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邪龍神機 イオス・ドラグーン  作者: 九頭龍
最終章 君と刻む永劫/Nを継ぐ者
88/95

6-3


『な、何だっ?』


 震動は止まり、輝きはそのままに結晶から青緑色の粘液が溢れ出した。

 粘液は、まるで透明な壁でもあるように、流れださず結晶の周囲に溜まっていく。


『そうか……マズイッ! あれがCの肉になるのかっ!』


「ふふふん、御名答。さて、それでは私は、文字通り高見の見物と洒落込ませてもらうよ」


 ナイアルラトホテップが、腕組みしたまま下半身から消えていく。


「頑張りたまえよ、タツヤ。君達がここで敗れれば、この星は全てクトゥルフの餌だ」


 いやらしくニヤつく顔を最後まで残し、それだけ言うと、ナイアルラトホテップは高笑いしながら完全に消えた。


「……どうしますか? マスター。今なら奴はまだ動けないようですよ」


「ああ、今のうちに攻めよう。だけど、その前に一つやる事がある」


 イスミルの言葉に頷きながら、背の四枚の翼を大きく広げる。

 何かの力場だろうか? 羽ばたく事なくフワリと浮かんだ俺は、低空を猛スピードで飛翔した。


「見えたっ」


 目指した場所はすぐにわかった。既に鱗甲冑も殆ど撃破され、ミンバ軍はまだ多数が無事のようだ。


『タツヤ、無事だったか! ドラグーンのその姿は……いや、それより一体何があったんだ?』


 降り立つ俺に虎楼閣が駆け寄り、矢継ぎ早に疑問を投げかける。

 突然の地震で山が崩れ、山の中には巨大な結晶が出現したんだ……ゴルディや皆が慌てるのもわかる。だが……。


『すまない、ゴルディ。詳しく話す時間が無いから、良く聞いてくれ。ルーディア山で太古の化け物が復活した。ここは俺達が何とかするから、ゴルディ達はなるべく早くルーディア山を離れて、ミンバへ向かってくれ』


『……わかった。だが、一つだけ尋ねる。そいつはタツヤ達ならどうにか出来そうな相手なのか?』


『正直……わからないな。だけど、俺達じゃなければ、どうにもならないって事だけはわかる』


『そうか……だが死ぬなよ、お前達が死ぬとシルフィが哀しむ』


『ああ、踊る羊亭でまた、な』


 虎楼閣と手を握りあい、視線を交わす。

 しかし、それも一瞬だった。俺は再び空中に浮くと、C目掛けて飛び出す。

 背後では、全軍撤退の号令を叫ぶゴルディの声が響いていた。

 

『しかし……改めて見てもデカイな……』


 ナイアルラトホテップがクトゥルフと呼んでいた存在は、泡立つ粘液によって、既にその全身を構築しつつあった。

 胎児のように丸まってはいるが、それでも大きさはドラグーンの数十倍はあるだろう。

 その姿は鱗に覆われた胴に、鉤爪の生えた四肢を有し、背にはイオス・ドラグーンのような皮膜翼を持つ、どこか龍にも似た印象を受ける。だが、特に異質なのはその頭部だ。

 例えるなら、無数の触腕を持つタコをそのまま首に乗せたような……何ともおぞましい形状をしている。その頭部にある瞳は閉じたままで、まるで眠っているようだ。


「マスター、いつでもいけます!」


「お兄ちゃん、こっちも大丈夫ですよっ!」


『わかった、いくぞっ!』


 イスミルとマシロの声に応え、ドラグーンの胸部装甲を左右に開く。

 内部では黒と白の結晶が左右に並び、それぞれを通して超エネルギーが召喚される。


『ハイパァーノヴァ……トルネェェェッッッド!!!』


 解き放たれたハイパーノヴァが、黒と白の渦となってクトゥルフへ迫る。

 このままいけば、奴は跡形も無く消滅するはずだ。

 しかし、ハイパーノヴァが届く寸前、クトゥルフの目が大きく開いた。


「sysysysysya〜sy!」


 およそ言語とは呼べない、重く舌を擦るような耳障りな声がクトゥルフから響く。その声によって生じたのだろうか、クトゥルフの目の前に暗い穴が広がり、ハイパーノヴァを飲み込んでいった。


「あれは吸収……いえ、ハイパーノヴァのシステムに干渉して、送還を前倒しで発動されました!」


 イスミルの言う通り、奴の体には傷一つ付いていない。


『今はまだ、ハイパーノヴァはダメか……ならっ!』


 飛行しクトゥルフに接近する。それに気付いたのか、クトゥルフがこちらに左腕を向けた。


「tysysyds!」


 胴体同様、巨大な腕から無数の触手が俺に向かって伸びる。


『くっ! 餓龍剣っ! はぁぁぁっ!』


 餓龍剣を抜き、迫る触手をまとめて切り落とす。

 そのまま左手に餓龍剣を持ち換えると、右腕を空に掲げた。


『来いっ! ニュートロン・ハンマー!!』


 時空間を超え宇宙の彼方から、瞬時に召喚される巨大かつ超超重量の中性子星核。

 以前は両腕でも振り下ろす事が精一杯だったそれを、俺は右腕一本で軽々と振り回す。


『これだけ近ければ、狙って的確に送還するのは無理だろう! クトゥルフッ!!』


 細かく角度を変え飛行しながら接近し、振り回し速度を増したニュートロン・ハンマーを、俺はクトゥルフの頭部に振り下ろした。

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