始めた。

しかし、すぐに眉をひそめた。

「……おかしいですね」

「何がだ?」

「王国軍の配置です」

エリオは地図を指さした。

「当時の王国軍は、中央の丘を守っていました」

「そうだ」

「ですが、バルド軍は正面から攻撃していません」

「……ああ」

「左右に分かれて、側面から攻撃しています」

ヴァルクは頷いた。

「その通りだ」

エリオは続けた。

「それなら、中央の防御陣地を放棄して撤退するべきだったのでは?」

ヴァルクは、静かに目を閉じた。

「……撤退命令は出した」

「……え?」

「だが、遅かった」

二十四年前。

黒鷲平原。

若きヴァルクは、撤退を命じていた。

しかし、敵の騎兵はすでに側面へ回り込んでいた。

「……ヴァルク!」

ローデンが叫んだ。

「ここは俺が食い止める!」

「駄目だ!」

ヴァルクは叫び返した。

「一緒に撤退するぞ!」

ローデンは笑った。

「全員が逃げれば、全員が追いつかれる!」

そして、剣を抜いた。

「俺が時間を稼ぐ!」

「……ローデン!」

「生き残れ!」

それが、最後だった。

現在。

ヴァルクは、ゆっくりと目を開いた。

「……あの日、俺は判断を誤った」

エリオは黙っていた。

「敵の正面攻撃に備えすぎた」

「……はい」

「バルドが側面から来る可能性を、軽く見ていた」

ヴァルクは続けた。

「その結果、八百人以上を失った」

エリオは、しばらく黙っていた。

そして、静かに言った。

「……私も、同じです」

ヴァルクが顔を上げた。

「……何?」

「黒岩谷でも、白霧峡谷でも、私は敵の動きを読み違えました」

ヴァルクは黙った。

エリオは続けた。

「ですが、だからこそ学びたいのです」

「……何を?」

「バルドに、どうすれば勝てるのか」

ヴァルクは、しばらくエリオを見つめていた。

そして、静かに笑った。

「……若いな」

「……はい?」

「俺は二十四年間、どうやって復讐するかばかり考えていた」

ヴァルクは、古い地図を広げた。

「だが、お前は違う」

「……何がですか?」

「どうすれば勝てるかを考えている」

エリオは頷いた。

「はい」

ヴァルクは、静かに言った。

「ならば、一緒に考えよう」


その夜。

エリオは、二十四年前の生存者名簿を調べていた。

当時、帰還した三百七十一人。

その後、病死、戦死、退役。

現在も軍に所属している者は、ヴァルクだけだった。

「……誰も残っていないのか」

エリオは呟いた。

しかし、名簿の最後に、一つの記録があった。

『ローデン・ハイツ 戦死』

『遺族:妻一名、子一名』

エリオは、その記録を見つめた。

「……子供がいたのか」

そして、静かに考え込んだ。

二十四年前の戦争。

八百二十九人の犠牲。

それは、ただの数字ではない。

一人一人に、家族がいた。

生活があった。

未来があった。

エリオは、ゆっくりと名簿を閉じた。

「……今度こそ」

その声は、静かだった。

「同じことを繰り返さない」

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