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転生したら最悪の領主で破滅寸前の領地を押し付けられたので内政チートで立て直します  作者: レモンティー


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第六十話 最悪の領主だった俺が、王国で一番必要な人間になっていた

王国歴四百二十七年。

秋。

王都では、王位継承を決定するための大貴族会議が開かれていた。

第一王子。

第二王子。

そして、王国の主要貴族たち。

長く続いた王位継承争いは、ようやく終わろうとしていた。

王宮の会議室。

「……王位継承順位に従い、第一王子殿下を次期国王とする」

議長が宣言した。

会議室に拍手が響いた。

しかし第二王子は、険しい顔をしていた。

「……納得できん」

一人の貴族が立ち上がった。

「ですが、王国法では……」

「法など、どうとでもなる!」

第二王子が怒鳴った。

その瞬間。

会議室が静まり返った。

レアルは、ゆっくりと立ち上がった。

「……殿下」

「何だ!」

「法を変えたいなら、正式な手続きを取ってください」

「……貴様!」

「王位を奪うために法を破れば、次の王も同じ方法で倒されます」

第二王子は唇を噛んだ。

レアルは続けた。

「王国を、これ以上混乱させる必要はありません」

沈黙が落ちた。

やがて。

第二王子は、椅子に座り込んだ。

「……勝手にしろ」


数日後。

第一王子が、正式に国王として即位した。

王都では鐘が鳴り響き、人々が祝福した。

市場には商品が並び、街道には荷車が行き交っていた。

王国は、再び動き始めた。

しかし新国王には、大きな問題が残されていた。

財政。

貴族の腐敗。

軍の再編。

そして、帝国との外交。

それらを解決できる人物は、限られていた。

王宮の謁見の間。

新国王は、レアルを呼び出した。

「……レアル・アルフォンス」

「はい」

「そなたには、先王の時代から多くの功績がある」

「恐れ入ります」

「王国財政を立て直し、帝国軍を退け、王都の民を飢えから救った」

「必要なことをしただけです」

新国王は頷いた。

「……そこで、頼みがある」

「何でしょう?」

「王国宰相となってほしい」

謁見の間が静まり返った。

ミディアが息を呑んだ。

リシアも、レアルを見つめた。

レアルは少し考えた。

「……宰相ですか」

「そうだ」

「仕事が増えそうですね」

新国王は小さく笑った。

「当然だ」

「給料は?」

ミディアが顔を覆った。

「……またですか!」

新国王は、思わず笑った。

「帝国の皇帝にも、同じことを聞いたそうだな」

「はい」

「ならば、帝国より良い条件を用意しよう」

レアルは少し笑った。

「それは魅力的ですね」

しかしすぐに表情を引き締めた。

「……ただし、条件があります」

新国王は頷いた。

「申してみよ」

レアルは、一枚の書類を差し出した。

『王国制度改革案』

そこには、五つの改革が記されていた。

第一。

王国の税制を統一し、不当な徴税を禁止する。

第二。

国家予算と決算を公開し、独立した監査制度を設ける。

第三。

王国軍の給与と補給を、正式な国家機関が管理する。

第四。

商業取引の自由を保障し、貴族による不当な独占を制限する。

第五。

国王を含むすべての権力者が、王国法に従う。

新国王は、最後の項目を見つめた。

「……王も、法に従う?」

「はい」

「それでは、王の権力が弱くなるではないか」

レアルは頷いた。

「弱くなる部分もあります」

「……それを、余に受け入れろと?」

「はい」

謁見の間が静まり返った。

レアルは続けた。

「陛下。強い王がいる国は、王が死ねば弱くなります」

新国王は黙った。

「ですが、制度が強い国は、王が変わっても動き続けます」

「……制度が?」

「はい」

レアルは静かに言った。

「王が強い国ではなく、王がいなくても崩れない国を作るんです」

新国王は、長い間黙っていた。

そして「……分かった」

ゆっくりと頷いた。

「そなたの条件を受け入れよう」


数か月後。

王国では、大規模な制度改革が始まっていた。

税制の見直し。

国家会計の公開。

軍事補給制度の統一。

商業取引の自由化。

そして、地方領主への監査制度。

改革は、決して順調なことばかりではなかった。

反発する貴族。

利益を失う商人。

変化を恐れる官僚。

問題は山ほどあった。

しかし王国は、少しずつ変わり始めていた。

アルフォンス領。

かつて荒れ果てていた土地には、豊かな農地が広がっていた。

道路は整備され、市場には商人が集まっている。

学校。

病院。

倉庫。

工房。

そして、多くの人々の笑顔。

レアルは、城の窓から領地を見下ろしていた。

ミディアが隣に立った。

「……変わりましたね」

「そうだな」

「昔は、誰もあなたを信用していませんでした」

「知っている」

「領民は、あなたを恐れていました」

「そうだったな」

ミディアは小さく笑った。

「でも、今は違います」

レアルは窓の外を見た。

市場で笑う商人。

畑で働く農民。

学校へ向かう子供たち。

「……そうだな」

ミディアが尋ねた。

「……レアル様」

「何だ?」

「最初から、ここまで考えていたのですか?」

レアルは少し考えた。

そして、首を振った。

「いや」

「……そうなのですか?」

「ああ」

レアルは静かに答えた。

「最初は、領地が潰れないようにしたかっただけだ」

ミディアは笑った。

「……それが、王国まで救ってしまったのですね」

「面倒な話だ」

レアルは小さく笑った。


その夜。

レアルは、一人で執務室にいた。

机の上には、アルフォンス領の最新の統治報告書が置かれていた。

人口。

税収。

農業生産。

商業取引。

軍事力。

そして、統治度。

すべてが、かつてとは比較にならないほど改善していた。

レアルは、静かに呟いた。

「……ここまで来たか」

その瞬間。

統治システムが、突然光った。


【統治システム】

《統治対象の拡大を確認》

《領地級統治条件:達成》

《国家級統治条件:達成》

レアルは眉をひそめた。

「……国家級?」

画面が切り替わる。


【統治システム更新】

・統治度:99 → 100

・統治対象:アルフォンス領 → 王国全土

・統治権限:領主級 → 国家級

・国家安定度:改善

・国家経済力:上昇

・軍事補給能力:上昇

【隠し条件達成】

《真の支配者》

レアルは画面を見つめた。

「……真の支配者?」

さらに、新たな表示が現れた。

【警告】

《世界統治システムが起動しました》

《国家級統治者を確認》

《他の統治者の存在を検知》

レアルの表情が変わった。

「……他の?」

画面には、さらに文字が浮かび上がった。

《あなた以外にも、成長できる者が存在します》

レアルは、しばらく動かなかった。

「……俺以外にも?」

そして次の瞬間。

画面が暗転した。

同じ頃。

帝国の宮殿。

皇帝は、一人で執務室にいた。

机の上には、王国との通商協定に関する報告書が置かれていた。

皇帝は、静かに笑っていた。

「……レアル・アルフォンス」

その名を呟く。

「ようやく、ここまで来たか」

皇帝の目の前にも、青白い光が浮かんでいた。

【世界統治システム】

《新たな国家級統治者を確認》

《対象:レアル・アルフォンス》

《統治権限:国家級》

皇帝は、ゆっくりと立ち上がった。

「……面白い」

そして、静かに笑った。

「ようやく現れたか」

その目には、歓喜にも似た光が宿っていた。

「二人目の支配者が」

アルフォンス城。

レアルは、消えた画面を見つめていた。

「……なるほど」

静かに呟く。

「この世界には、俺以外にも統治システムを使える人間がいるらしい」

そして、笑った。

「……面白くなってきたな」

かつて最悪の領主と呼ばれた男。

領民から恐れられ、破滅寸前の領地を押し付けられた男。

その男は、領地を立て直した。

王国を救った。

そして、今世界を動かす存在になろうとしていた。

だが本当の戦いは、まだ始まっていなかった。

【世界統治システム】

《国家級統治者:2名》

《世界統治競争:開始》

《最終目標:未公開》

レアルは、静かに笑った。

「……いいだろう」

そして、窓の外を見た。

夜のアルフォンス領には、無数の灯りが輝いていた。

「世界が相手でも、やることは同じだ」

その声は、静かだった。

「まずは、目の前の領地を豊かにする」


第一部完


次からは第二部「世界統治編」となります。

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