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転生したら最悪の領主で破滅寸前の領地を押し付けられたので内政チートで立て直します  作者: レモンティー


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第三十六話 王都の金庫を調べたら、国家予算が消えていた

王国財務院から送られてきた帳簿は、馬車三台分に及んだ。

「……多すぎませんか?」

ミディアが積み上げられた書類を見上げた。

「十年分だからな」

レアルは一冊を開いた。

「それに、量が多ければ不正が隠せると思っている連中もいる」

リシアが眉をひそめた。

「まだ不正があると決まったわけではありません」

「そうだな」

レアルは頷いた。

「だから調べる」

調査は、王国からアルフォンス領へ支払われた補助金の確認から始まった。

道路整備費。

国境防衛費。

災害復旧費。

そして、農業支援金。

「……妙ですね」

ミディアが帳簿を見比べた。

「どうした?」

「王国の帳簿では、三年前にアルフォンス領へ金貨二万枚の道路整備補助金が支払われています」

「それで?」

「領地の帳簿には、受領記録がありません」

リシアが顔を上げた。

「……前領主時代の記録では?」

「確認しました。しかし、当時の出納記録にもありません」

レアルは別の帳簿を開いた。

「道路は?」

「整備されていません」

「ならば、金はどこへ行った?」

誰も答えられなかった。

調査を進めると、同じような記録が次々と見つかった。

存在しない橋の建設費。

すでに廃止された部隊への軍事費。

完成していない倉庫への補助金。

そして、名前すら確認できない商会への支払い。

「……これは」

リシアの顔が青ざめた。

「偶然ではありません」

「そうだな」

レアルは計算結果を机に置いた。

「過去十年間の不審な支出を合計すると、金貨八十七万枚になる」

ミディアが息を呑んだ。

「八十七万枚……?」

「王国の年間税収のかなりの割合に相当する」

リシアが震える声で言った。

「……国家予算が、消えている」

レアルは首を振った。

「消えたわけじゃない」

「……どういうことです?」

「誰かの懐に入っただけだ」


三日後。

リシアは王都へ緊急報告を送った。

しかし、返事は予想外のものだった。

『当該調査を直ちに中止せよ』

『王都監察官リシアの監察権限を一時停止する』

『速やかに王都へ帰還せよ』

書状を読んだリシアは、しばらく動かなかった。

「……私の権限が停止されました」

ミディアが驚く。

「どうしてですか!」

「分かりません」

「分からないわけがないだろう」

レアルが言った。

「調べられたくない人間がいる」

リシアは唇を噛んだ。

「……ですが、王命に逆らうことはできません」

「王命なのか?」

「財務院からの正式命令です」

「ならば、国王が知っているとは限らない」

レアルは立ち上がった。

「リシア。お前は王都へ戻れ」

「……調査を諦めるのですか?」

「まさか」

レアルは笑った。

「お前の権限がなくても、俺には帳簿がある」

「ですが、王国の財政資料を勝手に公開すれば……」

「公開するとは言っていない」

レアルは不審な支払い先の一覧を取り出した。

「まず、金の行き先を調べる」


その夜。

地下の一室。

レアルの前に、黒い外套をまとった男が膝をついていた。

「……お呼びでしょうか」

「仕事だ」

レアルは一覧表を差し出した。

「ここに記された商会と貴族の資金の流れを調べろ」

「すべてですか?」

「ああ」

男は紙を受け取った。

「承知しました」

「ただし、無理に証拠を奪うな。取引相手、倉庫、輸送記録を確認しろ」

「……影を喰らう者の総力を使いますか?」

「必要ならな」

男は静かに頭を下げた。

「御意」


十日後。

最初の報告が届いた。

『不審な支出の一部は、王都財務大臣の親族が所有する商会へ流入』

『複数の貴族家に資金が分配されている可能性』

『資金の一部は第二王子派の軍備購入に使用』

レアルは報告書を閉じた。

「……なるほど」

ミディアが尋ねる。

「何が分かったのですか?」

「王国の金庫から金を盗んだ連中が、その金で兵士を買っている」

「……そんな」

「しかも、俺を潰すためにも使っているらしい」

そのとき王都から新たな書状が届いた。

『アルフォンス卿に対し、国家財政を混乱させた疑いにより出頭を命じる』

レアルは書状を読み終えると、静かに笑った。

「……今度は俺が犯人か」


【統治システム警告】

・王都財務大臣:敵対

・第二王子派:敵対

・王国財政:重大な不正疑惑

・リシア:監察権限停止

【新規イベント】

《国家反逆容疑》

レアルは書状を机に置いた。

「いいだろう」

そして、低い声で続けた。

「誰が王国の金を盗んだのか、国中に教えてやる」

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