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転生したら最悪の領主で破滅寸前の領地を押し付けられたので内政チートで立て直します  作者: レモンティー


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第七十一話 若い参謀が敵の進軍を三日止めたので、将軍たちが黙り込んだ

帝国軍が動いた。

エリオの予測した日だった。

「……帝国軍第一軍、進軍開始!」

斥候の報告を聞いた瞬間、エリオは地図に駒を置いた。

「兵力は?」

「約六万!」

「進軍方向は?」

「中央街道です!」

エリオは頷いた。

予測通りだった。

しかし、喜ぶのはまだ早い。

敵が動く日を当てただけでは、戦争には勝てない。

「……レアル様」

エリオが振り返った。

「作戦を実行したいと思います」

レアルは地図を見た。

「兵力は?」

「三千人です」

その言葉に、軍議室がざわめいた。

「三千?」

「敵は六万だぞ!」

「二十倍の兵力差ではないか!」

エリオは静かに答えた。

「戦うつもりはありません」

一人の将軍が眉をひそめた。

「……何?」

「敵の進軍を、三日間止めます」

王国東部。

中央街道。

帝国軍六万は、整然と進軍していた。

先頭には工兵隊。

その後ろに歩兵。

さらに騎兵と補給隊が続く。

ガイゼルは馬上から街道を見渡していた。

「……王国軍の動きは?」

副官が答える。

「前方に小規模な部隊を確認しました」

「兵力は?」

「約三千」

ガイゼルは眉をひそめた。

「……少ないな」

「撃破しますか?」

「待て」

ガイゼルは地図を確認した。

前方には、低い丘陵と小川がある。

街道は、その間を通っていた。

「……偵察を増やせ」

「承知しました」


その頃。

エリオは、街道から離れた丘の上にいた。

「……敵が止まりました」

副官が報告する。

「予想通りです」

エリオは頷いた。

今回の作戦は、敵を撃破するものではない。

敵に危険があると思わせる。

それだけだった。

街道沿いには、王国軍の旗がいくつも立っていた。

しかし、実際の兵力は少ない。

兵士たちは、丘の裏側を移動しながら、別の場所に旗を立て直していた。

遠くから見れば、大軍が移動しているように見える。

「……ガイゼルなら、確認するはずだ」

エリオは呟いた。

「敵の規模が分からないまま、進軍することはない」

帝国軍本陣。

ガイゼルは、斥候の報告を聞いていた。

「……北側の丘に王国軍の旗を確認」

「兵力は?」

「不明です」

「南側は?」

「こちらにも旗があります」

ガイゼルは地図を見つめた。

「……妙だな」

副官が尋ねた。

「何がでしょう?」

「王国軍が、姿を見せすぎている」

「……罠ですか?」

「その可能性がある」

ガイゼルは命じた。

「前進を停止。高地を確認しろ」

一日目。

帝国軍は、進軍を停止した。

二日目。

斥候が周辺の丘陵を調査した。

しかし、王国軍の姿はすでに消えていた。

「……敵がいません!」

副官が報告した。

ガイゼルは眉をひそめた。

「……移動したか」

「追撃しますか?」

「いや」

ガイゼルは地図を見た。

「敵の目的が分からん」

そのとき別の伝令が駆け込んできた。

「……将軍!」

「何だ?」

「前方の橋が使用できません!」

ガイゼルが顔を上げた。

「……破壊されたのか?」

「いいえ!」

伝令は答えた。

「橋の手前で、大型の荷車が横転しています!」

エリオは、丘の上から街道を見下ろしていた。

「……荷車は?」

副官が答える。

「予定通り、橋の手前で横転させました」

「積み荷は?」

「石材です」

「……よし」

今回の作戦で使った荷車は、王国軍が用意したものだった。

橋を破壊すれば、帝国軍は工兵隊を使って修復する。

しかし、橋そのものが無事なら、敵はまず荷車を撤去しようとする。

しかも、大量の石材を積んだ荷車は簡単には動かせない。

「……敵の工兵隊なら、半日で撤去するでしょう」

副官が言った。

エリオは頷いた。

「それでいい」

「……半日だけですか?」

「半日あれば、次の準備ができる」

三日目。

帝国軍は、ようやく橋を通過した。

しかしその先の街道には、別の問題が待っていた。

「……将軍!」

「今度は何だ?」

「前方の街道が、ぬかるんでいます!」

ガイゼルは馬を進めた。

確かに、街道の一部が泥で覆われていた。

雨が降ったわけではない。

近くの用水路から、水が流れ込んでいた。

「……水路を開いたのか」

ガイゼルは呟いた。

副官が尋ねた。

「修復しますか?」

「当然だ」

ガイゼルは答えた。

しかし、その表情は険しかった。

「……アルフォンスではないな」

「……はい?」

「この作戦を考えたのは、別の人間だ」

アルフォンス城。


三日後。

エリオが帰還した。

損害は軽微。

帝国軍の進軍を、三日間遅らせることに成功した。

軍議室では、老将軍たちが報告を聞いていた。

「……三千人で六万を三日止めた?」

「しかも、ほとんど戦っていない?」

エリオは頷いた。

「はい」

一人の将軍が尋ねた。

「……なぜ、こんな作戦を思いついた?」

エリオは答えた。

「ガイゼルは、危険を確認せずに進軍しません」

「……それが?」

「ならば、確認する必要がある状況を作ればいいのです」

会議室が静かになった。

ヴァルクが笑った。

「……見事だ」

レアルも頷いた。

「よくやった、エリオ」

エリオは深く頭を下げた。

「ありがとうございます」

しかしレアルは続けた。

「だが、次は通用しないぞ」

エリオは顔を上げた。

「……はい」

「ガイゼルは、必ず対策する」

エリオは静かに答えた。

「分かっています」

そして、少し笑った。

「だから、次の作戦を考えます」

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