素材と食べ物採取
妖精のための家の瓶詰を作ろう! そう気合いを入れたシスティナだったが、きゅるるるる……と鳴った自分のお腹の音にハッとする。
「そういえば、お腹が空いて森に食べ物を採りに行こうと思っていたところだったんだ!」
瓶詰作りの素材を見つけながら、ついでに食べ物を見つけたらいいかもしれないとシスティナは名案を閃く。
「スライムさん、森ネコさん、ご飯と瓶詰の材料を探しましょう」
『キュ!』
『にゃっ!』
ふんすと気合の入ったシスティナの言葉に、使い魔の二匹は元気に頷いた。
家の瓶詰作りは、様々なものを素材に使うことができる。
使う際に自分のマナで加工するため、瓶詰職人の腕によりはするが――自由に家具や環境といったものを瓶詰の中に再現することができるのだ。
例えば、カエルの魔物が住む瓶詰であれば、一日中、もしくは一日に何回か雨を降らせる瓶詰なんていうのも作ることができる。これは季節の観賞用瓶詰でも使われている手法で、素材さえあれば比較的初心者でも作りやすい。
この何日かで、システィナも森の中を歩くのに慣れてきた。
魔物はもちろん出てくるけれど、以前よりは冷静に対処もできていると思う。とはいっても、システィナのすることは魔物から離れることと、怪我をしないように魔物の攻撃を頑張って避けることくらいだけれど……。
魔物を倒し、たまに魔石をゲットし、システィナたちはどんどん森の中を進んでいく。
「はあ、はあ、はあ……結構歩いたかな?」
システィナは体力がほとんどなく、少し歩いただけでも息切れを起こしてしまう。しかし今は、ちょうどいい素材を発見して「あっ!」と目を輝かせた。
「これ、妖精さんのお家にいいかも!」
薄黄、黄緑、緑、様々な色の木の葉。白い花の花びら、それから濃いピンク色の花を見つけたので、システィナは採取していく。他に見つけたのは綺麗な小石だ。これは薄く加工して装飾として使うといいだろう。さらに、木の枝、木の実の殻といった自然の素材も手に取る。
「それから……あ、あの植物は図鑑で見たことがある!! 茎の太い部分を折ると、濃い色の液体が出てきてちょっとした染めに使えるはず」
しかし茎を折ると、ねっとりしたオレンジ色の液体が手についてしまった。思ったよりも量が多くて、容れ物を持ってきていなかったシスティナは慌ててしまう。
「わわわっ、手に付いたの擦っても全然落ちない……! これ、素材として使ったらかなり万能なことになるんじゃないかな……? だって、そう簡単に消えないってすごいことだもんね……? また後で、空き瓶を持って採取にこようっと!」
ほしいものは無限大だ。
「だけど、できたら布とかそういうのがあったらいいんだけど……。あ、わたしに用意してもらった服が何着かあるから、それを使えば素材になるかもしれない」
システィナがそんなことを考えながら歩いていると、森ネコが『にゃにゃっ!』と何かの合図を送ってきた。そしてそのまま近くの木にトントントントンッと軽やかに登っていく。
「森ネコさん、どうしたの――あ! 林檎!」
そう、森ネコは食べ物を見つけてくれていた。生っている林檎をちょんちょんと前足で触っている。
「美味しそう。森ネコさん、そのまま落とすことはできますか?」
システィナの問いに頷いた森ネコは、前足を使って器用に木の実を落とす。すると、林檎はシスティナの手のひらにすっぽり収まった。それを顔に近づけて、システィナは林檎の匂いを吸い込んだ。
「ん~~! 甘い香りがします!!」
システィナはリンゴを袖口で磨いて、皮ごとかぶりついた。
シャクッという音がして、口いっぱいに瑞々しさが広がってくる。そして一気に喉の渇きを自覚する。先ほど喋りすぎてしまったので、喉はカラカラだったようだ。
システィナが食べ終わるのを見ると、森ネコは二つ目、三つ目とリンゴを落としてくれる。林檎はエプロンのポケットに詰めて、「ありがとう!」と森ネコにお礼を告げた。これでしばらくは、食べ物に困らないだろう。
森ネコとスライムも林檎を食べて、森の中で少しばかりの休憩タイムだ。
たまに魔物は出てくるけれどほとんどがネズズやスライムで、使い魔二匹があっという間に倒してしまう。
「ようし! お腹も満たされたし、この調子で妖精さんの家の素材を集めましょう――あれ?」
木々の間から、何やら色が見えた。緑でも、木の実の色でもない、あまり森で見かけない色だ。
「なんだろう?」
システィナが走ってそちらの方に行こうとすると、森ネコが『にゃにゃっ!』と焦ったような声をあげた。見ると、スライムもシスティナの足に絡みついている。
「え? あ、崖だ……!」
システィナの家がある場所は、森の中でも少し高い位置にあったらしい。目の前にあったのは三メートルほどの高さがある崖と、その先にまだ少し広がる森。
けれどそのさらに先――森が終わった向こうには小さな村が見えた。




