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優しい魔人

「ここ一週間実戦ばっかだな。」


 最初の実戦から一週間が経った時、日向はそんな愚痴を漏らす。


 そのおかげでレベルは20にはなったが、そう言うことではない。


「まあいいじゃん、強くなるには一番手っ取り早いんだし」


「分かってるよ」


 日向が実戦を嫌がるのは強くなりたくないわけじゃない。咲と美咲が戦闘時以外常にくっついてくるのだ。

 今や完全に妹扱いされている。


 一応俺男なんだけどなぁ。



 ♢♢



「ほーらよしよし」


「か……可愛い」


「もう……離して……お願い」


 俺はもう逃げるのは諦めた、頼むことだけしかしない。どうせ離してくれないのだ。


「だーめ♡」


 だが、咲は笑顔で拒否する。もう日向は精神的にキツかった。恥ずかしいのだ。


「う……うっ……ひっく」


 急に涙が溢れてくる。今まで我慢していたのだう。耐えていた分大量に出てくる。


「あれ……泣いちゃった!?」


「も……もう離して……ひっく」


「ごめんねー……ちょっとやりすぎちゃった」


 咲はやっと名残惜しそうに、申し訳なさそうに離してくれる。


 やっと解放された日向は、有たちの方に行く。


「泣くなって、かっこ悪いぞー」


「クラスの女子に妹扱いされるんだぞ! ……ひっぐ……恥ずかしくて死ぬわ!!」


「どんまい」


「死ね」



 ♢♢



「はあああ!」


 日向は風を纏わせた攻撃でゴブリンを倒す。


「ふう」


 ひとしきり倒すと、一息つく


「もう少し奥に行ってみるか」


「そうだな」


 有の提案に日向は頷く。

 時間も余裕があるし、ここら辺の敵じゃもう余裕で倒してしまえるため、日向たちはさらに奥に進むことにした。


「それにしても有の超身体強化、強すぎだろ! オークにだって力で余裕で勝てるんだろ? ……イケメンだし」


 日向は有の凄さに驚く。


「最後のいらなくない?」


「一番大事だが!?」



 ♢♢



 森の奥に行くと、段々モンスターが強くなる。


「有! いけるか?」


「大丈夫! そっちは大丈夫か?」


 日向たちは、連携をとり敵を倒していく。


「よし、これで倒し終えたな」


「ねえねえあっちに家があるよ?」


 全部倒し終えた時に、咲が家を見つけたらしい。


「家? なんでこんなところに?」


 白が意味わからん、と言った顔で言う。

 ここら辺は強いモンスターが多くいる、とてもすめるような場所ではないのだ。


「ねえねえ! 入ってみない?」


 咲がそんなことを言い出す。


「なんでだよ、こんなとこにある家絶対怪しって」


「なんでよ、もしかしたら困ってるかもじゃん、ほら!そこの畑も荒らされてるし。」


 咲の話に言葉が詰まる。


「まあそうかもだけど」


 その後、少し話し合いをしてから日向達は、家の主を見てみることにした。


「あのー……すいません」


 話し合いの結果一番硬い有を先頭に行くことを決め、家に誰かいるか確認することにする。


「もっと声出せって」


「いいだろ別に!」


 と、その時、ギィーと家のドアが開く。


 そこがら出てきた人物を見て俺たちは目を見開く。


 ドアから出てきたのは、見た目は人間のようだが、頭からツノが生えている。


「な! ……魔人!?」


 日向達は即座に、戦闘態勢を取る。

 魔人とは人類の恐怖の対象なのだ。魔王だって魔人である。


 各々剣を構えたり杖を構えたりした為か、魔人が、ビビって尻もちをつく。


「うわぁ!……ごめんなさい……僕たちは無害です、お願いします、見逃してください!」


「そんなこと信じろと言うのか?」


 有の言い分は正しい、魔人は凶暴で強い、そして殆どが魔王軍である可能性が高い。


 有が剣を抜き走り始める。


「待って、その人たちは嘘をついてないよ!」


 その時、いつも静かな美咲が叫ぶ。


「どう言うことだ?」


 急にそう言われても、どう言う意味かわからない、魔人とは人を、生物を殺す生き物なのだ。


「私ね、人が嘘ついてるかついてないかが分かるの! ……真実の目っていうスキルを持ってるから」


「それは……本当か?」


 この場にいる全員がびっくりする。全員美咲がこのスキルを持っていたのを知らなかったようだ。


「なんで教えてくれなかったんだい?」


「えっと……このスキルのことを言ったら嘘がわかっちゃうから避けられちゃうかもと思って。」


 美咲が泣きそうになりながら言う。美咲も悩んだ上で秘密にしていたようだ。


「僕たちは、そんなんじゃ避けないよ」


「本当に?」


 美咲は心配そうな顔をする。


「あの? ……大丈夫ですか?」


 完全に置いてけぼりな魔人が気まずそうに喋り出す。


 それに気づき、有が質問を投げかける。


「本当に悪意は無いんですね?」


「はい、僕たちは魔王軍にも属してないし、人を殺したこともありません!」


 皆が美咲に視線を向けると、美咲は首を縦に振る。


「本当みたいですね……でもなんで人間に危害を加えないんですか? 魔人は本能的に人間を襲うと聞いたんですけど」


「魔人は時々凶暴じゃ無い平穏な個体が生まれることがあるんです。僕たちはその末裔です。魔王軍に見つかったらたら排除される可能性がありますし。人間の街に近いところに家を建てたんです」


「なるほど」


 有は納得したようだ。


 その時、一人の小さな可愛らしい魔人がドアから顔を覗かせる。


「きゃー可愛い!」


 咲の可愛いセンサーに引っかかった魔人の男の子は、咲に頭を撫でられて嬉しそうにしている。


「その子はルイです可愛いでしょー」


 ルイが嬉しそうな顔をしているのを見て、父なのだろう魔人は甘い顔をしている。


 日向がこのお父さんは、息子に甘そうだなとか思っていると。


 ルイが自分の方に近づいてきて、顔を真っ赤にして、抱きついてくる。


「好き」


「は?」


 ルイの唐突な告白に日向の頭は真っ白になった。

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