羞恥のゲーム
「咲! 早くサイコロを振ってくれ、もう十分だろ」
有が獣人化してもう5分ほど経ったが、咲は離れようとしない。日向達は早く終わりたいため何度も咲に早くしろと言ってるが、有が離れたくないと言っているのもあり、なかなか動かない。
「け、けど、私が離れようとしたら、すごい目で見てくるんだよ!」
それは分からなくはない。有は咲が離れようと動くと、常に訴えるような目で咲を見て弱々しく鳴くのだ。
流石の咲だってもうだいぶ有の写真や動画を撮ったため、もう進めても良いかなと思っている。
「ほら、有ちゃん、もうそろそろ離れよ、ね?」
咲が有に優しく話しかける。だが、
「にゃー……」
有は下を向いてしゅんとする。そして、
「……一緒にいたいにゃん」
有は咲の方を上目遣いで見る。
この目が先ほどから咲を惑わせるのだ。
「うう……けど」
咲は抱きつきたい気持ちを抑え、日向を見る。
そうだ、ここは親友である俺が有を止めてやるべきだ。ついでに咲に借りも作れるし。
決意を固め、俺は有に近づく。
「有、良いのか、戻ってこいよ! あ、離れないならクラスのみんなに流しちゃおっかなー」
すまん、もう脅すのが一番早いと思うし、やるしかないんだ。
「うう……いやっ、でも……」
有も相当悩むが、近くで感じる咲の匂いが有を悩ます。
くそ、またダメか、だがあと一押しだ。あれを言うしかないか。
「えーと……ふう……あー、い、言うこと聞いてくれないなら、ゆ、有のこと、嫌、嫌いになっちゃうかもなぁー」
メチャクチャにわざとらしく日向は言う。
日向だってこんなこと言いたくない、日向が有を嫌いになることなんてない。喧嘩した時に勢いで言うことは何度かあったが、落ち着くとかえって自分が辛くなっていた。
「嘘にゃ、それにさっきのも嘘にゃ」
流石に日向が分かりやすすぎるのでいくら今の状況でもこれくらいは分かってしまう。それに先ほどの脅しもバレてしまう。
「じゃあ俺と咲どっちが良いんだよ!」
日向だって有に咲咲言われて嫉妬していたのだ。我慢ならずに、日向は有に聞く。
「にゃ!? え、そりゃ、あーでも!」
「え、」
そこ迷うの? 俺たち親友なのに? 冗談だよな?
日向は咲と迷われたことで衝撃が走る。有が精神操作を食らっていると言うことも忘れてしまっている。
「有! 有! 嘘だよな? なあ!」
日向は咲の膝の上で転んでいる有の背中を揺らす。
「ちょっ、今はしょうがないにゃ! っ、揺らすにゃ!」
一応、精神操作されている認識はあるので、しょうがないと有は日向に主張するが、
「……と、とりあえず咲から離れてよ!」
理由は理解した、だが嫉妬はする。普段の日向なら耐えれるのだが、今は先ほどの有の言葉で頭が正常に動いていないので必死になって離れろと訴える。
「い、嫌、けど、日向だって咲さっき抱きついてたにゃ!」
「うう」
痛いとこを突かれてしまう。日向は今の有と同じようなことをしていたため、自分だけ有に文句を言うのは自分勝手だ。そう日向は分かっているが、やっぱりいて欲しいのだ。だが何も言い返せない。
「ちょっと、何するにゃ」
なので日向は黙って有に抱きつくことにする。
「日向くん時々そう言う行動するの反則でしょ」
前、日向のメンタルがやられた時もそうだったが、日向が時々見せる有に対する接し方に、咲は興奮して、顔を赤くする。
「ご主人、俺も見てくれにゃ」
少し悲しそうにしながら有が先を見る。
咲が日向を見出して、有も嫉妬しているのだ。この三人は今三角関係になっている。
「大丈夫だから、ちゃんと有ちゃんも可愛いよ、ぐふふ」
咲は興奮で涎を垂らし、変な笑い声を上げる。可愛いに挟まれたら咲はこうなってしまうのだ。
「お、おい! 咲」
「あのね、有ちゃん」
早く進めたい白が咲に早くしろと言おうとした時、咲は何かを決心した顔をし、よだれを拭き口を開く。
「にゃ、にゃに?」
ちょっと怖いにゃ、
急に真面目な顔になった咲に有は少し戸惑いながら反応する。
「流石に進めないとだからさ、ふぅ…………そろそろ離れてくれないと、嫌いになっちゃうよ?」
そうゆうに笑いかける。だが誰が見てもこの顔は笑っているようには見えない。
日向が言った時とは圧が違う、とても嘘だとは思えない。
「にゃ……ごめんなさいにゃ……離れるから、怒らないでにゃ……日向ちょっと離れるにゃ!」
咲の顔に有は恐怖を覚える。実際は演技なのだが、それを感じさせないほど怖い。有は日向に掴まれたまま、咲から離れお座りをする。
「よし! いい子ね、私がサイコロを振るまで動かないでね?」
更に笑顔で有に支持をする。
「はいにゃ!」
そして、咲はサイコロの方に行く。
「ごめんね! ちょっと遅れちゃって、じゃあいくよ!」
咲は謝り、サイコロを振る。
サイコロの出目は1を出している。
「1かぁ、あんまり進んでないなぁ」
咲は少し残念な顔をする。少ない数字だとその分受けるイベントも増えてしまうからだ。
そして有の時と同じく、大きな駒が動き出し、一ます進むと止まり、文字が浮き出る。
――――
最初が一マスはちょっとかわいそう! サービスで八マス進む!
対象 咲
――――
「え、やば、一気に進んじゃった。ラッキー」
まさかの1が大当たり、しかも罰が何もなく、咲は喜ぶ。
「まじか、1が当たりかよ、一こい、一こい」
「ほら、有ちゃんもういいよ!」
白が一を祈っている間に、咲は有の方に帰っていく。
「もういいにゃ?」
この数十秒でも、有は咲に飛びつきたい欲を抑るのがキツかったので、今すぐ抱きつきたい。それほどまでに精神操作が強い。
「うん、いいよ」
「にゃ! ……て日向離れてにゃ」
咲がそう言うと、有は先に飛びつこうとするが、抱きついている日向に阻まれる。
「…………」
だが有がそう言っても日向は何も反応しない。
「お前! 今恥ずかしくなってんじゃねえにゃ!」
有は日向が正気に戻り、恥ずかしくなって動かなくなったことが分かる。
「ちが、違くて、さっきのは、ほんとに違うから」
日向は先ほどの自分の行動が頭から離れていないのだ。
なんで俺はあんなことしたんだよ! 冷静になれよ日向! あーもう恥ずかしい!
「もうそれ結構前だから! 終わってるから! 早く離れろにゃ!」
そう言うと有は無理やり日向から抜け出し咲の方に行く。
そして、残された日向仰向けになり、
「帰りたい」
真っ赤になった顔で一人そう呟く。




