使い魔の瓶詰 1
システィナは一度家に戻り、使い魔の瓶詰を早急に作るべきだと考えた。
使い魔の瓶詰とは、魔物を瓶の中へ入れて自分の使い魔とする瓶詰だ。システィナは作ったことがないが、使い魔の瓶詰を作ること自体はそんなに難しくはない。
「使い魔がいれば一緒に生活できるから楽しいし、魔物だって倒してもらえるし……いいことづくめじゃない!?」
システィナのワクワクは無限大だ。
「それに、使い魔になると瓶詰を媒介に主人と繋がるから、わたしの呪いの影響は受けないはず」
以前読んだ本に、システィナではないがそういった呪いのような現象は使い魔には無効ということが書かれていたのを覚えていた。
瓶詰にもいくつか種類があり、作った瓶詰によって使い魔にできる魔物が変わってくる。というよりは、狙った魔物が好みの瓶詰の空間や食べ物などを中に用意しておく必要がある。
そのため、強い魔物を使い魔にしたい場合は質の高い瓶詰を作らなければならない。この森にいる程度の魔物であれば、そんなに凝った瓶詰を作る必要はないので、今システィナが持っている素材でも問題なく使い魔の瓶詰を作ることができるだろう。
地下の作業場に行き、システィナは慣れた手つきで瓶詰を作る。
「初めて作る使い魔の瓶詰……。どうしよう、ワクワクしちゃう。だって、魔物が自分の家だと思ってくれるんだよね? わたしも、この家はすごく素敵だと思うし……魔物にとっても、安心できる好きな家になってくれたらいいなぁ! んへへ~!」
空き瓶に入れるのは、魔石に水、それから魔物が食べるご飯。システィナは悩みつつも、柔らかな土と、小さな器に水を入れた。そして食べやすいよう小さく切ったジャガイモと黒パンを入れてみた。
「わたしのご飯だけど、大丈夫かな? 美味しいし、きっと大丈夫!」
そして出来上がったのが、使い魔の瓶詰になる前の瓶詰だ。
【使い魔捕獲用瓶詰】
使い魔を捕まえるための瓶詰。
狙った魔物が好む住環境を瓶詰の中に作り、住み着いてもらうことにより使い魔にする。
「よし、これを仕掛けてわたしだけの使い魔を手に入れる! そしたら使い魔に強くなってもらって、森を探索して素材をたくさんゲットして、さらに瓶詰を作る。……うん、完璧だし、すごく楽しそう!」
ということで、家から十メートルほどの森の中に瓶詰を設置してみた。本当はもっと森の奥、システィナの生活環境が見えない場所に設置するのがいいのだろうが……それだと設置する前にシスティナが魔物に襲われてしまう。
「どうか気に入ってもらえますように!」
しばらく森に瓶詰を置いて、その中に魔物が入っていれば使い魔の瓶詰が完成だ。ただし、長期戦も覚悟しなければならない。
システィナは祈るような気持ちで使い魔捕獲用瓶詰を置いた場所を後にした。
***
――翌日。
システィナはさっそく森に仕掛けた使い魔捕獲用瓶詰を見に行くことにした。
仕掛けた瓶詰は二つ。高望みかもしれないけれど、両方の瓶詰に魔物が入ってくれていたらいいなとシスティナは思う。
「でも、難しいかな? 本には、捕獲用瓶詰を設置してもすぐに魔物が入ってくれることはほとんどないってあったし、初めて作った捕獲用瓶詰だし……。魔物が、この瓶詰いいなって思って住み着いてくれるとは……でも、わたしなりに一生懸命マナを注いで瓶詰を作ったし、ジャガイモも入れてみたし。でもでも、もしかしたら違う食べ物とか、私も数えるほどしか食べたことないけど、お肉とか入れておいた方がよかったのかな」
一人ぼっちに寂しさを覚えてしまったシスティナの悩みは尽きない。
少し離れた場所に二つ置いてあるので、まずは一つ目の瓶詰を見てみた。すると、何かが瓶詰の中でうごめいている。
とたんシスティナの目は輝いて、全速力で瓶詰の前まで来た。
「わ、わ、わ~~! 魔物が入ってくれてる! 成功したんだ……! すごい!! 何を気に入ってくれたんだろう? ご飯かな、それとも瓶詰の中の環境かな? 入ってくれた魔物――使い魔と話ができたらいいのに」
システィナが瓶詰を手に取って見てみると、中には薄い黄緑のうねうねした魔物が入っていた。
「あっ! 本で読んだことがある。この子はスライム。確か最弱の魔物で……強くはないけど、捕獲用瓶詰によく入るって書いてあったはず」
どうやら捕獲しやすい魔物だったため、システィナの瓶詰にも入ってくれたようだ。
「どうしよう嬉しすぎる……。うにうにした体が可愛いね……!!」
思わずシスティナもうにうにしてしまった。
「あ! あともう一つ瓶詰を仕掛けてあるんだった!!」
スライムに夢中になって忘れる前に、そちらも回収にいかなければならない。少し離れたところに置いたもう一つの瓶詰も見に行ってみると……こちらも魔物が入ってくれていた。
「え、え、え~~!? こっちの瓶詰にも入ってくれてる! 嬉しい!! 家族が一気に増えちゃったみたいな……!? もしかして、これが幸せの絶頂とかいうやつでは……!? そしてこのまま捕獲用瓶詰を設置し続けたら……システィナ王国になってしまうのでは……!?」
王城でシスティナに関わった人は少ないけれど、多くの人がいたことは知っている。使い魔が増え続けたら、国になってしまうかもしれない……なんてつい考えてしまったのだ。
「んへへ、楽しい。……わたしは楽しいよ、シェラちゃん」
別れなければいけなかった塔の妖精――友達の名前を、楽しく生きれているから大丈夫だよと言う気持ちを乗せてそっと呼んだ。
【使い魔の瓶詰】
主人:システィナ・リールラルグ
最弱の魔物。
【使い魔の瓶詰】
主人:システィナ・リールラルグ
森に住むネコ。木や岩に登るのが得意で、爪と牙で攻撃する。
使い魔捕獲用瓶詰に入った魔物は、本来の大きさから瓶詰のサイズに合わせて小さくなる。瓶詰の中で生活し、必要なときに瓶から出て元の大きさに戻るという仕組みだ。
「出ておいで~!」
システィナは早速瓶詰の蓋を開けて中に入っていたスライムと、もう一つの瓶詰に入っていた森ネコを出す。
森ネコは、その名の通り森に生息する猫の魔物だ。
俊敏な動きと鋭いツメでの攻撃が強みで、隠れるのも上手い。そのため姿を見ることは少ないが、森に詳しいので使い魔になるととても頼もしい存在だ。
スライムは『キュイ』と鳴いてシスティナに懐いてくれる。森ネコも、『にゃ~ん』とシスティナの足にすりよってきた。どうやらすでにシスティナのことを主人だと認識してくれているようだ。
「わあ、すごい! よろしくね、スライムさん、森ネコさん!」
『キュイ~』
『にゃ!』
スライムを撫でてみると体が少しひんやりしていて気持ちよくて、ちょっともちもちしている。森ネコを抱っこするとふわふわで、思わずぎゅっと抱きしめてしまう。
「二人とも可愛すぎるよおおぉぉ~!」
こうしてシスティナは、二匹の使い魔をゲットした。




