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転生したら最悪の領主で破滅寸前の領地を押し付けられたので内政チートで立て直します  作者: レモンティー


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第五十二話 敵将に勝つために、俺の領地を囮にすることにした

アルフォンス領東部。

そこには、三つの町と二十以上の村があった。

人口、およそ一万二千人。

農地。

倉庫。

製粉所。

そして、王国軍の補給拠点。

レアルは、その地域を一時的に放棄することを決めた。

しかし「……納得できません!」

町の代表者が叫んだ。

「我々に、故郷を捨てろとおっしゃるのですか!」

会議室には、東部の町長や村長たちが集まっていた。

レアルは静かに答えた。

「一時的に避難してもらう」

「同じことです!」

「家も畑も、全部ここにあるんです!」

「先祖代々の土地を捨てるなんて!」

怒号が響いた。

ミディアが心配そうにレアルを見た。

しかし、レアルは黙っていた。

やがて、一人の老人が立ち上がった。

「……領主様」

「何だ?」

「わしらは、昔の領主様を知っております」

会議室が静かになった。

老人は続けた。

「昔なら、領民がどうなろうと構わず、兵士だけを守ったでしょう」

レアルは黙った。

「ですが、今は違うと信じています」

老人は深く頭を下げた。

「……どうか、戻ってこられるようにしてください」

レアルは静かに頷いた。

「そのために、戦う」


翌日。

東部地域で、大規模な避難が始まった。

荷車。

家畜。

穀物。

農具。

そして、家財道具。

運べるものは、できる限り運び出された。

「……この鍋も持っていくの?」

子供が母親に尋ねた。

「ええ」

「……また、ここに帰ってこられる?」

母親は答えられなかった。

その様子を見ていたレアルは、ミディアに尋ねた。

「……避難先の住居は?」

「確保しています。ただし、全員が快適に暮らせるほどではありません」

「仮設住宅を増やせ」

「はい」

「食料は?」

「三か月分を確保しています」

「仕事は?」

「農民の一部は、避難先の農地で働けるよう調整中です」

レアルは頷いた。

「避難させて終わりではない。生活を続けられるようにしろ」

「承知しました」


五日後。

東部地域の主要な町は、ほぼ無人になった。

倉庫は空。

市場は閉鎖。

補給拠点の物資も移送された。

ただし、建物そのものは残されていた。

ヴァルクが尋ねる。

「……焼き払わないのですか?」

「焼く必要はない」

レアルは答えた。

「取り戻した後、また使う」

「ですが、敵に利用される可能性があります」

「それは承知している」

レアルは地図を指さした。

「だから、敵が利用しそうな施設は監視する」

「……監視?」

「敵がどこに兵を集め、どこに物資を置くか。それを調べる」

ヴァルクが頷いた。

「……敵の配置を把握するのですね」

「そうだ」


一週間後。

帝国軍が、アルフォンス領東部へ進入した。

先鋒部隊が町へ入る。

しかし「……誰もいない?」

帝国兵が驚いた。

市場は空。

倉庫も空。

家畜もいない。

「……完全に避難している」

指揮官が呟いた。

「……敵は、何を考えている?」

その報告は、すぐにガイゼルへ届けられた。

帝国軍本陣。

ガイゼルは地図を見つめていた。

「……東部の町を占領しました」

副官が報告した。

「ですが、食料はほとんど残っていません」

「そうだろうな」

ガイゼルは頷いた。

「アルフォンスは、我々を奥へ誘っている」

「……罠でしょうか?」

「間違いない」

副官が顔を上げた。

「では、撤退しますか?」

「いや」

ガイゼルは地図の中央を指さした。

「ここを補給拠点にする」

「……敵の町を?」

「そうだ」

「ですが、物資はありません」

「本国から運べばいい」

ガイゼルは続けた。

「建物が残っている。倉庫も使える。道路も整備されている」

副官は頷いた。

「……なるほど」

「アルフォンスは、町を取り戻すつもりで焼かなかった」

ガイゼルは笑った。

「ならば、我々が使わせてもらおう」


三日後。

レアルのもとに、報告が届いた。

「……敵軍が東部の町を補給拠点にしています」

ミディアが言った。

「予定通りだな」

「ですが、敵はかなり慎重です。倉庫を分散し、護衛を配置しています」

「そうか」

ヴァルクが尋ねる。

「……どうしますか?」

レアルは地図を見つめた。

「敵の補給路は、かなり長くなった」

「はい」

「そして、敵は町を守るために兵力を分散している」

「……そうですね」

レアルは静かに笑った。

「ならば、次は補給路を切る」


その夜。

レアルは軍議を開いた。

「……作戦を説明する」

地図には、帝国軍の補給路が描かれていた。

三本の補給路。

そのうち、二本は東部の町を経由していた。

「敵は、補給路を分散している」

「はい」

「だが、すべての補給路を守るには、兵力が必要だ」

レアルは続けた。

「こちらは、補給路をすべて切る必要はない」

エリオが尋ねる。

「……一つだけですか?」

「違う」

レアルは首を振った。

「敵に、どこが本命か分からなくさせる」

ヴァルクが目を細めた。

「……陽動ですか?」

「そうだ」

レアルは地図の三か所を指さした。

「小規模な襲撃を繰り返す。敵が護衛を増やしたところで、別の補給路を狙う」

「……敵を疲弊させるのですね」

「それだけではない」

レアルは静かに答えた。

「敵の補給隊を、決まった場所に集めさせる」

ミディアが顔を上げた。

「……集める?」

「そうだ」

レアルは地図の一点を指さした。

そこは、東部の町へ続く大きな街道だった。

「敵が安全だと思う場所を作る」

そして、笑った。

「そこを、最後の戦場にする」


【統治システム更新】

・東部住民避難:完了

・帝国軍占領地域:拡大

・敵軍補給路:延伸

・王国軍補給網:維持

【新規イベント】

《補給路誘導作戦》

《敵軍兵力分散:進行中》

《決戦準備:開始》

レアルは画面を見つめた。

「……ガイゼル」

その名を、静かに呟いた。

「今度は、お前に選ばせる」

安全な道。

危険な道。

そして、勝てると思う戦場。

そのすべてを、こちらが用意する。

だが帝国軍の将軍も、同じように笑っていた。

「……アルフォンス」

ガイゼルは地図を見つめた。

「貴様が何を考えているか、少し分かってきたぞ」

そして、副官に命じた。

「補給隊の護衛を増やせ」

「……はい!」

「さらに、予備兵を後方へ移動させる」

副官が驚いた。

「……後方ですか?」

「そうだ」

ガイゼルは静かに答えた。

「敵が補給路を狙うなら、そこが戦場になる」

二人の将軍は、同じ場所を見ていた。

そして次の戦いが、始まろうとしていた。

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