第四話:土地を支配する――豊かさは作れる
魔物襲撃から三日後。
領地は、変わり始めていた。
「……静かすぎるな」
レアルは城壁の上から見下ろす。
以前の荒れた空気はない。
代わりにあるのは――
規律。
訓練された動き。
無駄のない労働。
【統治システム】
統治度:42
忠誠:40
恐怖:68
民兵化率:45%
(悪くない)
だが、レアルは満足していなかった。
(戦えるだけじゃ足りない)
(“持続できる強さ”が必要だ)
「報告しろ」
側近に命じる。
「はっ。現在、食料備蓄は昨年比でやや不足……このままでは冬に問題が」
「原因は」
「土地の疲弊と、収穫効率の低さです」
(やっぱりな)
この領地は、搾取しすぎた。
土地も人も限界まで使い潰されている。
「……なら、やることは一つだ」
翌日。
再び、住民が集められる。
だが今回は――空気が違った。
恐怖ではない。
“期待”が混じっている。
「作業を増やす」
ざわめき。
だが誰も反発しない。
「土地を改良する」
「水を制御する」
「収穫量を上げる」
農民たちが顔を見合わせる。
理解が追いついていない。
「説明してやる」
レアルは地面に図を描く。
「今の畑は、同じ作物を繰り返している」
「それが土地を弱らせている」
「だから――肥料を入れる」
「……肥料?」
「動物の糞、腐った草、灰」
「全部混ぜて土に戻せ」
ざわめきが広がる。
「そんなもので……」
「収穫が増える」
即答する。
さらに線を引く。
「次に、水だ」
「川をそのまま使うな」
「流れを分けろ」
「溝を作れ」
「治水……?」
「そうだ」
「水は“管理するもの”だ」
(前世知識チートだな)
だが、この世界では誰もやっていない。
「全員でやる」
「作業はローテーション制」
「訓練と同時進行だ」
「そんなことして……間に合うのか?」
一人の農民が恐る恐る聞く。
レアルは少しだけ笑った。
「間に合わせるんだよ」
その瞬間。
【統治システム】
統治度:42 → 48
忠誠:40 → 46
恐怖:68 → 60
恐怖がさらに下がる。
代わりに、信頼が上がる。
(いい傾向だ)
それからの日々。
領地は“工事現場”になった。
・川を分流し、簡易水路を作る
・畑に肥料を混ぜ込む
・作物をローテーションで植える
・排水路を整備する
最初は混乱もあった。
だが――
「水が……ちゃんと来てる……!」
「土が柔らかい……!」
「前より育ちが早い……!」
変化は、すぐに現れた。
【統治システム】
統治度:48 → 57
忠誠:46 → 58
恐怖:60 → 52
生産効率:大幅上昇
「……すげぇ」
誰かが呟く。
「領主様は……」
「本当に、俺たちを生かす気だ……」
(違うな)
レアルは心の中で否定する。
(“使える状態にする”だけだ)
だが、その差を理解できる者はいない。
「報告です!」
側近が駆け込んでくる。
「収穫予測が……前年の1.7倍に!」
「当然だな」
レアルはあっさり言う。
【クエスト達成】
・生産効率向上
報酬:経験値
【レベルアップ】
Lv.3 → Lv.4
武力:79 → 80
知力:67 → 68
新スキル:《指揮強化》
(内政でも上がるか)
支配=戦闘ではない。
領地全体の強化が、そのまま力になる。
レアルは、変わりつつある土地を見下ろす。
整った水路。
活気のある畑。
動き続ける人々。
「いいな」
小さく呟く。
ここはもう、ただの地獄じゃない。
“勝ち続ける地獄”だ。
そして、その裏で。
「……確定だ」
隣領の館。
斥候が報告する。
「あの領地、完全に立て直しています」
領主は静かに笑った。
「なら――今のうちに潰すか」
戦は、もう避けられない。




