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転生したら最悪の領主で破滅寸前の領地を押し付けられたので内政チートで立て直します  作者: レモンティー


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第六十四話 若い参謀に作戦を任せたら、老将軍たちが猛反対した

白霧峡谷。

王国東部にある、細長い谷。

両側には急な斜面が続き、中央には一本の街道が通っている。

大軍が横に広がれない地形だった。

エリオは、その峡谷を利用した作戦を提案した。

「……敵の先鋒を峡谷へ誘い込みます」

軍議室に、静かな声が響いた。

「敵が進入したところで、後方を遮断します」

一人の将軍が眉をひそめた。

「……危険すぎる」

別の将軍も頷いた。

「敵将はガイゼルだぞ!」

「そんな単純な罠にかかるわけがない!」

エリオは黙った。

しかし、引き下がらなかった。

「……単純な罠ではありません」

「何?」

「敵に、峡谷を通る必要があると思わせます」

エリオは地図を広げた。

「こちらが東側の街道を封鎖すれば、敵は白霧峡谷を使う可能性があります」

ヴァルクが尋ねた。

「……敵が別の道を選んだら?」

「その場合は、作戦を中止します」

「……なるほど」

しかし、老将軍たちは納得しなかった。

「若造が!」

「戦場を甘く見るな!」

「黒岩谷の失敗を忘れたのか!」

その言葉に、エリオの表情が変わった。

黒岩谷。

八百人の損害。

あの日以来、エリオは何度も夢を見ていた。

自分の命令で出撃した兵士たち。

戻らなかった者たち。

そして、遺族の顔。

「……忘れていません」

エリオは静かに答えた。

「一日たりとも」

会議室が静まり返った。

「だからこそ、今度は勝ちたいのです」

レアルが口を開いた。

「……エリオ」

「はい」

「お前の作戦には、問題がある」

エリオは頷いた。

「……承知しています」

「敵が峡谷へ入らなければ成立しない」

「はい」

「さらに、敵が先に高地を確保すれば、こちらが不利になる」

「……はい」

レアルは続けた。

「それでも、やりたいか?」

エリオは、しばらく黙っていた。

そして、答えた。

「……やらせてください」

レアルは頷いた。

「分かった」

会議室がざわめいた。

「……アルフォンス卿!」

「本気ですか!」

レアルは静かに答えた。

「ただし、条件がある」

エリオが顔を上げた。

「……条件?」

「撤退基準を決めろ」

「……はい?」

「敵の動きが想定と違えば、迷わず撤退する」

レアルは続けた。

「勝つことより、兵を生きて帰すことを優先しろ」

エリオは深く頭を下げた。

「……承知しました」


翌日。

エリオは、三千人の兵を率いて出発した。

ヴァルクが見送りに来ていた。

「……エリオ」

「はい」

「一つだけ覚えておけ」

「……何でしょう?」

ヴァルクは静かに言った。

「作戦通りに進んでいるときほど、疑え」

エリオは頷いた。

「……はい」

ヴァルクは続けた。

「敵も考えている」

「……分かっています」

「いや」

ヴァルクは首を振った。

「分かっているつもりになるな」

エリオは、しばらく黙っていた。

そして、深く頭を下げた。

「……ありがとうございます」


三日後。

白霧峡谷。

王国軍は、予定通り配置についた。

斥候が報告する。

「……帝国軍の先鋒が接近しています!」

エリオは地図を見つめた。

「……兵力は?」

「約五千!」

「……よし」

エリオは頷いた。

「予定通り、峡谷へ誘導する」

しかし

その頃。

帝国軍本陣。

ガイゼルは、同じ地図を見つめていた。

「……白霧峡谷か」

副官が尋ねた。

「……通過しますか?」

ガイゼルは静かに笑った。

「通過する」

「……罠では?」

「罠だろうな」

副官が驚いた。

「……では、なぜ?」

ガイゼルは答えた。

「罠を仕掛ける者は、自分が安全な場所にいると思い込む」

そして、地図の高地を指さした。

「その安全な場所を、先に奪えばいい」

白霧峡谷。

エリオは、敵軍が峡谷へ進入するのを確認した。

「……来た」

予定通り。

すべてが、予定通りだった。

しかしヴァルクの言葉が、頭をよぎった。

『作戦通りに進んでいるときほど、疑え』

エリオは、ゆっくりと周囲を見渡した。

そして遠くの高地に、見慣れない旗を見つけた。

「……まさか」

その瞬間、背後から、伝令が駆け込んできた。

「……エリオ様!」

「何だ!」

「敵軍が、我々の背後に現れました!」

エリオの顔色が変わった。

「……何?」

伝令は叫んだ。

「……包囲されています!」

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