出発
「ここじゃな」
「雰囲気あるな」
一際大きな建元があり、そこには看板で冒険者ギルドと書かれている。
コートルから聞かされていたが、冒険者は純粋に強くなって冒険がしたい人もいれば、仕事が見つかるまでなんとかお金を稼ぐために登録する人もいるとか。様々である。
Sランクの人とかになってくると、魔王討伐の為だったり、人助けをしたいとか、それ相応に強い目的がある事も多いようだ。
「さっきもあったが多分最初は何か言われる可能性が高いが気にするな、そこらの冒険者とお前らでは格が違うんじゃ。馬鹿な事を言ってると思えば良い」
今は有や白もマハサとからの姿になっており、側から見れば咲以外、身長が小さいため、子供の憧れで来たのかと思われても不思議ではない。
なので最初は色々言われるかもと言うことらしい。
荒い冒険者に舐められると絡まれる事も多いらしく、言われたら強気に出ろと言う事らしい。
「じゃあ、開けるぞ」
カランカラン
その音と共に日向達はコートル先頭で冒険者ギルドへとはいっていく。
まあなんとなく想像通りだな
中に入ると、装備をして剣を持っている人や杖を持ってある人らが皆一斉にこちらを向き少し騒がしくなる。
そんな事を無視して皆コートルについていく。
そしてカウンターの前に来たところで、一人の青年が声をかけてくる。
「君たち、冒険者になるのはまだやめたほうがいいと思うよ」
「はぁ、面倒じゃのう……忠告はありがたいが、わし達は全員十五歳を超えているんじゃ、その年齢になると冒険者として活動している人は結構な数いるじゃろ?」
「ははは、嘘はよくないよ、憧れるのは分かるけどね。そこの君、この子達の面倒をちゃんと見てあげないと」
「は? 私はちゃんと面倒みてるけど?」
「はぁ、子供に危ない事をさせるのは面倒見が良いとは言わないからね?」
「いや、あたしちゃんと可愛がってるから!」
こいつなんで俺らの保護者ずらしてんだよ
先ほどから咲が変なノリをしている。そしてコートルは少しムカついているのだろう。深呼吸を何度もしている。
「だったら帰らせるんだ、お金に困ってるなら君だけで良いじゃないか」
「あたしは皆んなを可愛がってるわよ! あなたにわからないでしょ! 一時間は語れるわ!」
「咲、もう良い、信じないならほっとけば良いんじゃ」
「え! 私の愛が勘違いされちゃうよこのままじゃ!」
「……後にしてくれ」
「……はい」
咲は少し不満そうだが頷く。コートルが、再びカウンターに向かおうとすると、青年がまた話しかけてくる。
「本当死んじゃうよ?」
「わかっておるわ」
「そっか、けど最初は僕を頼っても良いからね、そこそこ強いと思うし」
「ああ」
そして少年は元の場所に帰っていく。そして知り合いなのだろう人たちと話し始める。
「はぁ、まあ予想はしていたが面倒じゃのう」
「ああ言ってたくせにコートルさんが一番ムカついてだじゃないですか」
「うるさい」
♢♢
「コートルさん、やっぱ有名なんすね」
「けどわしは騒がれるのは苦手じゃ」
日向達は冒険者登録をし終え、今コートルの家に帰っている。
冒険者ギルドではコートルがSランクと判明してからまあ騒がしかった。そして日向達はレベル的にCランクからと言うことになり、なかなか高いランクからのスタートとなった。
「ああ、だからあんな山奥の家にいるんですね」
「まああそこはどちらかと言うと、広いし特訓し易いからなんじゃが」
「それはそうか」
あそこは少し歩けばドラゴンが余裕で入るほどの広場に出れるので特訓をするにはうってつけである。城の訓練場よりも広いのだ。それに森の中なので魔物も多くレベルも上げ易い。
「よし、次は魔人たちを城に連れて行かんとじゃな」
♢♢
「全員終わったかのう」
「そうですね」
いま日向達は願いの魔人人形で魔人たちを人間に変えているのを見ている。
気持ちが足りない人はマハナタの精神操作でなんとかしている。そして魔王は一旦捕まえる事になった。
重要事項なため、表には出せないので自由にはできないのだ。それに何かの間違えでリオンやルイなどと仲良くなってしまえば、引き離さないといけなくなってしまう。
「日向ちゃーん! 今日はうちも一緒に居れるからね!」
「ちょっ! 分かったから離れろ!」
ヤーナは日向の方に寄って抱きついてくる。今日はヤーナも自由が許されているので、一緒に居たいようだ。
日向としては断るつもりはないが、くっつくのはやめて欲しい。
「えー! 日向ちゃん冷たいよ!」
「いやお前、それ何回も言ってるよな? そろそろ分かれ!」
「照れてるんだよね!」
「違う!」
ヤーナに揶揄われて日向はそっぽを向く。
「お前ら部屋に戻るぞ」
「じゃあヤーナ、行くか」
「うん!」
コートルの言葉で皆集まり、部屋家に歩き出す。
そして、出た所で、日向達はリオンが歩いてくる。
「あれ? リオンなんで居るんじゃ?」
「え、えっと! お父様に頼みたいことがありまして」
リオンは少し緊張しているようで、少し硬い。
「何を頼むんじゃ?」
「私も! 日向ちゃん達について行きたいんです!」
「ほう」
「え? お姉ちゃん、大丈夫なの?」
リオンは王女という立場もある。変な輩に狙われる可能性もなくは無い。それに何より戦いとなると危険だ。これから強い魔物とも戦う事になるはずだ。
「私はもう決めたんですよ! ここまで来て逃げません!」
「どうします? 多分そう簡単に王様の許しは出ないですよ」
娘、それにまだ十歳なのだ。早すぎる。冒険者ギルドでも言っていたが、レベルが低い子供は危ない。
「リオン、王に言う時は、わしが守るから安全面は心配せんで良いと言っておくんじゃ。後はリオンの気持ちが伝われば王も許してくれるはずじゃ」
「は、はい!」
そして、リオンは王様のいる場所まで走っていく。
「お姉ちゃん、頑張って欲しいなあ」
リオンは本気だ、それは魔王戦を見たら分かる。勇気を振り絞って魔王に弓を放ったのだ。
「今のが日向ちゃんのお姉ちゃん?」
「うん、そうだな」
「ふーん」
そして、少しして日向達が集まっていた部屋にリオンが入ってくると、嬉しそうに許可をくれた事を話してくれた。
♢♢
「よし! 皆、もういくぞ! 忘れ物があってももう取りには行けんからな!」
「「「「「はい!」」」」」
「は、はい!」
1週間経ち、日向達はついに今日、ボースにあるユグと言う街に向けて出発する。
リオンは顔を知っている人も少なくない為、フードを被っていく事になった。バレれば騒ぎにもなるし、狙われる可能性もある。最悪バレそうになれば相手から見ればリオンの見た目とは違う認識にすることもできるらしい。
「それじゃあ、少し離れる事にはなりますが、悪いことはしないでくださいよ?」
「うん」
ルイは流石に連れていけないのでお留守番だ。行きたいと言っていたが、流石にまだ五歳の為、許可はされなかった。
「日向! お姉ちゃん! 行ってらっしゃい」
「行ってくるよ」
「行って来ます!」
そして、二人は広い馬車の中に入る。王女が乗るには豪華では無いが、人数が多いので仕方なくこの馬車になったのだ。
「むむむ、日向ちゃん! ルイより私を選んでよ! お願いだから」
「はいはい」
ヤーナはルイとあってからルイにライバルだと思っているようで、ルイにはツンツンしていて大人気げないと思うが、直す気はないようだ。
「よし、それじゃあ出発をしてくれ」
そうコートルが言うと、馬車は動き始める。
「おい! マハナタ! ずっとくっつくのは辞めるのだ!」
「なんでですか! 可愛いですよ?」
「くそぉ」
そしてこの馬車にはマハナタも乗っている。総勢十人でユグに向かうのだ。
着くのは一ヶ月後なので、結構長く元の国を離れる事になる。
日向達は、初めてこの国から出ることになる。マハナタとヤーナ以外は皆、ワクワク、そしてドキドキしながら、馬車で話すのだった。




