四人目
翌日の昼休み、給食の時間に初等部の子たちに例の夢を見た子が他に居ないか聞き込みをしてみた。結果はマイが話してくれた1人だけ。初等部8人のうち外部からの山村留学生は2人。うち1人は4年生で私達と同じ寮生。もう1人は以前マイが言っていた夢を見た1年生で名前はタツミ君。この3月、両親と共に大分から伊良原に引っ越して来たらしい。
なお、中等部の男子2人、アサノ君とタク君も私達の調査対象だったので、昼休みに一緒に話を聞こうと思ったのだけれど、私達が給食を食べている間に、一瞬で給食を終わらせ教室に戻ってしまった。男子って給食は飲み物か何かだと思っているフシがある、と思う。この2人に関してはマイが追いかけて話を聞いて来てくれるのだそう。
「いなかったね」
「ですねぇ」
「結局、夢を見たのは私とムツキ、初等部1年のタツミ君。違いがあるとすればタツミ君は週に1~2回あの夢を見てる。私は2度。引っ越してきてすぐと入学式の前日。ムツキは?」
「私も2度です。入学式の前日と、1週間くらい前ですね」
「一体、何なんだろうね」
「正直、わかりません」
「だよねぇ。これ以上は何か調べられることある?」
「……先生は誰か見てないんでしょうか」
聞いてみたい、とは思わなくもない。が、何と言って聞けば良いのか全くわからなかった。
「うへぇ。絶対変なやつって思われるよ」
「ですよねぇ」
「内申点? に響いたりするのかな?」
「さすがに内申書にスピ系とは書かれないと思いたいですね。書かれたとしても受け取る高校側から、『この中学の担任大丈夫か』って思われそうじゃありませんか?」
「……確かに。学校単位でやばい認定されそう」
2人で笑っていると、マイが同級生の男子2人、タク君とアサノ君を連れて戻ってきた。スポーツ刈りでいつもどこか寝ぼけた感じの顔に見えるタク君と耳に掛かるくらいのサラサラヘア―、気の弱そうなくりくりした眼をしているのがアサノ君。
「いた。4人目。アサノ君」
「まじ!?」
「これ何の集まりなん?」
「タクは来なくていいって」
マイとタク君は物心がつくころからの幼馴染で互いに『タク』、『マイ』と呼んでいる。タク君の本名は『尾形 拓哉』で私達は最初、『オガタ君』と呼んでいたが本人がどうにも『こそばいいのでタクかタクちゃんでいい』と言うのでタク君と呼ぶことにしている。ちなみに『こそばいい』は『くすぐったい』のような意味だそうだ。
「アサノ連れてかれたら、俺ひとりやん。1人で教室にいてもやることないし」
「まぁ、いいけど」
マイに押されるように、ムツキに促されるように同じテーブルの席に座らされる2人。
「で、アサノ君も例の夢を見たの?」
「うん。神社の境内で女の子が泣いていて、助けなきゃって思うんだけど、気づくと金縛りに合って動くことができない。そして最後は体があちこち折れ曲がって目が覚める」
「折れ曲がって……?」
「見えないから感覚だけど、上半身と下半身が座布団を二つ折りにするみたいに。背骨が折れる音とか結構すごい音がする」
「れ、冷静だなぁ」
「ですね」
正直なところ私としては例の夢は二度と見たくない。それが率直な感想だったが、アサノ君はあの夢を何度も見ていて、しかも平然としているように見えた。
「冷静に見えるだけ……。あの夢を見た時は毎回心臓がばっくばく言ってるし、全身汗びっしょりになるから」
「一緒かぁ」
「とりあえず、学園の生徒は全員調べてあの夢を見たのは全部で4人だということがわかりました」
「4人もいるの?」
「アサノ君が4人目ですね。私とアオイ、初等部のタツミ君、そして、アサノ君」
「何でうちには見えんのやろ、タクは?」
「俺も見てない」
「で、いろいろムツキに見てもらったんだけど、これは予知夢じゃないかって話しをしてたのね」
「ヨチム……?」
「未来のことを夢でみる超能力的なやつ。知らん?」
「あ、予知夢。それなら知っとう」
「でもねぇ。全校生徒13人に対して、予知能力者が4人とか多すぎるんじゃないかって、ムツキは言ってる」
「ですね。言ってしまえばあり得ないほど多いと思うんです。私が伊良原に来る前、通っていた学校には100人近く生徒が居ましたが、同じ割合で予知能力者がいたとしたら30人くらいは居たことになります。1人いるだけでも話題になりそうなのに、私は一度も聞いたことがありません」
「2人はこれまで予知夢を見たことは?」
そう聞いてきたのはアサノ君だ。
「ないよ」
「ありません」
「……僕はあるよ」




