第四十四話 王子の反乱を止めたら、国王が倒れた
国王が倒れたという知らせは、王都中に広まった。
市場。
兵舎。
貴族の屋敷。
そして、王宮。
人々は不安そうに噂を交わしていた。
「……陛下が倒れたらしい」
「次の王は、第一王子か?」
「いや、第二王子が軍を動かしているそうだ」
「また戦争になるのか?」
王都には、重苦しい空気が漂っていた。
王宮の会議室。
レアルは、リシアから報告を受けていた。
「……国王陛下の意識は、まだ戻っていません」
「そうか」
「宮廷医師によれば、過労と持病の悪化が疑われています」
「毒の可能性は?」
リシアは首を振った。
「現時点では確認されていません」
「ならば、決めつけるな」
レアルは頷いた。
「重要なのは、今後の政治だ」
ミディアが尋ねる。
「……王位継承ですか?」
「そうだ」
レアルは資料を広げた。
「第一王子は、王位継承順位が最も高い」
「はい」
「だが、第二王子には有力貴族の支持がある」
リシアが続けた。
「さらに、王国財務院の一部も第二王子派です」
「つまり、金と政治を握っているわけだ」
レアルは静かに言った。
「ただし、軍は思うように動かせなくなった」
「……あなたのおかげで」
「兵士の給与を払っただけだ」
その日の午後。
第二王子は、王宮で緊急会議を開いた。
「父上が倒れた以上、王国には新たな指導者が必要だ!」
貴族たちが頷く。
「その通りです!」
「王国を混乱から救えるのは、殿下しかおりません!」
第二王子は満足そうに笑った。
しかし「……お待ちください」
一人の老貴族が立ち上がった。
「国王陛下は、まだご存命です」
「だから何だ?」
「王位継承の手続きは、王国法に従うべきです」
第二王子の表情が険しくなった。
「……私に逆らうのか?」
「法に従うべきだと申し上げております」
会議室が静まり返った。
その夜。
レアルの執務室。
第一王子からの使者が訪れた。
「……アルフォンス卿」
「何だ?」
「第一王子殿下は、あなたの協力を求めています」
「協力?」
「はい。第二王子派を抑えるため、アルフォンス軍を王都へ派遣していただきたいと」
レアルは首を振った。
「断る」
使者が驚いた。
「……なぜですか!」
「王都で私兵を動かせば、内乱になる」
「ですが、第二王子派が……」
「王国法に従って処理すればいい」
「……法だけで解決できるとは限りません!」
レアルは静かに答えた。
「だからこそ、法を守る側が最初に破ってはならん」
使者は黙った。
翌日。
今度は第二王子派から使者が来た。
「……アルフォンス卿」
「今度は何だ?」
「第二王子殿下は、あなたの財政改革を高く評価されています」
レアルは少し笑った。
「昨日まで俺を逮捕しようとしていたのにな」
使者は言葉に詰まった。
「……それは誤解でございます」
「そうか」
「殿下に協力していただければ、王国宰相の地位も……」
「断る」
「……まだ条件を申し上げておりません!」
「聞く必要がない」
レアルは答えた。
「王位を金で売り買いするつもりはない」
使者は青ざめた。
三日後。
王都の貴族たちは、さらに混乱していた。
「……アルフォンス卿は、どちらにも味方しないらしい」
「第一王子にも?」
「第二王子にもだ」
「では、何を考えている?」
誰も答えられなかった。
その頃。
アルフォンス城の執務室。
ミディアが尋ねた。
「……本当に、どちらにも味方しないのですか?」
「今はな」
「ですが、どちらかが王になれば、あなたの立場も変わります」
「そうだな」
「ならば、早めに味方を決めた方が……」
レアルは首を振った。
「王になる人間を決めるのは、俺ではない」
「……では、何をするのですか?」
「国を止めない」
レアルは資料を広げた。
「王都の食料供給、軍の給与、商業取引。これらを維持する」
「……王位争いの間も?」
「そうだ」
レアルは静かに言った。
「王子たちが争っている間に、民が飢えるようでは意味がない」
その夜。
統治システムが、新たな警告を表示した。
【統治システム更新】
・王国財政:改善傾向
・王都守備隊:中立化
・国王:重篤
・王位継承問題:深刻化
【新規イベント】
《王国分裂の危機》
《第一王子派:協力要請》
《第二王子派:協力要請》
《中立維持:難易度上昇》
レアルは画面を見つめた。
「……面倒なことになったな」
ミディアが小さく笑った。
「今さらですか?」
「そうだな」
レアルは立ち上がった。
「だが、やることは変わらん」
「……何を?」
「王国を動かし続ける」
そのとき王都の市場から、緊急報告が届いた。
『王位継承争いの影響により、食料価格が急騰』
『複数の商人が、王都への穀物輸送を停止』
『一部地域で買い占め発生』
レアルは報告書を読み終えた。
そして、静かに笑った。
「……なるほど」
ミディアが不安そうに尋ねる。
「どうしますか?」
「まず、食料を動かす」
「……王位争いより先に?」
「当然だ」
レアルは窓の外を見た。
「王様が誰になるかより、明日のパンがあるかどうかの方が、民には重要だからな」




