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【完結】くだらないので、さっさと婚約破棄したらどうです?  作者: 逆立ちハムスター


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それから数日の徹夜作業の末、彼らは見事に3件の適用判例を探し出し、私の指示通りに「現代においても、国家防衛の緊急事態においては本法を適用し、国家予算から適正な補償金を支払うことが合法である」という完璧な【法意見書】を作成してくれたのだ。


(よーしよしよし! 最高ね。順調よ。これで法的な裏付けは完了! 専門家のお墨付きがあるってのが大事なのよね。いざって時に「私が考えました」じゃなくて「専門家の見解に基づいています」って責任転嫁できる! リスクヘッジは完璧だ!)


法務の準備が少し整ったところで、次は「経済的客観データ」の用意である。

私は実家の権力をフル活用し、公爵領の鉱山ギルドからある報告書を取り寄せた。

我が領地で産出される「精霊砂」の、過去5年分の産出量データと、今後の埋蔵量予測である。精霊砂は、魔道具の動力源や、強力な防御結界の触媒となる、極めて価値の高い物資だ。


「なるほど……近年の産出量は安定して右肩上がり。しかも、未発掘の鉱脈がまだこれだけある……。十分すぎるわね。しかし、これは国が未来も安泰ならの話」


私は届いた報告書(数字の羅列)を眺めながら、邪悪な笑みを浮かべた。

前世の社畜時代、無意味な売上予測グラフを毎月作らされていた経験が、ここで活きるとは思わなかった。


(このデータを使って、「我が公爵家の精霊砂鉱山は、国家の防衛において不可欠であり、莫大な経済的価値がある」ということを証明する。国が買い取る、いや『接収』するだけの価値があると、数字で突きつけさせる。感情論じゃ人は動かない。人は常に『数字』と『利害』で動く!)


さあ、手駒は揃った。

ここからは、関係各所への「根回しのターンである。

前世で数え切れないほどこなした、反対派を「正論」で黙らせるのではなく、「反対すると自分たちが損をする」状態を事前に作り上げる営業プロセスだ。


最初のターゲットは、当然【軍部】である。

私は父であるアゼル公爵のコネを使い、軍の兵站部(物資の管理や調達を行う部署)のトップであるバルガス将軍を、我が家での極秘の茶会に招いた。


筋骨隆々で、顔に大きな傷のあるバルガス将軍は、華やかなお茶会には不釣り合いなほどの威圧感を放っていた。


「公爵令嬢殿が、我らのような無骨な軍人に何のご用で? 茶飲み話なら他を当たっていただきたい」


警戒心も露わに睨みつけてくる将軍に対し、私はふわりと、だが確かな自信に満ちた笑みを向けた。


「単刀直入に申し上げますわ、バルガス将軍。現在、隣国との国境付近での小競り合いが頻発しておりますね。軍としては、早急な防衛体制の強化が必要……しかし、財務部は予算を渋っている。違いますか?」


「なぜ、深窓の令嬢がそのようなことを?」


「私からのご提案です。我が公爵領が誇る『精霊砂鉱山』を、国家防衛物資の拠点として、完全に『国有化』する法案を通しませんか?」


バルガス将軍の目が、驚愕に見開かれた。


「なんだと!? あの銀箱の鉱山を手放すと言うのか!? 公爵殿が許すはずがない」


「父の説得は私が必ずいたします。将軍、お考えください。精霊砂が国家防衛物資に指定されれば、法的に軍の備蓄は『義務化』されます。義務化されれば、財務部は次期の軍事予算を確実に増額せざるを得ません。軍にとっては、安定した物資の供給と、確実な予算獲得の両方が手に入るのです」


(さあ、食いつけ。お前たち軍部が一番欲しいのは『金(予算)』と『大義名分』だろう? 私がそれをセットで提供してやるって言ってんだよ。この提案に乗らない手はないはずだろ!)


私は用意しておいた精霊砂の産出量データと、防衛体制強化のシミュレーション資料を将軍の前に滑り出させた。

将軍は険しい表情で資料を読み込み、やがてゴクリと喉を鳴らした。


「……令嬢殿。これが実現すれば、我が国の防衛力は飛躍的に向上する。だが、公爵家にとってのメリットは何なのだ? ただの愛国心か?」


「ええ。この国と、民の安寧を守ることこそ、貴族の責務ですから(※大嘘。後で国庫から超巨額の補償金を引っ張るためだよ)」


聖母の微笑みを向けると、バルガス将軍は深く頭を下げた。


「その気高きお心、このバルガス、感服いたしました。この法案、軍部を挙げて全面的に支持させていただきましょう!」


よし、軍部(武力と発言力のある派閥)の巻き込み、完了。


次なるターゲットは【財務部】。

これは話が早い。なぜなら、財務卿は私の父、アゼル公爵だからだ。

私は父の執務室に乗り込み、古代硬貨をマイクロスコープでうっとり眺めている父に告げる。

「10年スパンの財政シミュレーション試算表」を叩きつけた。


「セリア、これは……?」


「お父様。我が家の鉱山を国有化した場合の、国庫の収支シミュレーションですわ」


「ほお……ふむ……はあん……」


「仰りたい事は分かります。初期段階では、国庫から我が家へ『戦時国家補償法』に基づく莫大な一時補償金(支出)が発生します」


「うむ。国庫の負担は大きいが……我が家にとっては途方もない利益だな。不安定な世情を鑑みるに、悪くはない。だが、他の官僚が納得するか?」


「ご安心を。国有化後、精霊砂を優先的に国内で還流させ、武具や魔道具の生産力を上げます。これにより、これまで隣国から高値で輸入していた防衛関連物資の輸入関税を、5年で相殺できます。10年後には、国庫は黒字に転じますわ」


父は、私の作った完璧なExcel(のような手書き表)と、損益分岐点のグラフを見つめた。


「奇妙だが完璧だな。ふむ、一見すると国庫が損をするように見えて、中長期的には国が得をする大義名分が完全に立っている! しかも、我が家には合法的に莫大な金が転がり込むか……! セリア、お前は、天才か……!!」


(チョロい。まあ愛娘補正は効いているだろうけれど、単なる強請りの我儘ではない。前世で役員会議を通すために作った「都合の良い見通し(皮算用)資料」の応用。数字を気持ち丸めて、将来の利益を強調すれば、官僚なんてイチコロだ。これで財務部(金庫番)のトップの承認も取れた!)



いよいよ最終段階。【外堀の埋め立てと、手続きの固定化】である。

前世の政治でもよく使われていた「閣議決定(内定)」の技術だ。国王の御前会議で発表する前に、誰にも文句を言わせないよう、あらかじめ「変更不可能な公文書」にしてしまうのである。


私は、軍部のバルガス将軍、財務卿である父アゼル、そして公爵家の三者連名で、国王陛下宛ての「国防に関する上申書」を作成した。

この上申書には、「鉱山の国有化」「戦時国家補償法に基づく補償金の支払い」などの重要事項がびっしりと書かれている。


そして、ここが肝心なのだが。

この上申書の末尾に、しれっと「王太子ユリウス殿下の署名」を混ぜておいたのだ。


「セリア、こんなところに呼び出して何用だ。俺はエレナとの茶会の約束があるんだが。お前、エレナが羨ましいのか?」


学園の廊下でユリウスを呼び止め、私は一枚の書類を差し出した。


「殿下、お忙しいところ申し訳ありません。先日殿下が視察なされた、防衛施設の総括レポートの確認をお願いしたく存じまして。こちら、殿下の署名が必要な公務の書類でございます」


(さあ、読まずにサインしろ。前世の上司も、ゴルフバカと電話しながら、面倒な決裁書類は内容も見ずに署名してたぞ。お前もどうせ中身なんて読まないバカだろ?)


「ああ? ……ちっ、防衛視察か。まったく面倒だな。わかった、ここにサインすればいいんだな」


ユリウスは、私が差し出した書類の束の一番上(ダミーの視察レポート)だけをチラリと見て、一番下のページ(本命の上申書)へ、終始気だるそうな様子でスラスラとサインしていく。


「ありがとうございます、殿下。これで手続きが進みますわ」


「ふむ、勝手にやってろ。お前はそういう雑用がお似合いだ」


(契約書にサインする時は全ページ確認しろって教育で習わなかったのか? これで『王位継承者もこの法案に賛同している』という最強のカードが手に入ったわ!!)


さらに私は、実家の権力と莫大な賄賂(もとい、心付け)を使って、王宮の法務官に根回しを行った。

この上申書を、通常設けられている「2週間の異議申し立て期間」の間、保守派の貴族たちの机に回らないよう、他の膨大な年末予算書類の束の底に紛れ込ませて処理させたのである。


気づいた時には、異議申し立て期間は終了しているはずだ。


予定通り、上申書は、法務局の一次審査を正式に通過した「覆すことのできない公文書」として成立したのだ。


これで、すべての罠は完成した。

あとは、舞台の幕が上がるのを待つだけである。

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― 新着の感想 ―
資源握っていたほうがカードとしては強いのに、お父様があっさり手放したのは、この家結構お金に困ってる?
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