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転生したら最悪の領主で破滅寸前の領地を押し付けられたので内政チートで立て直します  作者: レモンティー


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第四十八話 敵将が俺と同じことを考えていたので、初めて作戦が失敗した

帝国軍の補給隊が、山道を通過する。

その情報が届いたのは、夜明け前だった。

「……敵の補給隊です!」

斥候が報告した。

「護衛は約五百。荷車は百台以上!」

レアルは地図を確認した。

「……場所は?」

「黒岩谷です」

ヴァルクが顔を上げた。

「……狭い谷です。補給隊を襲うには好都合ですが」

「そうだな」

レアルは考え込んだ。

「……護衛が少なすぎる」

ミディアが尋ねる。

「罠でしょうか?」

「可能性はある」

エリオが口を開いた。

「ですが、補給隊を見逃せば、敵軍はさらに前進します」

レアルは黙った。

統治システムには、補給隊の情報が表示されていた。

【敵補給隊】

・荷車:約120台

・護衛兵:約500

・推定積載物:食料・飼料

・襲撃成功時:敵軍補給能力低下

「……偵察を増やせ」

レアルは命じた。

「谷の出口と周辺の高地を確認する」

数時間後。

斥候から報告が戻った。

「……敵の大部隊は確認できません」

「本当か?」

「はい。周辺の高地にも、大規模な兵の移動は見られません」

ヴァルクが頷いた。

「……好機かもしれません」

レアルは地図を見つめた。

「エリオ」

「はい!」

「二千の兵を率いて、補給隊を襲撃しろ」

「承知しました!」

「ただし、深追いするな。敵の抵抗が強ければ、すぐに撤退しろ」

「はい!」

黒岩谷。

エリオ率いる王国軍二千が、谷の入口に到着した。

眼下には、帝国軍の補給隊が進んでいた。

「……見えた」

荷車が長い列を作っている。

護衛兵は少ない。

「……攻撃開始!」

エリオの命令で、王国軍が動いた。

矢が降り注ぐ。

帝国軍の護衛兵が混乱した。

「敵襲!」

「荷車を守れ!」

王国軍は一気に谷へ突入した。

最初の攻撃は成功した。

荷車が倒れ、帝国兵が逃げ始める。

「……いける!」

エリオは剣を掲げた。

「補給隊を制圧しろ!」

しかしその瞬間。

谷の奥から、角笛が響いた。

「……何?」

次の瞬間。

周囲の斜面から、帝国兵が現れた。

「……伏兵!」

エリオが叫んだ。

谷の入口にも、帝国軍が姿を現した。

退路が塞がれる。

「……しまった!」

帝国軍本陣。

ガイゼルは、静かに報告を聞いていた。

「……敵軍二千、谷へ進入しました」

「そうか」

「伏兵が包囲を開始しています」

ガイゼルは頷いた。

「……アルフォンスは、補給隊を狙うと読んでいた」

副官が尋ねる。

「ですが、敵将は慎重な人物では?」

「だからこそ、慎重な偵察をさせた」

ガイゼルは地図を指さした。

「伏兵は、谷の高地ではなく、さらに外側に隠した」

「……なるほど」

「敵の偵察が確認する範囲を、あえて空けておいたのだ」

副官は息を呑んだ。

「……敵の慎重さまで利用したのですね」

ガイゼルは静かに笑った。

「戦争とは、相手の考えを利用するものだ」

黒岩谷。

王国軍は、激しい攻撃を受けていた。

「……退路が塞がれています!」

兵士が叫ぶ。

エリオは歯を食いしばった。

「……突破する!」

しかし、敵の数が多すぎた。

矢が降り注ぐ。

槍が迫る。

兵士たちが倒れていく。

「……くそっ!」

エリオは剣を振るった。

そのとき背後から声が響いた。

「……エリオ隊長!」

振り向くと、若い兵士が倒れていた。

腹部に深い傷を負っている。

「……隊長。妹に、帰ると……」

若い兵士の名はノルド。出陣前、妹のために木彫りの小鳥を買っていた。

エリオはその小さな包みが鎧の隙間から落ちるのを見た。

「ノルド、目を開けろ!」

「……助けて……」

エリオは駆け寄った。

しかしその兵士の目から、光が消えた。

「……っ!」

エリオは拳を握りしめた。

「……撤退だ!」

「ですが、退路が!」

「突破する!」

エリオは叫んだ。

「生きて帰るぞ!」


夕方

レアルの本陣に、敗報が届いた。

「……エリオ隊、敗北!」

ミディアが顔を青くした。

「……損害は?」

レアルが尋ねた。

「二千のうち、帰還できたのは約千二百!」

沈黙が落ちた。

「……八百人」

レアルは呟いた。

エリオから届けられた遺品の中に、血の付いた木彫りの小鳥があった。

「これは?」

「ノルドという兵のものです。妹への土産だったと」

レアルは包みを置けなかった。

八百という数字が、初めて一人の名前と結びついた。

「戦死・行方不明を含め、約八百人です」

ヴァルクが拳を握った。

「……敵の罠でした」

レアルは黙っていた。

やがて、静かに言った。

「……俺の判断ミスだ」

ミディアが顔を上げた。

「レアル様……」

「補給隊の護衛が少なすぎると分かっていた」

レアルは地図を見つめた。

「それでも、攻撃を許可した」

「ですが、偵察では……」

「偵察の結果を過信した」

レアルは首を振った。

「敵が、こちらの偵察範囲まで読んでいる可能性を考えるべきだった」


その夜。

エリオが本陣へ戻った。

鎧は傷だらけだった。

顔には疲労が浮かんでいる。

「……申し訳ありません」

エリオは膝をついた。

「私の判断で、多くの兵を失いました」

レアルは立ち上がった。

「違う」

「……ですが!」

「攻撃を命じたのは俺だ」

エリオは顔を上げた。

レアルは静かに続けた。

「お前は、撤退できる兵を連れて帰った」

「……はい」

「それでいい」

エリオの目が揺れた。

「……レアル様」

レアルは窓の外を見た。

暗い空。

遠くには、戦場の火が見えた。

「……初めて、完全に読まれたな」


【統治システム警告】

《作戦失敗》

・王国軍損害:約800

・敵軍損害:軽微

・士気:低下

・敵将ガイゼル:戦略評価上昇

【重大警告】

《統治者の判断により、人的損失が発生しました》

レアルは画面を見つめた。

いつもなら、数字だけを確認していた。

だが今回は違った。

八百。

その数字の向こうに、八百人の人生があった。

「……数字だけでは、足りんな」

レアルは小さく呟いた。

そして、静かに立ち上がった。

「明日、兵士たちの前で話す」

ミディアが尋ねる。

「……何を?」

レアルは答えた。

「俺が間違えたことをだ」

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