第五話:内側からの裏切り ―統治度崩壊イベント―
春。
領地は、目に見えて変わっていた。
新しく整備された用水路。
収量が増え始めた畑。
税の軽減により、民の顔にはわずかな余裕。
「……数字上は、順調だな」
俺は“ステータス画面”を開く。
領地ステータス
・人口:31,200 → 34,580
・食料生産:+28%
・反乱リスク:低
・統治度:68 → 72(上昇中)
「悪くない。むしろ出来すぎだ」
だが、その時だった。
【イベント発生】
《内部不正の兆候》
・統治度が一定以上に達したため発生
・領内の権力層に歪みが発生しています
「……来たか」
順調すぎる時ほど、腐る。
それは現代でも、この世界でも同じだ。
・異変
報告は、三日後に来た。
「閣下……徴税記録に不審な点が」
執務官のエルナが、青ざめた顔で書類を差し出す。
「この地区だけ、税収が減っているのに……民の負担は増えています」
「……抜いてるな」
「はい。しかも規模が大きい」
俺は記録を見る。
数字の改ざん。
二重帳簿。
典型的な“中抜き”だ。
「誰だ」
「地方代官、ベルグ男爵です」
・裏切り者
ベルグ男爵。
旧体制から残る貴族の一人。
前領主時代には、好き勝手に搾取していた男だ。
「改革に従ってるフリをして、裏で続けてたわけか」
「恐らく……民からはすでに不満が出ています」
その瞬間。
【統治度変動】
・民衆の不信:発生
・統治度:72 → 61(大幅低下)
・反乱リスク:上昇
「……速いな」
腐敗は、伝染する。
一人を見逃せば、全員が真似をする。
・決断
「選択肢は三つだな」
俺は指を折る。
① 見逃す(安定だが腐敗拡大)
② 罰金(軽度改善)
③ 粛清(統治度リスク大、だが信頼回復)
エルナが静かに言う。
「……閣下は、どれを?」
俺は少しだけ笑った。
「もう決めている」
・公開処分
数日後。
広場に民衆が集められた。
中央には、拘束されたベルグ男爵。
「な、なぜだ!私は忠実に――」
「黙れ」
俺は冷たく言い放つ。
「お前は民から奪い、領地を食い物にした」
「それがこの領地でどう扱われるか、教えてやる」
ざわめく民衆。
恐怖と期待が混ざった視線。
「処分は――公開財産没収、爵位剥奪、追放」
処刑ではない。
だが、“全てを失う罰”だ。
「こ、この悪徳領主が!!」
ベルグが叫ぶ。
だが、その言葉に――
誰も同調しなかった。
・変化
処分の後。
領地に奇妙な静けさが訪れた。
数日後。
【統治度変動】
・腐敗の排除:成功
・民衆の信頼:上昇
・統治度:61 → 78(大幅上昇)
・貴族層の不満:増大(新規リスク)
「……一気に上がったな」
だが、同時に新たな火種も生まれる。
エルナが言う。
「貴族たちが動き始めています」
「でしょうね」
「今回の処分、“やりすぎ”と見る者も多いかと」
・影
夜。
執務室の外。
誰もいないはずの廊下で、かすかな声が響く。
「……あの男は危険だ」
「我々の首もいずれ飛ぶ」
「先に動くべきだ」
俺は一人、窓の外を見る。
広がる領地。
整い始めた土地。
だが――
「……内側から崩れるか」
この世界はゲームじゃない。
だが“システム”は確実に存在する。
そして今、理解した。
「統治度を上げるほど、敵も増える」
夜風が、静かに吹き込む。
次に崩れるのは――
民か。
貴族か。
それとも。
「……俺自身かもしれないな」




