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転生したら最悪の領主で破滅寸前の領地を押し付けられたので内政チートで立て直します  作者: レモンティー


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第四十七話 十万の敵に勝てないので、戦わずに帰ってもらうことにした

帝国軍の進軍は、予想より遅かった。

「……予定より三日遅れています」

ミディアが報告した。

「順調だな」

レアルは頷いた。

「国境の倉庫は?」

「すべて移送済みです」

「橋は?」

「主要な橋は王国軍が管理しています。住民の避難が終わった地点から、通行を制限しています」

「よし」

レアルは地図を広げた。

「次は、敵の補給隊だ」

帝国軍の先鋒部隊。

「……食料がない?」

指揮官が怒鳴った。

「はい!」

「近くの村から調達しろ!」

「それが……村が空です」

「……何?」

「住民も家畜も、ほとんど移動しています」

指揮官は舌打ちした。

「ならば、後方の補給隊を待つしかない」

しかし、その補給隊も遅れていた。

街道の橋が一部使えなくなり、迂回を余儀なくされていたのだ。

帝国軍本陣。

ガイゼルは報告を聞き、静かに頷いた。

「……なるほど」

副官が尋ねる。

「敵は、我々の補給を妨害しています」

「分かっている」

「このままでは、進軍が遅れます」

「そうだな」

ガイゼルは地図を見た。

「……敵将は誰だ?」

「レアル・アルフォンスという領主です」

「アルフォンス?」

「はい。近年、領地を急速に発展させた人物だとか」

ガイゼルは少し笑った。

「……面白い」

「将軍?」

「戦わずに勝とうとしている」

副官が頷いた。

「補給を断てば、我々は撤退せざるを得ません」

「だが、それだけでは勝てん」

ガイゼルは地図の別の街道を指さした。

「こちらへ補給隊を回せ」

「……山道ですか?」

「そうだ」

「大型の荷車は通れません!」

「ならば、小型の荷車を使え」

副官は驚いた。

「……輸送効率が落ちます」

「構わん」

ガイゼルは答えた。

「補給路が一本しかない軍隊は、補給路を失った瞬間に負ける」


三日後。

レアルの執務室。

「……敵軍が補給路を変更しました」

ミディアが報告した。

「山道を使っています」

「そうか」

「こちらの予想より、対応が早いです」

レアルは地図を見た。

「……敵将は?」

「ガイゼル将軍です」

ヴァルクが口を開いた。

「帝国でも有名な名将です。補給と機動戦を得意としています」

「なるほど」

レアルは静かに笑った。

「同じことを考えているわけか」


その日の午後。

レアルは新たな命令を出した。

「主要街道の防衛を維持する」

「はい」

「ただし、敵の山道補給を無理に止めようとするな」

エリオが驚いた。

「……止めないのですか?」

「山道で待ち伏せれば、こちらも兵を失う」

「ですが、敵の補給が続いてしまいます」

「そうだな」

レアルは頷いた。

「だから、別の方法を使う」

「……別の?」

「敵の進軍速度を、補給速度より速くさせる」

エリオが首を傾げた。

「……どういう意味でしょう?」

レアルは地図を指さした。

「敵に、勝てると思わせる」


翌日。

王国軍は、国境の小さな砦を放棄した。

さらに、その翌日。

別の防衛拠点からも撤退した。

帝国軍の先鋒は、ほとんど戦わずに前進した。

「……敵が逃げているぞ!」

「王国軍は弱い!」

兵士たちは歓声を上げた。

しかしガイゼルだけは、笑わなかった。

「……妙だな」

副官が尋ねる。

「何がでしょう?」

「撤退が整いすぎている」

「……整いすぎ?」

「負傷者も、物資も、ほとんど残していない」

ガイゼルは地図を見つめた。

「敵は、負けて逃げているのではない」

「……では?」

「我々を、どこかへ誘っている」


その夜。

レアルの前に、統治システムが表示された。

【戦況更新】

・帝国軍進軍速度:上昇

・帝国軍補給負担:増加

・王国軍損害:軽微

・国境防衛拠点:一部放棄

【警告】

《敵将ガイゼル、補給戦略への適応を開始》

《敵軍の行動予測精度:低下》

レアルは画面を見つめた。

「……やはり、簡単にはいかんな」

ヴァルクが尋ねる。

「次の作戦は?」

レアルは静かに答えた。

「敵がこちらの作戦を読んでいるなら、こちらも敵の考えを読む」

「……つまり?」

「頭脳戦だ」


その頃。

帝国軍本陣。

ガイゼルも、同じ地図を見つめていた。

「……レアル・アルフォンス」

将軍は小さく笑った。

「貴様が補給を戦場にするなら、こちらも同じことをしよう」

そして、副官に命じた。

「偽の補給隊を用意しろ」

「……偽の?」

「そうだ」

ガイゼルの目が鋭くなった。

「敵に、勝てると思わせる」

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