閑話 とある騎士の証言より
閑話 とある騎士の証言より を開いていただきありがとうございます!
本内容は本編と深くかかわることにつき、飛ばし読みは推奨いたしません。
突然ですが、こんにちは。私は此度の横領調査で第一王子殿下率いる調査部隊に所属しているものです。
もう少し私を語るなれば、王国騎士団 第三部隊 支援班 所属のなんてことない一介の騎士です。
※王国騎士団 第三部隊 支援班は裏社会の人間からも悪魔と評されています。
そんな私がなぜ、一人語りを始めたのか…それには他ならない理由があります。
怖かった~
え? 何がって?
いや、明らかにお怒りでしたからね、殿下方。
馬車の外まで漏れ出てくる冷ややかな空気ととにかく恐怖の笑い声。
あれ、怖くない人の方が珍しいですって。
普段はやさしい微笑みを浮かべて、誰の話でも聞いてくださる。
おまけに、大半の人が怒るようなことにもほとんど怒らない、そんな第一殿下が隠すことなくお怒りでしたし。
第二王子殿下なんてもっと怖かったですよ。
小屋から帰ってきた途端、第三部隊に『すべて調べ上げろ』って。
いつもの美しい言葉遣いはいずこへ?
その時、浮かべていた微笑みなんて…
本来は北の地が真冬になる前に調査を終えて帰るはずだったのに、あの一瞬だけは間違いなく真冬を味わいましたから。
しっかし、なんであんなにもお怒りだったんでしょうか?
まあ、それはあまり心証のいい話じゃなかったですし、何より、孤児をあんな扱いって、この国に対する冒涜でしかないですけど。
私も騎士として『許しがたい』とは思いましたけど、あそこまでお二人がお怒りだから冷静になりましたね。
たとえ、それが『名もなき孤児』だったとしても、普段のお二人からは正直、想像できない怒りようでしたし。
ていうか、支援班の誰もその怒りの動機が分からないなんて異常事態ですよね?
あんま余計な詮索すると、今回は怒りに触れそうなんで、誰もしないでしょうけど、これは調べても出てこなさそうですもん。
そもそも、あの少年周りの情報だけはほんとよくわかんないですよね~。
少年も少年でうわさに聞く限り、年齢の割にっていうか、閉じ込められてた割に頭のいいらしいし。
あとはどっから湧いて出てきたかわからないやばい魔法使いがいるってことしか…
これ、私たち無能って言われるんじゃ…
こっわ! やめやめ、考えたくないことは考えない、これほんと大事なことです。
何はともかく、もうあんなにお怒りになった理由っていったら、あれくらいですかね?
『王族は鋭い』とかいうやつ。
まあ、噂話なんかより、普通に王族として国を愚弄されれば、私たちの怒りの倍以上になるって話の方が濃厚か。
まあ、一介の騎士にはよくわかりませんがね。
※王国騎士団 第三部隊 支援班は所属人数わずか十人。彼らが知らないことはないとまで言われています。
「おい、何してる! 次行くぞー!」
おっと、いけません。それでは私はこれで失礼いたします。
またの機会があれば…ってあってほしくないですね。
だって、それってまたなんか問題があったってことですよね?
私のこと呼ばないでくださいね。
「おい、いい加減にしろ! 置いていくぞ!」
「――あ、待って、待ってくださいってば!」
◇◇ ◇
「まったく、支援班ときたら…」
少しばかり冷めた空気が流れる。
「ダメですよ、いくら国に尽くしているあなた方でも、いくら兄上を支持してくださっていたとしても。
まあ、探る気はないようですから、いいですが。
それはそうと、少し表に出しすぎましたね。
そうなってくると、やはり…
とにかく、父上のもとへ連れて行ってみない限りはわからないですね。」
また、穏やかな空気が流れるまで数秒間。
その数秒だけは、言葉の余韻を噛みしめていた。




