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転生したら最悪の領主で破滅寸前の領地を押し付けられたので内政チートで立て直します  作者: レモンティー


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第百話 最悪の領主だった俺が、世界で一番必要な人間になっていた

戦争が終わってから、一か月が過ぎた。

王国には、少しずつ平和が戻っていた。

兵士たちは故郷へ帰り始めた。

商人の荷車が、国境を越えて行き交う。

壊れた橋が修理され、焼かれた畑には新しい種がまかれている。

戦争で止まっていた学校も、再び授業を始めた。

そして俺は、王宮に呼び出されていた。

「……またか」

馬車の中で呟く。

隣に座るミディアが笑った。

「今回は、良い知らせだと思いますよ」

「本当か?」

「はい」

「仕事が増える話じゃないだろうな?」

ミディアは、少しだけ目をそらした。

「……さあ?」

「おい!」


王宮。

謁見の間。

国王は、玉座から俺たちを見つめていた。

その前には、王国の将軍たちが並んでいる。

ヴァルク。

エリオ。

そして、ミディア。

国王が口を開いた。

「レアル・アルフォンス」

「はい」

「今回の戦争における功績、誠に見事であった」

俺は頭を下げた。

「ありがとうございます」

国王は続けた。

「だが、勝利は一人の力ではない」

「はい」

「王国軍の将兵、行政官、商人、農民。多くの者が力を尽くした」

俺は頷いた。

「その通りです」

国王は、静かに笑った。

「そこで、戦後の王国軍を改革することにした」

俺は、嫌な予感がした。

「……改革、ですか?」

「そうだ」

国王は頷いた。

「王国軍の指揮系統を整理し、軍事と兵站を一体化する」

俺は、ミディアを見た。

ミディアは、なぜか緊張していた。


国王が宣言した。

「ミディア。前へ」

ミディアが一歩進んだ。

「はい」

「そなたは、今回の戦争で王国軍の補給を統括した」

「はい」

「さらに、各軍団の移動計画、物資配分、戦略調整にも大きく貢献した」

ミディアは深く頭を下げた。

「身に余るお言葉です」

国王は続けた。

「よって、そなたを王国軍総司令官に任命する」

謁見の間が静まり返った。

そして「……え?」

ミディアが顔を上げた。

俺も驚いた。

「……総司令官?」

国王は頷いた。

「そうだ」

ミディアは、しばらく言葉を失っていた。

「……私が、ですか?」

「そなた以外に、誰がいる?」

国王は静かに笑った。

「今回の戦争で、最も広い範囲の軍を動かしたのは、そなただ」

ミディアは黙った。

「兵士を動かすには、食料が必要だ」

「……はい」

「食料を運ぶには、街道が必要だ」

「……はい」

「街道を守るには、兵士が必要だ」

国王は続けた。

「そなたは、それらを一つの仕組みとして動かした」

ミディアは、ゆっくりと頭を下げた。

「……謹んで、お受けいたします」

俺は、思わず拍手した。

「……おめでとう!」

ミディアが振り返った。

「レアル様」

「何だ?」

「……これで、私の仕事が増えますね」

「……そうだな」

「レアル様の仕事も、増えますね」

「何でだよ!」

謁見の間に、小さな笑いが起きた。


続いて。

国王がエリオを呼んだ。

「エリオ。前へ」

エリオが一歩進んだ。

「はい」

「そなたは、帝国の名将ガイゼルを撃破した」

「はい」

「だが、それ以前には、大きな敗北も経験した」

エリオは、静かに頭を下げた。

「……はい」

国王は続けた。

「その敗北から学び、成長したことを、私は高く評価している」

エリオは顔を上げた。

「……ありがとうございます」

国王は宣言した。

「そなたを、王国軍参謀筆頭に任命する」

エリオは、しばらく黙っていた。

そして、深く頭を下げた。

「……謹んで、お受けいたします」

国王は頷いた。

「ミディア総司令官を支え、王国軍の戦略を担ってくれ」

「はい!」

エリオは力強く答えた。

「必ず、王国を守ります!」


最後に。

国王は、ヴァルクを見た。

「ヴァルク将軍」

「はっ」

「そなたには、長年の功績がある」

「恐れ入ります」

「今回の戦争でも、宿敵バルドを撃破し、王国軍を支えた」

ヴァルクは深く頭を下げた。

「……ありがとうございます」

国王は続けた。

「そなたの今後について、希望を聞きたい」

ヴァルクは、しばらく黙っていた。

そして、静かに答えた。

「……陛下」

「何だ?」

「私は、前線を退きたいと考えております」

謁見の間が静かになった。

ヴァルクは続けた。

「老兵が、いつまでも前に立つべきではありません」

国王は黙って聞いていた。

「これからは、若い兵士たちを育てたい」

国王は、静かに頷いた。

「……よかろう」

そして、宣言した。

「そなたを、王国軍士官学校の名誉教官に任命する」

ヴァルクは深く頭を下げた。

「……ありがたき幸せ」


式典が終わった後。

俺たちは、王宮の庭園に集まった。

ミディア。

エリオ。

ヴァルク。

そして、俺。

「……とうとう、ここまで来たな」

俺が呟くと、エリオが頷いた。

「はい」

ヴァルクは笑った。

「若い者が、立派になった」

ミディアも、少し照れたように笑った。

「まだまだ、勉強することばかりです」

俺は頷いた。

「それでいい」

そして、静かに続けた。

「全部、一人でできる必要はない」

三人が俺を見た。

「困ったら、誰かに頼ればいい」

俺は笑った。

「俺も、ずっとそうしてきた」


数日後。

俺は、ようやくアルフォンス領へ帰った。

久しぶりの領地。

見慣れた街道。

畑。

村。

そして、領主館。

「……帰ってきた」

俺は、深く息を吸った。

「やっぱり、ここが一番落ち着くな」

執事が迎えに出てきた。

「お帰りなさいませ、レアル様」

「ただいま」

「お疲れでしょう」

「ああ」

俺は笑った。

「しばらく、ゆっくりしたい」

執事は頷いた。

「承知しました」

そして、静かに続けた。

「では、こちらの書類を」

俺は固まった。

「……何?」


机の上には、書類が積み上がっていた。

村の水車修理。

農道の補修。

学校の屋根の雨漏り。

共同倉庫の拡張。

井戸の水量調査。

そして『第三村 水車修理費用の申請』

俺は、書類を手に取った。

「……水車?」

執事が頷いた。

「はい」

「壊れたのか?」

「軸が摩耗しております」

「……修理費は?」

「銀貨三十枚です」

俺は、しばらく黙っていた。

そして「……高いな」

執事が頷いた。

「村の予算では、少々厳しいようです」

俺は、書類を見つめた。

銀貨三十枚。

帝国との戦争では、金貨何十万枚という話をしていた。

十万の軍勢。

何百トンもの食料。

国境を越える交易。

世界の統治。

そんなことばかり考えていた。

だが、今。

目の前にあるのは、銀貨三十枚の水車だった。

俺は、思わず笑った。

「……いいじゃないか」

執事が首をかしげた。

「……何がでしょう?」

「こういう仕事がしたかったんだ」


翌朝。

俺は、第三村を訪れた。

村長が驚いた。

「……レアル様!」

「久しぶりだな」

「まさか、直接お越しになるとは!」

俺は笑った。

「水車が壊れたんだろ?」

「……はい」

村長は、申し訳なさそうに頭を下げた。

「修理費が足りず……」

俺は水車を見た。

大きな木製の車輪。

水の流れ。

摩耗した軸。

そして、止まっている製粉機。

「……なるほど」

俺は、しばらく考えた。

「軸だけ交換すれば、直るんじゃないか?」

村長が顔を上げた。

「……え?」

「車輪全体を作り直す必要はないだろ」

職人が頷いた。

「確かに、軸を交換すれば動きます」

俺は尋ねた。

「費用は?」

職人は少し考えた。

「……銀貨十二枚ほどで済むと思います」

村長が驚いた。

「……十二枚!」

俺は笑った。

「よし。それでいこう」


数日後。

水車は、再び動き始めた。

水が流れる。

車輪が回る。

製粉機が動く。

村人たちが歓声を上げた。

「……動いた!」

「水車が動いたぞ!」

「これで粉が挽ける!」

俺は、静かにその光景を見つめていた。

銀貨十二枚。

それだけで、村の生活が少し良くなった。

俺は、思わず笑った。

「……十分だな」


その夜。

領主館。

俺は、統治システムを開いた。

【世界統治システム】

《王国:安定》

《帝国:和平協定履行中》

《国際交易:拡大》

《王国軍改革:進行中》

《地方行政:正常稼働》

そして《アルフォンス領》

《第三村水車:修理完了》

《住民生活満足度:上昇》

俺は、その表示を見つめた。

「……これでいい」

すると新しい通知が現れた。

【世界統治システム】

《世界規模の統治改善に貢献しました》

《評価:最高》

《あなたは、世界の安定に不可欠な存在です》

俺は、しばらく画面を見つめていた。

そして、笑った。

「……不可欠、ね」

かつて俺は、最悪の領主と呼ばれていた。

領民から嫌われ。

貴族から見下され。

破滅寸前の領地を押し付けられた。

誰からも期待されていなかった。

だが今は違う。

王国には、俺を信頼してくれる人間がいる。

帝国にも、協力してくれる人間がいる。

世界には、国境を越えて助け合う仕組みが生まれた。

そして俺がいなくても、国は動くようになった。

俺は、統治システムを見つめた。

「……だったら、不可欠じゃないだろ」

画面は、何も答えなかった。

俺は笑った。

「俺がいなくても、みんなが暮らせる」

そして、静かに続けた。

「それが、一番いいんだよ」


翌朝。

領主館の窓から、朝日が差し込んでいた。

俺は、机の上の書類を手に取った。

『第四村 共同井戸の修理申請』

「……今度は井戸か」

執事が頷いた。

「はい」

「費用は?」

「銀貨八枚です」

俺は、少し考えた。

「……現地を見よう」

執事が笑った。

「承知しました」

俺は、椅子から立ち上がった。

世界を救った英雄。

帝国の名将を破った男。

王国を立て直した領主。

そんな大げさな呼び名は、俺には似合わない。

俺は、ただ目の前の困っている人を助けたいだけだ。

そして今日も、領地の小さな問題を解決する。


挿絵(By みてみん)

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