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『どういう事……ですか?』
イスミルの問いに、アイナ博士は自身の胸を指指した。
「イオス。君自身、不思議に思った事は無いのかい? 何故、ドラグーンのオペレーティングシステムでしかない君に、人間の……まるで少女のような人格が宿っているのかを、だ」
『それは……契約時のマスターの希望で、リミルと繋がったから……では無いのですか?』
「うむ。確かに、それもキーの一つだ。……私はね、イオス。ヨウコをもう一度タツヤに逢わせてやりたくて、ヨウコの人格をデータ化し、君の基礎システムに封入したのさ。タツヤと契約し、リミルと繋がる事で開放されたデータは、イオスのシステムと結びつき……そして、君という人格が生まれた」
『……そうだったんですか』
「ああ、だから君がタツヤを慕う気持ちもわかる。かつてタツヤを愛したヨウコのコピー人格なのだからな」
『っ! それは違いますっ!』
アイナ博士の言葉に、イスミルは強く反発する。
『生まれがどうであれ、我は我です。マスターを想うこの気持ちは、コピーなんかじゃありません! 我とマスター、二人の歩みの中で芽生えたものです!』
『そうですよ!』
イスミルの言葉に、マシロも同調する。
『それにおかしいじゃないですか! イオス姉さんが造られた人格だと言うなら、私はどうなるんですか? そのヨウコさんという人のデータが入っていない私にだって、ちゃんと自分の意思があります。お兄ちゃんが大好きです!』
確かにそうだ。マシロだって出逢った時から人格があった。
だが、アイナ博士はこちらをジッと見た後、首を振った。
「君……マシロと呼ばれていたね。マシロの場合は、また少し事情が違うのだよ。時空間移動のショックで記憶を失った少女の意識が、コスモ・ドラグーンと契約する事で、ドラグーンと混ざり合った結果が今の君だ。そして、私自身も驚いたのだが……その少女は私の娘、ヨウコだ。崩落事故で死んだはずの実子の方のね」
『マシロが……博士の娘?』
「そうだ。タツヤが私達の時代に来た事と同じく、おそらくはこちらもナイアルラトホテップの仕業だろう。つまり、ヨウコの人格データからイオスが、ヨウコとタツヤの遺伝子情報からリミルが、そして実子であるヨウコからマシロが、それぞれ生まれ、今この場に集まった事になる。狙いは不明だが、奴は全てを私達……いや、タツヤ。君を中心に動かしている。……以上が今の私が知りうる全てだ」
『そ、そんな事が……』
にわかには信じがたい話だった……が、筋は通っている。そして、何よりアイナ博士の真っ直ぐこちらを見る目は、嘘吐きの目ではなかった。
「イオス、リミル、マシロ……そして何よりタツヤ。ナイアルラトホテップに支配された私には、もう出来る事は無いだろう。だからこそ、頼む。あの子が生きた証である人々を、その皆が暮らすこの星を、どうか守ってほしい。ナイアルラトホテップの邪悪な思惑を叩き潰してほしいのだ」
『……わかりました。俺が、俺達が皆を守ります』
俺の言葉に、アイナ博士が微笑む。
しかし、その顔がみるみる歪んでいく。瞳は再び真紅に染まった。
「ははん、どうだい? なかなか面白い話だったろう?」
『……ナイアルラトホテップッ!』
「おお、怖いねぇ。だけどね、君の相手は私じゃあない。覚えているかな? Cは封印されたって話。じゃあ、一体何処に封印されたと思う?」
ナイアルラトホテップが嬉しそうに人差し指を振ると、両手をパンッと打ち鳴らす。
その瞬間、大地が大きく震えだした。
「君は黒龍と白龍の伝説は知っているかい? 二体の龍は、ここルーディア山で争い眠りについたという伝説だ。でも、今の君達なら思うはずだ……二体が争う理由は無い、と。では、一体何と戦ったのか。答えは、これだ」
地響きはなお酷くなる。遂にはルーディア山の山肌に、巨大な亀裂がいくつもいくつも走り、ボロボロと崩れだした。
『マスター、あれをっ!』
ルーディア山が大きく崩れる。その中に巨大な……ドラグーン程もある大きさの結晶が埋もれていた。
「Cの首魁、その核さ。もちろん邪魔な封印は解除してある」
空中でナイアルラトホテップがクルクルと回る。
「これだけの核だ。その復活には、相当量の魔素が必要になるけれど……この地には今、かつて無い程の量の魔素が渦巻いている。何故かって? 真化したディマイズと、ドラグーン二体が合体した君達。神と呼べる程の力を有する魔装甲冑同士が激しく戦いぶつかったからさ!」
『くっ! Cの復活……それがお前の計画だったのか!?』
「ふふん、そうかどうか、自分で確かめてみるといい。さあ、大いなるCの復活だっ!!」
ナイアルラトホテップが両手を天に向ける。結晶が一層大きく震え、強く輝きだした。




