幕間(マイ)
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朝、目が覚めると雨が降ってた。今日は5月5日。神楽の翌日。
毎年神楽と言えば、意味もなく夜ふかししても誰からも怒られない素敵な日だ。でも今年は違った。
目が覚めて一番最初に考えたのは、昨夜の神楽のこと。足を動かすだけでうめき声をあげ、額から脂汗を流すタクの姿。持ち上げた足の重さがまだ手に残り、どうしても頭から離れない。
昨日は病院まで付き添い、タクんちのおばさんに会った。おばさんはシングルマザーで1人でタクを育てている。病院の先生の発した『完全骨折』、『入院1ヶ月』というワードにおばさんは随分動揺していたようだ。帰りの車の中では、いつもの明るいおばさんに戻っていた気がするが、帰り着いたときは既に24時を回っていた。
少し寝不足気味の重たい体を起こし、ベッドから起き上がる。4畳半の部屋。壁には中学の制服がハンガーで吊るされている。部屋のふすまを開け、階段を下りると居間に出る。右手の土間に向かい冷蔵庫の中を開けると、ほとんど中身は空っぽだった。牛乳と卵とニラ、人参が半分。両親は共働きでゴールデンウィーク中も働きに出ると言っていた。
「母さんに、帰りがけなんか買って来て、って言っとかんとね……」
卵を2つとニラを取り出し、ボウルに卵を割り入れ、水と白出汁を加える。流し台から去年村から頂いたイチョウのまな板を引き出し、ニラを刻んでボウルに入れる。四角い卵焼き用のフライパンを取り出し、コンロの上に置く。手慣れた手つきで卵焼きをくるくると巻き、ニラ入りのだし巻き卵が完成。
「いただきます」
誰もいない居間に声を掛け、もくもくと朝食を取る。村の神幸祭は4日、5日で開催される。今日はまだ神幸祭が続いていて、昼からは神輿が出るはずだが、昨日の今日で祭りに行く気には慣れなかった。
アオイとムツキは何をしてるかな、そんなことを考えながら何となく歩いていると学校のすぐ近くまで来てしまった。道路からダムを見下ろすと旧国道が見えた。昔はあの細い道を歩いて小学校に通っていたんだなと何となく思う。ふと下に降りてみるかと思い、かろうじて通れる細い道を下ると、左手に水はけの悪い沼がある。この辺りの人はジルチと呼ぶが、どんな漢字を書くのかよくわからない。『ジルい』は『水はけの悪い』と言ったぐあいの意味で、ジル田と言えば日当たりが悪くいつまでも乾かない田んぼのことになる。秋、稲刈りの時にはコンバインが泥だらけになったりすることもあるのであまりいい意味ではない。
何となくそんなジルチに近づき目をやると、透明なゼリー状のつぶつぶが大量に目に入る。とても数えられないほどの数の透明な球体。
ああ、そうか。そんな時期なのだなと思った。アオイとムツキに見せたらどんな反応をするだろうか。
昨日のことで暗くなっていた気持ちが、少しだけ上向いた気がした。




