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転生したら最悪の領主で破滅寸前の領地を押し付けられたので内政チートで立て直します  作者: レモンティー


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第三十九話 国王から財政再建を任されたので、貴族の無駄遣いを全部止めた

王国財政再建特別顧問。

それが、レアルに与えられた新しい肩書だった。

もっとも、本人はまったく喜んでいなかった。

「……面倒な仕事を引き受けたな」

王宮の執務室。

机の上には、山のような帳簿が積まれていた。

王国の収入。

王宮の支出。

軍事費。

公共事業費。

貴族への補助金。

そして、借金の返済記録。

レアルは一冊を開いた。

「……何だ、これは」

隣にいたミディアが覗き込む。

「どうしました?」

「王宮の庭園維持費だ」

「庭園ですか?」

「年間、金貨一万二千枚」

ミディアは固まった。

「……庭に?」

「ああ」

「……何を育てているんですか?」

「知らん。金貨でも生えてくるんじゃないか?」

リシアが小さく咳払いした。

「王宮庭園は、外国使節を迎える重要な施設でもあります」

「それは分かる」

レアルは別の帳簿を開いた。

「だが、同じ庭園に三つの部署から維持費が支払われている理由は?」

リシアは黙った。

「……確認します」

「頼む」

さらに調査を進める。

王宮馬車管理費。

宮廷楽団維持費。

貴族向け晩餐会費。

儀礼用衣装費。

そして「……幽霊兵士?」

ミディアが首を傾げた。

「どういう意味でしょう?」

「軍の給与名簿に、実在しない兵士がいる」

レアルは名簿を指さした。

「この部隊は五年前に解散している」

「はい」

「だが、今も三百人分の給与が支払われている」

「……え?」

「五年間、毎月だ」

ミディアの顔色が変わった。

「……誰が受け取っているんですか?」

「それを調べる」

レアルは帳簿を閉じた。

「王国の財政が悪い理由が、少し分かってきたな」


三日後。

王宮の会議室。

財務官僚たちが集められていた。

レアルは一枚の資料を配った。

「まず、支出を整理する」

一人の官僚が尋ねた。

「……どのように?」

「必要なものと、必要でないものに分ける」

「それは当然では?」

「ならば、なぜ必要でないものに金を払っている?」

官僚は黙った。

レアルは続けた。

「王宮庭園の重複予算は停止する。維持管理は一部署に統合する」

「……はい」

「幽霊兵士への給与は即時停止。受取先を調査する」

「承知しました」

「実施記録のない公共工事への支払いも止める」

そこで、一人の貴族出身の官僚が立ち上がった。

「お待ちください!」

「何だ?」

「それでは、各貴族家との関係が悪化します!」

「なぜだ?」

「長年の慣例です!」

レアルは相手を見た。

「慣例なら、金を盗んでもいいのか?」

「……そのような意味では!」

「では、問題ないな」

レアルは次の資料を開いた。

「ただし、すべての補助金を廃止するわけではない。実際に道路を作り、兵士を維持し、農業を支援している事業は残す」

リシアが頷いた。

「一律削減ではなく、実績による審査ですね」

「そうだ」

「ですが、審査には時間がかかります」

「だから人員を増やす」

レアルは官僚たちを見渡した。

「不正を見つけた者には報奨を出す。正しい帳簿を提出した部署には、翌年度の予算審査を優先する」

官僚たちが顔を見合わせた。

「……報奨?」

「仕事を増やすなら、報酬も必要だろう」

ミディアが小さく呟いた。

「……またお金で人を動かしていますね」

「金は使い方次第だ」

レアルは答えた。

「無駄に払うから問題になる」


一か月後。

財政改革の最初の結果がまとまった。

「……レアル様」

ミディアが報告書を持ってきた。

「確認済みの重複支出と架空支払いを停止した結果、年間換算で金貨十一万枚の支出削減が見込まれます」

「まだ足りんな」

「十分すごい数字ですよ!」

「王国の借金は、それよりずっと多い」

レアルは資料を確認した。

「ただし、これで利息の一部は払える」

リシアが言った。

「国王陛下も、改革の成果を評価されています」

「それは結構」

「ですが……」

リシアは表情を曇らせた。

「貴族たちの反発が強まっています」

「だろうな」

「特に、補助金を停止された貴族家から抗議が殺到しています」

「証拠を持ってくれば再審査する」

「……そう伝えています」

レアルは頷いた。

「ならば、問題ない」

しかしその夜。

王都の一角にある貴族の屋敷では、別の会議が開かれていた。

「……あの男を放置すれば、我々の財産が消える」

一人の貴族が言った。

「補助金が止まっただけではない。過去の支払いまで調べている」

「このままでは、我々の不正が明るみに出る」

「国王は、あの男を信用している」

沈黙が落ちた。

やがて、部屋の奥から声が響いた。

「……ならば、国王の目の届かないところで始末すればいい」

貴族たちは、一斉に頭を下げた。

そこに座っていたのは、王国第二王子だった。

「レアル・アルフォンス」

王子は静かに笑った。

「金で国を動かせると思うなよ」

王子は、幼い頃に見た国境砦を思い出していた。

兵士は冬の靴さえ足りず、援軍の要請は帳簿上の不備を理由に却下された。

「父上は正しい数字さえあれば国が治まると思っている。だが、国境を守ったのは、命令に従う者たちだ」

側近が慎重に尋ねた。

「それでも、架空の補助金を受け取る貴族まで守るのですか」

「奴らの不正を許すつもりはない。だが一度に切れば、領兵も街道も失う。アルフォンスはその責任を取らん」

王子は拳を握った。

「王位を継いだとき、俺に従う軍が残っていなければ国は守れない」


翌朝。

レアルの執務室。


【統治システム更新】

・王国財政:改善傾向

・不正支出:一部停止

・年間支出削減見込:金貨十一万枚

・王都貴族の敵対度:上昇

【警告】

《暗殺計画の発生を検知》

《対象:レアル・アルフォンス》

《確認された計画数:17》

レアルは画面を見つめた。

「……十七件か」

ミディアが尋ねる。

「何がですか?」

「俺を殺そうとしている連中の数だ」

「……はい?」

レアルは平然と答えた。

「どうやら、予算削減は効いているらしい」

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