第二話:脱落者は、最初に切り捨てる
税の発表から、一週間。
領地は――静かだった。
「……妙だな」
レアルは訓練場を見下ろす。
木剣のぶつかる音。
荒い息。怒号。
本来あり得ない光景だ。
農民も、商人も、子供ですら剣を振っている。
「続けろ!腕を止めるな!」
教官の怒鳴り声。
逃げ出す者はいない。
――いや。
「“まだ”いない、か」
【統治システム】
統治度:18 → 24
忠誠:9 → 14
恐怖:70 → 66
民兵化率:12%
順調すぎる。
だからこそ、分かる。
(そろそろ出るな)
「領主様」
背後から声。
振り向くと、側近の男がひざまずいていた。
「報告です。訓練拒否者が……出ました」
「何人だ」
「……27名」
レアルは即答する。
「全員、ここに連れてこい」
数時間後。
広場に並ばされた27人。
老人、女、若者。
震えている者。睨みつける者。
「……ふざけるな」
一人の男が吐き捨てた。
「税を下げたと思ったら、今度は兵士にするだと?」
「そんなものに従えるか」
周囲がざわつく。
だがレアルは表情を変えない。
(来たな)
これが最初の分岐。
ここで甘くすれば――崩れる。
厳しすぎれば――反発が跳ね上がる。
「名前」
「……ミゲルだ」
「ミゲル」
一歩、近づく。
「お前はここを出たいのか?」
「当たり前だろ」
「なら、出ていけ」
「……は?」
一瞬、空気が止まる。
「言ったはずだ」
「拒否する者は追放する」
ざわめき。
だが、すぐに気づく者が出る。
「ま、待て……!」
別の男が叫ぶ。
「外は……魔物が……!」
その通りだ。
この領地の外は、安全ではない。
むしろ――
ここより遥かに死にやすい。
「選べ」
レアルは淡々と言う。
「ここで鍛えて生きるか」
「外に出て死ぬか」
沈黙。
ミゲルの顔が歪む。
「……脅しかよ」
「違う」
即答する。
「現実だ」
その瞬間。
【統治システム】
統治度:24 → 26
忠誠:14 → 18
恐怖:66 → 72
恐怖が跳ね上がる。
だが同時に――忠誠も上がる。
(理解したか)
ここは地獄だ。
だが外よりはマシな地獄。
「最後に一度だけ聞く」
レアルは全員を見渡す。
「残るか、出るか」
沈黙。
そして――
一人、また一人と膝をつく。
「……残ります」
「従います……!」
最後に、ミゲルだけが立っていた。
「……チッ」
舌打ちし、地面を蹴る。
「好きにしろ」
そう言って――背を向けた。
門が開く。
誰も止めない。
そのまま、外へ。
そして、数分後。
遠くから響く。
――悲鳴。
誰も顔を上げない。
誰も動かない。
ただ、理解した。
「訓練に戻れ」
レアルの一言。
全員が即座に動き出す。
【統治システム】
統治度:26 → 31(目標達成)
忠誠:18 → 24
恐怖:72 → 75
【クエスト達成】
・統治度30到達
報酬:レベルアップ
【レベルアップ】
Lv.1 → Lv.2
武力:77 → 78
知力:65 → 66
スキル獲得:《威圧》
「……なるほど」
体の内側から力が湧く。
そして理解する。
(支配が、そのまま力になるのか)
レアルは訓練場を見下ろす。
誰も逆らわない。
誰も逃げない。
全員が、歯を食いしばって剣を振る。
「いいな」
小さく呟く。
ここは地獄だ。
だが――
完成に近づいている。




