↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら最悪の領主で破滅寸前の領地を押し付けられたので内政チートで立て直します  作者: レモンティー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
51/101

第五十一話 帝国軍の食料を買い占めたら、敵の将軍が笑い始めた

帝国軍十万。

その巨大な軍隊を維持するためには、毎日、膨大な食料が必要だった。

穀物。

干し肉。

塩。

馬の飼料。

そして、それらを運ぶ荷車と人間。

レアルは机に広げた補給記録を見つめていた。

「……帝国軍の食料調達先が分かった」

ミディアが顔を上げた。

「本当ですか?」

「ああ」

レアルは地図の三か所を指さした。

「帝国軍は本国からの補給に加えて、国境周辺の商人から食料を購入している」

「はい」

「そのうち二つの市場は、王国の商人も利用している」

ミディアは頷いた。

「つまり、こちらが先に購入すれば……」

「帝国軍への供給量を減らせる」

レアルは答えた。

「ただし、王国の住民が必要とする食料まで買い占めるわけにはいかない」

「では、どうするのですか?」

「余剰分を先に契約する」

レアルは帳簿を閉じた。

「収穫前の穀物、倉庫に眠っている備蓄、輸出予定の商品。それらを適正価格で買い取る」

ミディアが小さく笑った。

「……また商人を使うのですね」

「商人は戦場の外でも働けるからな」


三日後。

国境周辺の市場では、異変が起きていた。

「……穀物が売り切れ?」

帝国軍の調達官が驚いた。

「はい」

商人は困った顔で答えた。

「今月の余剰分は、すでに契約済みです」

「誰が買った!」

「アルフォンス商業連合です」

調達官の顔が引きつった。

「……また、あの領主か!」

別の市場でも同じだった。

「干し肉は?」

「予約済みです」

「馬の飼料は?」

「こちらも契約済みで……」

「塩は!」

「申し訳ありません。今月分は……」

調達官は机を叩いた。

「……ふざけるな!」

しかし、商人たちは平然としていた。

「契約ですので」

帝国軍本陣。

ガイゼルは報告を聞いていた。

「……周辺市場からの食料調達量が減少しています」

副官が説明した。

「王国側の商人が先に購入契約を結んでいるようです」

「……なるほど」

ガイゼルは小さく笑った。

副官が首を傾げた。

「将軍?」

「アルフォンスは、こちらの食料を止めようとしている」

「はい」

「だが、少し遅かったな」

「……遅かった?」

ガイゼルは地図を広げた。

「我々の主力補給は、すでに帝国内からの輸送に切り替えてある」

副官が顔を上げた。

「……では、周辺市場の食料は?」

「補助的な調達先にすぎん」

「なるほど!」

「それに……」

ガイゼルは笑った。

「敵が食料を買えば、敵の金が減る」

副官は黙った。

「アルフォンスは、食料を大量に抱え込むことになる。保管費用も輸送費も必要だ」

「……つまり?」

「金を使わせればいい」

ガイゼルは静かに言った。

「食料を奪われても、こちらの軍は止まらん。だが、相手の財政は確実に消耗する」


一週間後。

レアルのもとに、報告が届いた。

「……帝国軍の進軍速度が落ちていません」

ミディアが言った。

「周辺市場からの調達は減っていますが、本国からの補給が増えています」

「そうか」

レアルは頷いた。

「敵は、最初から対応していたわけだ」

ヴァルクが腕を組んだ。

「……食料を買い集めた意味がありませんでしたか?」

「いや」

レアルは首を振った。

「王国軍の備蓄は増えた。民間への供給も維持できる」

「ですが、帝国軍への打撃は……」

「小さいな」

レアルは認めた。

「作戦としては失敗だ」

ミディアが心配そうに尋ねた。

「……どうしますか?」

レアルは地図を見つめた。

「敵の補給路を調べ直す」


その夜。

影を喰らう者から、報告が届いた。

『帝国軍、補給路を三系統に分散』

『主力補給路は帝国領内から国境を越えて延伸』

『輸送隊には常時護衛兵を配置』

『主要倉庫は複数地点へ分散』

レアルは報告書を読み終えた。

「……徹底しているな」

リシアが尋ねた。

「敵将ガイゼルですか?」

「そうだ」

レアルは頷いた。

「こちらが補給を狙うことを前提に、最初から仕組みを作っている」

「……厄介ですね」

「実に厄介だ」

レアルは少し笑った。

「だが、弱点がないわけではない」

「……弱点?」

「補給路が三本あっても、十万人が食べる量は変わらん」

レアルは地図の一点を指さした。

「敵は、進軍するほど補給路が長くなる」

「はい」

「ならば、もっと進ませる」

ヴァルクが顔を上げた。

「……さらに領土を放棄するのですか?」

「そうだ」

レアルは静かに答えた。

「ただし、今度は敵が欲しがる場所を用意する」


翌朝。

レアルは軍議を開いた。

「……次の作戦を説明する」

地図の中央。

そこには、アルフォンス領の東部が描かれていた。

「この地域を、一時的に放棄する」

会議室が静まり返った。

ミディアが驚いた。

「……領地を?」

「そうだ」

エリオが立ち上がった。

「お待ちください! そこには町があります!」

「分かっている」

「領民も暮らしています!」

「だから、先に避難させる」

レアルは続けた。

「敵に町を渡すのではない。敵を町へ誘い込む」

ヴァルクが地図を見た。

「……敵軍が奥へ進めば、補給路が長くなります」

「そうだ」

「ですが、我々の領地も危険になります」

「分かっている」

レアルは静かに答えた。

「だから、住民の命を最優先にする」


その頃。

帝国軍本陣。

ガイゼルは、新たな報告を受けていた。

「……王国軍が、東部の防衛線を後退させています」

「ほう」

「アルフォンス領の一部を放棄する動きです」

ガイゼルは地図を見つめた。

そして、笑った。

「……なるほど」

副官が尋ねる。

「追撃しますか?」

「する」

「罠の可能性は?」

「高い」

副官が驚いた。

「……では、なぜ?」

ガイゼルは静かに答えた。

「罠だと分かっていても、進む価値がある」

そして、地図の一点を指さした。

「アルフォンス領の東部には、王国軍の補給拠点がある」

「……はい」

「そこを奪えば、敵の物流網を分断できる」

ガイゼルは笑った。

「アルフォンスがこちらを誘うなら、こちらも誘いに乗ってやろう」


【統治システム更新】

・王国軍食料備蓄:増加

・帝国軍補給能力:維持

・王国財政負担:増加

・敵将ガイゼル:戦略適応継続

【新規イベント】

《アルフォンス領東部撤退作戦》

《住民避難:準備開始》

《敵軍誘導:開始》

レアルは画面を見つめた。

「……ガイゼル」

その名を、静かに呟いた。

「お前が補給を守るなら、補給路そのものを長くしてやる」

しかし帝国軍の将軍も、同じように考えていた。

敵の弱点を突く。

相手の作戦を利用する。

そして、最後に勝つ。

二人の戦いは、もはや兵士の数だけで決まるものではなくなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。