3しつこい男
私はそれからゾルデ、ローザを離れに移した。もちろん生活は最低限の面倒しか見ない。見る訳がない。
ゾルデやローザは今までの生活が忘れられないらしく何度か文句を言いに本邸に何度もやって来た。その度に護衛兵から懲罰を受けさせた。
そのおかげが何も言わなくなった。
父には領地に行って現地で代行業務をしているジャックの下についてもらう事にした。
ジャックには父が爵位権を失ったことを知らせてあるので父が横柄な態度を取ったら知らせるように伝えてある。
もし父が何か不都合な事をすれば父を侯爵家から追い出す事も可能だ。今まで散々侯爵家の財産を使い込んで来た証拠は揃っているのだから。もちろんそのことは父にも伝えてある。
私を怒らせたらどうなるかはわかっているはずだ。
ギルバート様からは慰謝料が支払われそれから関わることはなくなった。
半年後、父が領地で勝手に金を使い込んだ。
私はすぐに父の不当な行いを貴族院調査室に届け出た。すぐに取り調べが行われ父のエリックはボードロフ侯爵家の籍を剥奪され平民となった。
そのせいで我が家の離れにいたゾルデとローザも平民となり屋敷から退去してもらった。
今頃平民となった3人で仲睦まじく暮らしているだろう。もちろんローザは学園は止めた。私が費用を払う義務もない。
我が家の執務は母の代からいてくれるローマンに頼んで私は仕事をしながら少しずつ領地経営の勉強をしている。
領地では益々ジャックが張り切ってくれているのでしばらくは今のままでやっていけそうだ。
王立図書館の仕事は楽しかった。
ただ、最近ギルバート様がやって来るようになった。何度か追い返していたが今日は私の仕事が終わる頃を見計らったようにやって来た。
私はその日の仕事を終えこれから帰ろうとしていた。
「レイナ嬢、話がしたいんだが‥あの時はすまなかった」
ギルバート様は私を見ると嬉しそうに走り寄って来た。
彼が手を伸ばし私の手を取ろうとした。私は咄嗟に身体を反転させて彼の手を避けた。
当然じゃない。またなの?今更何の話よ。いい加減にして。
私は体勢を立て直すと即座に言った。
「いえ、ワイニング侯爵令息。お気遣いなく。私は気にしておりませんので」
「そんな固い事を言うなよ。元は婚約者だったんだ。仕事は終わり?じゃ、カフェにでも行かないか?」
「そう言うの困りますので、私はあなたと話をすることはありませんから」
「また、そんな事言わなくたって、婚約はなくなっても俺たち友達じゃないか。あっ、もちろんローザとはあれっきり会ってない。はっきり言って騙されたんだ。あんなかわいい顔してまさかあんな腹黒い女だったとは‥レイナも苦労したんだよね?俺そんなのちっとも気づいてあげなくて悪かったと思ってる。これからはちゃんと君の事だけ見るし考えるつもりなんだ。どうだろう?俺との事もう一度‥いや、ごめん。それより仕事は慣れた?最初はいろいろ気を使うだろう?だからケーキでも食べて。さぁ」
ギルバート様は時々私を見つめながら何もなかったかのような顔でつらつらと喋りまくる。
まあ、これから付き合いでもするとでも言うならこんな風に誘われれば悪い気もしないかもしれない。
いつもなら断れば諦めて帰っていたのになぜか今日はしつこい。
でも、今さらよ。
私は迷惑でしかないようにわざと大きなため息を吐き出した。
「何度来られても私の気持ちは変わりません。どうぞお引き取り下さい」
彼の顔を見てはっきり断る。
だが、彼は更に話を続けた。
「いや、レイナの気持ちはわかる。わかるけどもう一度チャンスをくれないか?俺が悪かった。だから‥」
「失礼ですけど、あなたが婚約をなかった事にしたんですよ?それを今さら‥もしかして私がボードロフ侯爵位を継いだからです?申し訳ありませんけどあなたみたいなちゃらちゃらした男を婿として迎えるなんて天と地がひっくり返たってあり得ませんよ。もう帰って下さい。迷惑です!」
ギルバート様の顔が歪む。
ああ、図星か。
「なんだよ。人が下手に出てるのに!お前みたいな女ひとりくらい無理やり奪って結婚しなきゃならないようにだって出来るんだぞ。いいから、一緒に来いよ!」
ギルバート様が私の手を強く握った。
「何するの!放して、こんな事してただで済むと思ってるの?人を呼ぶわよ」
「呼べるもんならな」
ギルバート様が私の首に腕を回して口を押えた。
うぐっ!
私は失敗したと思った。
こういう話はもっと人の目があるところでするべきだったのだ。
私の周りには今は誰もいない。
うっ、どうしよう。




