閑話 報告会。そして、見守り隊結成
「それで? どうだったかい、ステリーは?」
「ルミステリアン様には礼儀作法を教える必要性は感じませんでした。
警戒心は強いようで、最初こそ毒をお疑いになられて、カップの入れ替えを要求してきましたが…」
流石に予想外の行動に唖然とする。
「それ、よく怒らなかったね。」
「いえ、毒を疑っているよりもわたくしのことを試しているという方が適切な感じでしたから。」
「そう。」
「しかし、問題はその後かと。ふとした時に出る所作がきれいだとお聞きはしておりましたが、あれはそんなものではありませんでしたよ。」
思い返すようにして語る。
「紅茶を入れ替えたときにあえて取っ手の向きを回さなかったのですが、
それを踏まえても完璧な手順で紅茶を飲まれておいででした。
そのお姿はそこらの貴族を遥かに凌駕しておられました。
また、それが意識下の動作ではないことも見る人が見ればすぐに分かるでしょう。」
集う者たちは一様に思う。
――それが事実であれば…とても孤児ではありえない…
「シルビー婦人をそこまで言わしめるとは…
さすがに驚いたねぇ」
「そうですね。
ホーソーン学士の方はどうでしたか?」
「ルミステリアン様は基本的にはとても聡明な方かと。
なんでも、本を読んでおられたとかで知識は多いようです。」
「ああ、知識の情報源はやはり、小屋にあった大量の本だったか。」
「ただ、その知識の一部を現実のことだと認識しておられないようでした。」
「現実として認識していない?」
「はい、今回であれば『書く』というのは架空の動作だと。
空書きするのが限界であり、その文字は残せない、という認識だったようです。」
「ん~…本には文字が記されているのにかい?」
「それとこれとは結びついておられない様子でした。
そもそもあれでは…まるで、自分が生きていたのは本の中だったと言っていたようなものですし…」
「それに感情を表す言葉を言ってはおられましたが、言葉には熱は籠もっていませんでした。」
「でも、希望がないようには思えませんでしたよ、殿下方。わたくしたちの接し方次第では必ず彼は変わるでしょう。」
「婦人、その根拠は?」
「紅茶を飲まれた後、少しその余韻を味わっているようでしたわ。味を感じているのであれば、大丈夫かと。」
「ええ、それはまあ。私も心配はしていますが、深く気にしているわけでもありません。文字を書く姿は年相応か、それ以下に見えましたから。」
「まあ、私たちもそこは心配してないさ。彼の心は死んでいない。それはたぶん、彼自身が今一番知っていることじゃないかな?」
「だから、それよりも…」
「意図的な知識の偏り」
「………」
「しかし、そもそもなぜ彼に知識を与えたのでしょうか?」
最後の疑問に対する答えは見つからないままに報告会は幕を閉じた。
「まあ、明日からもステリーのことをよろしく。」




