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転生したら最悪の領主で破滅寸前の領地を押し付けられたので内政チートで立て直します  作者: レモンティー


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第三十三話 商人を追い出されたので、王国最大の市場を作ることにした

王都商人ギルドからの通達は、予想以上に早かった。

『アルフォンス領との新規取引を当面停止する』

その一文が、領内の商人たちを震え上がらせた。

「……まずいですね」

ミディアが帳簿を閉じた。

「王都経由で仕入れている高級布、薬品、金属加工品が止まります」

「食料は?」

「自給分と周辺領からの仕入れで維持できます。ただし、価格上昇の可能性があります」

「ならば、まだ余裕はある」

レアルは落ち着いていた。

エリオが尋ねる。

「商人ギルドに抗議しますか?」

「しない」

「では、どうするのです?」

「新しい商人を呼ぶ」

「……王都の商人が来ないのに?」

「王都以外にも商人はいる」

レアルは地図を広げた。

王国には多くの町が存在する。

農村。

鉱山都市。

港町。

そして、小さな商業集落。

「王都の大商人は、取引経路を独占している」

「はい」

「だが、その下には何百もの小商人がいる」

ミディアが頷いた。

「大商人に商品を卸している人々ですね」

「そうだ」

レアルは地図の中央を指さした。

「その連中が、直接ここへ商品を持ってくればいい」


一週間後。

アルフォンス領は新たな布告を出した。

『王国全土の商人に市場を開放する』

『商人ギルドへの所属は問わない』

『初回出店料免除』

『倉庫貸出制度新設』

『商隊護衛制度開始』

その内容は、瞬く間に王国各地へ広まった。

最初に現れたのは、小さな荷車を引いた商人だった。

「……本当に、ギルドに入っていなくても売れるんですか?」

市場の役人が頷く。

「はい。商品と取引記録を確認できれば、どなたでも」

「王都では門前払いだったのに……」

商人は信じられない様子だった。


翌日。

さらに五台の荷車が到着した。

その翌日には、十二台。

十日後には、五十台を超えた。

「……増えすぎでは?」

ミディアが市場の報告書を見つめた。

「何がだ?」

「商人です!」

窓の外では、荷車が長い列を作っていた。

「市場の空き区画がなくなりました!」

「拡張しろ」

「倉庫も足りません!」

「建てろ」

「護衛隊の人員も不足しています!」

「ヴァルクに相談しろ」

ミディアは額を押さえた。

「……レアル様」

「何だ」

「簡単に言わないでください!」

珍しく大きな声だった。

レアルは少しだけ笑った。

「では、順番を決めよう」

机に新しい計画書を置く。

「市場は三地区に分ける」

「三地区?」

「食料、日用品、専門商品だ。荷車の動線を分ければ混雑が減る」

「……なるほど」

「倉庫は商人に共同出資させる。領主がすべて建てる必要はない」

「それなら資金負担も減ります」

「護衛は商隊ごとに料金を徴収する。安全な交易路は、商品そのものだ」

ミディアはしばらく黙っていた。

やがて、小さく笑う。

「……本当に、何でも商売にしてしまいますね」

「金がなければ、何も守れん」

レアルは答えた。

「兵士も、道路も、食料もな」


一か月後。

王都商人ギルドの会議室。

重役たちは、険しい顔で報告を聞いていた。

「……王都市場の取引量が減少しています」

「どれほどだ?」

「前月比、一八パーセントです」

「馬鹿な!」

一人の商人が机を叩いた。

「取引を止めれば、アルフォンス領が困るはずだったのではないか!」

「それが……」

報告者は言いにくそうに続けた。

「小商人たちが、直接アルフォンス領へ向かっています」

「ギルドの命令に逆らっているのか!」

「彼らの多くは、そもそもギルドに所属していません」

会議室が静まり返った。

「……では、止められないではないか」

誰も答えられなかった。


その夜。

アルフォンス城。

リシアが市場の報告書を読み終えた。

「……あなたは王都の商人を奪ったのですね」

「違う」

レアルは答えた。

「王都が相手にしなかった商人を拾っただけだ」

「結果は同じです」

「結果がすべてだろう?」

リシアは小さく息を吐いた。

「本当に、恐ろしい人ですね」

そのとき、ミディアが新しい書状を持ってきた。

「レアル様。王都財務院からです」

「今度は何だ?」

「……王都の両替商が、アルフォンス領への金貨の送金を停止するそうです」

一瞬、沈黙が落ちた。

「金貨を止める、か」

レアルは椅子に深く腰掛けた。

「面白い」

ミディアが不安そうに尋ねる。

「……どうするのですか?」

レアルは紙を一枚取り出した。

「金貨を運ばずに、金貨を動かす」

「……はい?」

「紙を使う」


【統治システム更新】

・統治度:92 → 93

・商業取引量:大幅増加

・人口:88,200 → 91,000

・市場規模:王国有数

【新規状態】

・王都商人ギルド:取引制限継続

・王都市場:取引量減少

・金貨流通:制限開始

王都は商人を止めた。

だが、商売そのものは止まらなかった。

そして次に止めようとしたのは――金だった。

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