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邪龍神機 イオス・ドラグーン  作者: 九頭龍
第五章 ブエラリカを覆う影/終焉の龍神機現る
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5-12


 その報せは、ミンバ軍が帝都を発ったという連絡から四日後、俺達の思いもよらない形で訪れた。

 昼下がり、イオスとの食後の訓練を終えしばらく後、突然ズシンと大きく地面が揺れ、俺達は地震か何かかと慌てて外へ出た。

 振動の原因はすぐにわかった。俺達の目の前、リズさん宅の広い庭、その中央に身体を数本の巨大な槍で刺されたタービュレンスが、伏せるように倒れていた。


「タ、タツヤさん! 大変です!!」


「ああ! 大丈夫か、タービュレンス!! シルフィは無事なのか?」


 倒れたタービュレンスに声をかけながら駆け寄ると、タービュレンスが俺を見て短く鳴く。

 そのままフラフラと上体を持ち上げると胸部装甲が開き、中からシルフィが現れた。


「あっ! タツヤ兄、大変なんだ!! 突然見た事無い魔装甲冑が出て、そいつに皆が……父様やゴルディ兄が!」


「待て、先ずは落ち着くんだ、シルフィ!」


 両手を振り慌てて喋るシルフィ。

 俺はその肩に手を置き、目を見ながら諭すように話す。

 シルフィもコクンと頷き、深呼吸した。


「それで……その魔装甲冑の集団に王様達が襲われたのか?」


「そうなんだ! 帝都を出て、ルーディア山を過ぎた時に、いきなりあちこちから現れて、急に襲ってきたんだっ! もちろん、僕達も応戦したんだけど、奴等凄く強くて……それで僕、急いでタツヤ兄を呼んでくるように、ゴルディ兄に言われたんだ。タービュレンスだけなら、ここまで走って来るのも簡単だって!」


「そうか……ルーディア山だな? わかった。よく頑張ったな、シルフィ。俺達は今から、すぐに皆を助けに向かうから、シルフィはリズさんにもう一度今の話を伝えてくれ。リズさんなら怪我したタービュレンスを含めて、全部良いようにしてくれるはずだ」


 安心するように笑顔でシルフィの頭をクシャクシャ撫でる。シルフィは再びコクンと頷いた。


「よし……イオス、リミル、マシロ、聞いた通りだ。襲ってきたのが帝国じゃないとすれば、まず間違いなく混沌卿の一派が相手だ! 皆、気を引き締めて行くぞっ!!」


「はい、マスター!」


「任せてっ、お兄ちゃん!」


 話を聞き既にイスミルへと融合した二人とマシロが、俺の声に応え、それぞれの胸元に手を伸ばす。

 結晶から溢れ出す黒と白、二色の閃光。その中から現れた二頭の龍は、背の翼を伸ばすとフワリと大空へ舞い上がった。


「タツヤ兄ぃーっ! 奴等をやっつけて皆を助けてねーっ!!」


 空に向けて叫ぶシルフィの大声に頷くと、黒龍となった俺は東の霊峰ルーディア目指し、全速力で飛行を開始した。



「ちっ!」


 虎楼閣の中でゴルディが小さく舌打する。

 帝都からの帰路の途中、突然の襲撃だった。

 事前にヤルバ爺を介してタツヤ達から術式で、ブエラリカに現れた新たな脅威である混沌卿の存在を聞いていて、行軍の間も通常以上に警戒していなければ、おそらくとうの昔に全滅していただろう。それだけでも不幸中の幸いだった。


「と言ってもなぁ……はぁっ!」


 虎楼閣が手にした長剣で、相手の槍による攻撃を弾く。そのまま別の腕で構えていた槍で突くがヒラリと躱されてしまった。


「くっ、素早いっ!!」


 敵の魔装甲冑は、全身を金属製の鎧ではなく、鱗を想わせる甲殻で覆っている。さながら鱗甲冑といった姿だが、それは通常の魔装甲冑よりもタツヤ達のドラグーンに似ていた。

 敵の、鱗甲冑の数そのものはそれほど多くは無い。この場に居た味方の魔装甲冑とほぼ同数程度だろう。

 しかし、個々の性能は、こちらの魔装甲冑や、先の戦で現れた白い魔装甲冑よりも確実に数段高い。

 一体、また一体と友軍の機体が倒れていく度に戦況は逼迫していった。


『ははは! どうした、息子よ? もうへばったのか!』


 虎楼閣を狙い槍を構えた鱗甲冑を横から蹴り飛ばし、虎鉄丸が現れる。中からゴルディの父親、ブライアン王の声が響いた。


『せっかく、良い機会だからと虎楼閣を譲ってやったのに不甲斐ない。やはり若造には、まだ早かったか? 虎鉄丸はこちらに戻ってこれて、こんなに生き生きしているというのにな!』


 笑う父親の声に、ゴルディもまた笑い返す。


『ふんっ、自分の老いに気付かずノコノコ出てきて……年寄りの冷や水だな、親父! 無理せず、後ろに下がっていた方が良いんじゃ無いか?』


『ははは、抜かせっ! まだまだ、お前達ひよっ子には負けんぞっ!』


 互いに言い合いながらも、ゴルディとブライアン王は見事なコンビネーションを見せ共闘する。その中で鱗甲冑も斬り捨てられていく。

 だが、それでも戦場全体の流れは変わらなかった。

 敗色が濃厚となっていく中、ゴルディ達にまだ望みがあるとすれば、それは送り出したシルフィがタツヤ達を連れて来る事だ。

 風の力を上乗せしたタービュレンスの疾走……あのスピードならば、ブエラリカまでそう時間はかからないはずだ。


(頼むぜ、シルフィ、タツヤ……こっちはそれまで何とか保たせるからなっ!)


 ゴルディの想いに応えるように、虎楼閣下肢の虎が大きく吠えた。

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