占い
6限の授業も終わり、放課後の教室にはクラスの女子3人が集まっていた。机の上には昨日約束したムツキのタロットカードが広げられていて、金で縁取りされた白いタロットカードは普通の紙とは違い高級そうに見える。まぁ、普通のタロットカードが何で出来ているか知らないけど。
「わー、綺麗やね」
方言まじりにそう言ったのはマイ。このクラスの3人目の女子。耳が少し出るくらいのショートヘアに子供っぽさの残る丸い顔。笑うととても愛嬌のある顔立ちで、ほんのり肌の焼けた生まれも育ちも伊良原の伊良原っ子だ。
「少しだけ高かったのですが、お父さんにおねだりして買ってもらいました」
ムツキに会ってまだ半月しか経っていないが、三人の中でムツキは一番大人びていると思う。だが、笑顔でそう言った姿を見ると『やっぱり同級生なんだな』という気がした。
「さて、では何を占いましょうか」
「何が占えるの?」
「そうですね。近い将来のこと、友人関係などの悩み相談、あとは……、恋愛でしょうか」
「マイ好きな人いる?」
「おらんけど……、乙女的には気になるよね」
口角を持ち上げて、イシシと擬音がツキそうな笑顔を作る。
「アオイはどうなん?」
「残念ながら……、いない!もしいたら伊良原に来ていない!」
「そりゃそうやね」
「恋愛は『想い人とうまくいくか』のほうがやりやすいですし、何か明確な悩みがあるなら悩み相談はどうですか?」
「明確な悩み、ってことも無いんだけどね」
「そうですか? では、今回は近い将来について占いましょうか」
昨日の会話を知らないマイは、少しだけ『何の話だろう』という顔をしていたが、2人にはそのうち話すかもしれない。
「遠い将来は無理なん?」
「人によっては可能だと思いますが、あまりおすすめはできませんね」
「どうして?」
「遠い将来のことなんて占ってもどうせ忘れてますよ」
いたずらっぽく笑うムツキにつられ、マイも私も笑ってしまう。それもそうだなと思った。
「さて、ではアオイから行きましょうか」
「それでいい?」
「うん、もちろん」
「では、どうぞ」
ムツキの向かいの席に促され、言われるままに座るとタロットの束を渡される。
「近い将来のことを考えながら、軽くカードを切ってもらえますか?」
「はい」
何を考えればいいのかわからなかったが、深く考えず部屋で宿題をしている姿を思い描きながら、5回ほどカードを切り、ムツキに返した。
「では、始めますね」
受け取ったカードの束を持ち、ゆっくりと丁寧に、一番上のカードを机に伏せる。
「一枚目、このカードはアオイの現在の状況を表します」
伏せたカードをめくると、『崖のふちを歩く旅人』のカードが現れた。
「『愚者』ですね。このカードが意味するのは、『変化』、『戸惑い』と言ったところでしょうか。と言っても、暗い意味ではありません。どちらかというと前に一歩踏み出したことで、変化があり、それに慣れていこうとしている」
「伊良原に来たアオイにぴったりやん。すごい!」
「確かに?」
「二枚目に行きましょう。二枚目は――」
ムツキは一枚一枚、場所の意味とカードの意味を丁寧に伝えてくれた。
「さぁ、10枚目。これが最後のカードになります。意味はこの占いの最終的な結果、と言ったところでしょうか」
めくったカードには、『大きな鎌を持った骸骨』。私でも知っているカードだった。
「……死神」
「大丈夫ですよ。タロットカードの死神は何かの終わりを意味するんです。例えば、『部活を辞める』であったり『恋の終わり』であったり、と言っても何が終わるのか、までは私ではわかりませんが」
「そっか」
「んじゃ、次はうちね」
席を立ち、マイと交代する。
「では――」
マイの占いが始まり、現在を表す一枚目はライオンが描かれた『力』のカードだった。意味は『内側から湧き上がる強さ』や、『粘り強さ』らしい。口には出せないが、元気いっぱいなマイにはぴったりだと思った。その後も、2枚、3枚とカードがめくられていく。
「さて、これで10枚目。最後ですね」
ゆっくりとムツキの手でめくられたカードには『大きな鎌を持った骸骨』が描かれていた。




