祭り
「4人の中の誰かが、他の3人にあの夢を見せているって……こと?」
ムツキ、アサノ君を見ると、2人も互いに視線を交わしていた。
「その可能性も0ではないでしょうね。ですが、4人に限定しないほうが良いと思いますよ」
「僕達、以外……?」
「その可能性も併せて考えた方がいいと思います。また『夢を見せる能力』と言っても、いくつもあるわけですが、簡単に説明しましょうか。まずはテレパシーですかね……」
「……何を考えているか読み取ったりするやつですか?」
「はい。ただしテレパシーにも種類がありまして、相手から読み取る以外にも、相手に言葉や映像を伝えたりする能力も含まれるんです」
「そっか、受け取ることが出来るなら送ることもできるってことやんね」
「誰か犯人がいて、私達はそれを受け取って夢を見てるってこと……?」
「ええ、そう考えれば超能力者は1人でいい。つまり、全員が超能力者でなくともいいということになります。他には『ドリームウォーカー』と呼ばれる人たち。彼らは誰かの夢に入り込んで、その内容を書き換えたり、メッセージを残したりすることが出来ると言われてます」
「へぇー、なんか面白い」
「あとは神様関係かな」
「神様?」
「ええ、『お告げ』という言葉を聞いたことありませんか?」
「あー、俺でも聞いたことある」
「シャーマニズムという言い方も出来るかもしれませんが、古来『夢』というものは精霊や神様と繋がり、重要なメッセージを受け取る場でもあるんですね。日本神話でも神様が人々の夢に登場し、未来の警告や問題の解決策を教えてくれるシーンはたくさんあります。海外でも『夢』というのは神話、あるいは宗教なんかと強く結びついている」
キーンコーンカーンコーン。予鈴が鳴る。
「おっと、もうこんな時間ですか。この話はここまでにして教室に戻りましょう。私も職員室にもどって準備をしてこないと」
「はーい」
給食室から教室へ戻る廊下をあるきながら少し話をする。
「先生の話、どう思った?」
「そうですね。誰かが夢を見せている、というのは私達全員が超能力者という説より、可能性がありそうな気がしました。でも結局『どうして夢を見るのか』から『誰が夢を見せているのか』に問題点がスライドしただけなのかもしれません」
「僕は結構面白いと思ったよ。一歩進んだ感じがする」
その後、教室に戻るとすぐに数学の授業が始まった。6限の社会とホームルームも終わり、大和先生に話しの続きを聞けるかと楽しみにしていたが、先生は『ごめん。今日はこれから先生達の勉強会があってもう出なきゃいけないんだ。また今度ゴールデンウィーク明けにでも、話をしましょう』そう言って帰っていってしまった。タク君もすぐに帰ってしまい教室に残った私達も帰り支度を始めた。
「話、聞けなかったね」
「ですねぇ」
「あ、そうだ!」
声を上げたのはマイだった。
「3人はゴールデンウィークどうするの?」
3人とは、私、ムツキとアサノ君の山村留学生のこと。ムツキは伊良原に家族で引っ越してきたから少し話はことなるが、私とアサノ君は寮以外に帰る家がある。つまり、ゴールデンウィークは学校が始まってから初めての長期休暇、帰りたいかと言われるとその気持は少しあったが『お盆に迎えに来る」と母さんが言っていたのを思い出す。
「僕は家に帰る」
「今のところ、こっちで過ごすつもりだけど、特に用事はないかなぁ」
「私も特に用事はありません。どうかしましたか?」
「ゴールデンウィークの最後の方。正確には5月4日と5月5日かな。伊良原でお祭りがあるんよ。もし良かったら一緒にいかんかなって」
「おー、お祭り!」
「いいですね」
「んでね、4日の夜には神社で神楽が奉納されるんやけど、今年からタクも踊るんよね」
「え? 神楽を?」
「そう」
「すご」
「神楽ということは夜祭ですね」
「うん。一応、出店も出るよ」
「行く!」
「では、私も行きます」
「決まりやね、じゃあ神楽の日にまた連絡するけん」
学校を出てすぐ、反対方向へ走っていくマイを見送り、いつもの道をムツキと並んで帰った。話題はゴールデンウィークのこと。だって、最近私達の話題は怖い夢のことばかりで、目の前に降って湧いた楽しそうなイベントに気が浮いていたんだから。




