妹中は変えられない
日向は中庭で、リオンと遊んでいた。
「日向ちゃん! こっちですよ」
「ま、待ってよお姉ちゃん」
今はリオンと駆けっこをしている。
ちなみに口調に関しては考えない事にした。どの道しないといけないのだ。余計な感情は要らないのだ。
「はあ……はあ……そろそろ休みませんか?」
「そうたね」
リオンは疲れたのか休もうと言い出した。
日向はまだ余裕だが、リオンに合わせる事にする。
「ふう、じゃあオセロをやりましょう。」
「えー」
日向は昨日の連敗を見たのでやりたくない。九割同じ色で染まるのだ。楽しくない。
「けど日向ちゃん、他に遊ぶものなんて……」
「……手加減してよ」
日向はそう言うと、オセロを並べ始める。
「いいんですか?」
「今度は負けないから! ……けど手加減はしてね」
「はい!!」
♢♢
「あのさ……お姉ちゃん?……手加減してる? これ」
日向は昨日と変わらずボロボロに負けていた。
「してますよ?」
そうリオンは言っているが例えしていたとしても10割を八割にしたようなものなのだろう。だが日向のような格下では3割くらいじゃないといい勝負にはならない。
盤面はどう考えても昨日と同じだった。
「あ、あれ?」
日向は涙を流し始める。
日向はどんだけ負けてもこんな事で泣くことはなかったはずだ。だが、精神年齢が幼くなったのか、何故か今は悔しくて泣いている。
「日向ちゃん、ごめんなさい、ちょっとやりすぎちゃいました」
リオンも日向の涙に少し焦り、謝りながら頭を撫でてくれる。
「ほら、日向ちゃん、私の部屋に戻りましょう」
そして日向が手に引かれ、リオンの部屋に戻ろうとした時、ドアの前から誰かが飛び出して来る。
「日向ちゃん!!」
「な! 咲!?」
その正体は咲で、テンション高めに日向の名前を呼んで出て来る。
え? 待って、今の見られてた?
「ちょっ、咲、ひっく、これは、ひっく、ちがくて、えっと、俺」
日向は泣きながら恥ずかしさに悶えているとリオンがこちらを向く。
「日向ちゃん、口調変わってるよ!」
「え! えと……ご、ごめん、お姉ちゃん」
「あの、この方は誰でしょうか日向ちゃん」
「……私の友達だよ」
「私は、咲よろしくね!」
「リオンと言います、よろしくお願いします」
軽く自己紹介を終えると、咲がテンション高めに、喋り出す。
「リオンちゃん可愛いーー!!」
いきなり咲はリオンに抱きつく。
咲は初対面でもこの対応である。日向は咲の行動にちょっとひく。
「リオンちゃんは日向ちゃんのお姉ちゃんなの?」
咲はいつもは日向くんと呼んでいるのに、今はちゃん付けで呼んでいる。
「はい! 日向ちゃんは可愛い妹です」
リオンは自慢げに言う。
「日向ちゃん可愛くなったね」
日向は今口調を変える訳にはいかない、恥ずかしいが、日向は振り切る事にする。
「そうでしょ!」
後で恥ずかしさに悶えそうだが、リオンを悲しませるのは嫌なので仕方がない。
「私は、お姉ちゃんと用事があるから、それじゃあまたね、咲」
そうして早めに去ろうとするが、リオンは動かず、咲に話しかける。
「咲さんも、一緒に来ます?」
「お姉ちゃん!?」
良い訳がない、咲にこの妹モードを見られ続けるのは流石に耐えられそうにない。
「いってもいいの?」
「はい、オセロだと私が買っちゃうので、三人以上でやれるゲームでもしましょう!」
「じゃあもう一人呼んできてもいい? 美咲って言うんだけど」
「はい、いいですよ」
終わった……
♢♢
「ひっぐ……有……咲が……咲があ」
日向は咲と美咲の前で妹モードになって遊んでいた。
遊ぶのが終わるまでなんとか耐えたが、一人になって思い返してみると日向は耐えられなくなり有に泣きついた。
「どうした? またなんかされたのか」
「ひっく……妹の時の口調のまま、ひっく……咲と美咲と遊んだんだよ!」
「頑張ったな、日向」
そして日向はあと10分ほど泣き続けた。




