デジャヴ
「……たぶん」
視線がアサノ君に集まる。
「『デジャヴ』は知ってる?」
「え……、まぁ」
「はい」
「『デジャヴ』を感じたことは?」
「何度か?」
「俺も2回か3回くらいだな」
「僕は多分、『デジャヴ』を感じやすい方だと思う。多い時は1日に2回なんてこともあったから。
でね、伊良原に引っ越してくる数日前だったかな。朝起きてすぐお腹がすいていて、朝ごはんを食べようとレトルトカレーを温めてたんだけど、デジャヴに襲われたんだよね。
多分、あの時は起きてすぐだったから覚えてたんだろうけど、それってその日の朝に見た夢と同じだったんだ。だから、予知夢っていうのは実際にあるのかもしれないなって、ちょっと思ってた」
「デジャヴが予知夢……ってこと?」
「そういう説もあるようですね。実際インターネットで予知夢を調べようとすると『デジャヴは予知夢なのかもしれない』という話が結構出てきますから」
「まぁ、偶然かもしれないけどね」
「結局、アサノが言いたいことって何やっけ?」
「あー、っと。そうだった」
「つまり、僕が言いたいのは、『予知夢』ってそんなに特別な能力なのかなってこと。『デジャヴ』が『予知夢』ならば、って前提条件がつくけど、誰しも多かれ少なかれ『予知能力』を持っているのかもしれない」
「あー、そういうことか」
「でも。でもですよ。確かに、誰でもデジャヴを見ることはあると思います。ですが、あの夢とはちょっとそういうのとは違う気がしませんか?」
「……そうなんだよね。あれはちょっと普通じゃない感じがするんだけど、でもだから、どう扱えばいいのか僕もわからないんだ」
「なーんだ、結局、元に戻るのかぁ」
「何だか、おもしろそうな話をしていますね」
突然部屋の入口から声が掛かり、振り向くとそこにはクラス担任の大和先生が立っていた。耳が隠れるくらいまで伸びたボサボサ頭に黒縁のメガネ。大体いつも白い長シャツにチェックのベストを着て折り目のついた黒のズボンを履いている。
「先生」
「ごめんごめん、ちょっと歩いていたら声が聞こえたので」
「あっと……」
「どこから聞いてたんですか?」
「そうだね。予知夢がデジャヴじゃないか。つまり、誰でも予知能力を持っているのかもしれない。ってところかな。誰か変な夢でも見た……のかな?」
「そう、なんです。ここのところ怖い夢を見るんですが、同じ夢を4人が見ていて。何か意味があるのかなってみんなで考えていたんです」
「へぇ、同じ夢を。それはすごい」
「一応、確認なんですが先生に変な相談すると、内申点に響いたりしますか?」
「あはは、しないしない。そんなことしてたら僕が入ってたオカルト研究会の仲間はみんなマイナスの内申点になってしまう」
「うわ、オカルト研究会やって」
「スピ系だ」
「話しを振っておいてその反応はひどいなぁ。けどまぁ、大丈夫、それで他の人に迷惑をかけたりするようなら問題だけど、そんなことするつもりはないんでしょう?」
「それは……、はい」
「なら、大丈夫ですよ。ああ、そうだ。ちょっとみんなに先生からも相談があってですね」
「私達に相談ですか?」
「ええ、校長先生から何か部活でも始めたらどうか、と」
「部活……」
「この人数で?」
「あはは、確かに野球やバスケットみたいな複数人で行う競技は無理ですが、少人数でできるものはいくらでもありますから。少し考えてみてくれますか。スポーツ系なら剣道、バトミントン、卓球、陸上、と言ったところでしょうか。文化系なら、音楽、美術、かるたや料理、写真なんてのもいいですね」
「剣道なんてできるん?」
「先生はこう見えて剣道3段です。中学の頃はオカルト研究会と掛け持ちをしていました」
笑顔で胸を張って言えるところがすごい。
「先生。オカルト的には、繰り返し見る怖い夢というのはどんな意味がありますか」
「お? そうですね。未来の危険を察知して、無意識に夢で警告しているという先程の『予知夢』もありじゃないでしょうか」
「えっと、その……複数の生徒が同じ夢を繰り返し見ているんです。予知夢って超能力の一種ですよね。そんな複数の超能力者がこの学園にいるというのがどうしても納得できなくて」
「ああ、それでみんなが見る『デジャヴ』の話になったんですね」
「そうです」
「ふーむ、なるほど。逆もありますよ」
「逆?」
「ええ、例えば誰かが『夢を見せる能力』を持っている、とか」




