第2編:契約
[ナレーター]
タスキはゆっくりと息を吐き、そして吸い始めた。
[タスキ]
ここは……どこだ?
[ナレーター]
タスキは地面に倒れたまま、目を開けることができなかった。彼は完全にショック状態だった。
突然、彼は膝を胸に押しつけ、指で脚をつかんで、胎児のように体を丸めた。そして彼は、深い痛みのこもった小さな声でつぶやきながら泣き始めた。
[タスキ]
母さん……父さん……妹……リア……
[ナレーター]
突然、闇のすべてが光へと変わり始めた。
タスキは泣き続けていて、涙が彼の頬を伝っていた。彼は少しずつ目を開けた。とても強い光が見えたので、彼は顔の前に手をかざして目をかばった。
数メートル先に、彼は一人の女性のシルエットが立っているのを見た。
彼女の周りの光があまりにも強く、タスキにはその顔が分からなかった。
タスキはまだ涙を浮かべたまま、ひざまずいて彼女を見つめていた。
少しずつ、彼の目が光に慣れていった。
彼の前には、緑の草が広がる場所と、大きな木があった。
その木のそばで、その女性は美しい笑顔で彼を見つめていた。
リアだった。
タスキは言葉を失った。
リアは近づいてきて、何も言わずにタスキの両手を取った。
彼女の姿を見て、タスキはまた泣き出した。彼はこらえきれず、彼女のほうへ崩れ落ちた。
リアも彼を抱きしめながら、ひざをついた。
彼女はただ、自分の腕の中で泣くタスキの髪をなでていた。
タスキは何か言おうとしたが、何も言葉にならなかった。
[タスキ]
あ……あ……あ……
[リア]
しーっ……言いたいことは、分かってるよ。
[ナレーター]
リアは両手でタスキの頭を包み、微笑みながら彼の目をまっすぐ見つめた。
それから、彼女は彼が立ち上がるのを手伝った。
[リア]
もうあまり時間がないのは分かってる。でも、天国で待ってるからね。私の大切なタスキ。
[タスキ]
リア、だめだ! 嫌だ、頼む! 行かないでくれ!
[ナレーター]
リアは微笑んだ。一粒の涙が、彼女の頬を伝った。
[リア]
私だって、行きたくないよ。
ひとつだけ約束して。絶対に諦めないって。
誰も話を聞いてくれないって感じたときや、どうしたらいいか分からなくなったときは、星を見て。そこから、私が見守ってるから。
愛してるよ、タスキ。絶対に忘れないで。
[ナレーター]
リアはタスキの手を取り、ゆっくりと彼に近づいた。
そして、彼女は彼にキスをした。
タスキは泣き出し、リアを抱きしめながらキスを返した。
リアも泣きながら、彼にキスをしていた。
しかし、何かが起こり始めた。
リアの体が、少しずつ消え始めたのだ。
[ナレーター]
タスキは、彼女が消えてしまわないように、どんどん強く抱きしめた。
だが、彼には何もできなかった。
リアはゆっくりと薄れていき、やがて完全に消えてしまった。
タスキの腕の中には、何も残っていなかった。
彼はひざから崩れ落ち、力の限り叫んだ。
[タスキ]
ああああああああああっ!
[ナレーター]
すべてが、再び闇に変わった。
しかし、その闇の中に、小さな光が現れた。
少しずつ、その光は大きくなっていった。
そこには一人の女性が座っていて、のんびりとお茶を飲んでいた。
彼女はかなり派手なドレスを着ていて、髪は深紅色だった。
タスキは戸惑いながら彼女を見つめ、叫んだ。
[タスキ]
お前! 誰だ!?
[???]
私の名前? ああ! 私の名前はラヴェリス。あなたにとっては、魔女ラヴェリスよ。
あらあら……そんなに怖がっちゃって、なんて可愛いのかしら。
[タスキ]
俺の家族はどこだ? なんで俺は、家族と一緒じゃないんだ?
[ナレーター]
ラヴェリスは、質問の意味が分からないかのように、きょとんとした顔をした。
それから彼女は、お茶を飲み続けながら、よそを向いた。
[ラヴェリス]
おっと……残念だけど、その質問には答えられないわね。
[ナレーター]
タスキは勢いよく立ち上がった。
彼は絶望に満ちた表情で、彼女のほうへ歩き出した。彼は今にも理性を失いそうに見えた。
ラヴェリスは、近づいてくる彼を見て微笑んだ。
[ラヴェリス]
抱きしめに来てくれたの?
あらあら、可愛いわね。
きっと、たっぷり愛をくれるつもりなんでしょう?
なにせ……私、かなりの美人だもの。
[ナレーター]
タスキは素早く近づき、ラヴェリスの首をつかんだ。
[ラヴェリス]
ちょっと! 展開が早すぎるんじゃない?
[ナレーター]
タスキは彼女の顔めがけて拳を放ったが、彼女は消えた。
一秒後、彼女は相変わらずのんびりとお茶を飲みながら、彼の背後に現れた。
[ラヴェリス]
遅すぎるわ……
[ナレーター]
タスキは迷わなかった。彼は全速力で彼女に飛びかかり、前に向かって何発も拳を繰り出した。
しかしラヴェリスは、何事もないかのようにお茶を飲み続けながら、そのすべてをかわしていた。
[ラヴェリス]
さて……そろそろお遊びはおしまいね。
[ナレーター]
魔女はタスキの背後に現れ、彼の頭を殴った。
すべてが、真っ暗になった。
一分ほどが過ぎた。
タスキは意識を取り戻し始めた。目を開けたとき、彼はほとんど体を動かせないことに気づいた。
彼が自分の手を見ると、両手首に鎖がついていた。
彼が顔を上げると、向かいに座って、のんびりとお茶を飲むラヴェリスの姿があった。
[タスキ]
離せ! このクソ女! クソ女が!
[ナレーター]
タスキは鎖から抜け出そうと、力いっぱいもがき始めた。だが、彼にはどうすることもできなかった。
[ラヴェリス]
ねえ、それより話をしない? 乱暴なのはやめにしましょう?
[タスキ]
お前と話すことなんて何もない!
[ラヴェリス]
あら、そう? じゃあ、私があなたの家族を救えるって言ったら?
[タスキ]
お前に俺の家族の何が分かる!
俺の家族は死んだんだ!
[ラヴェリス]
うふふ……家族を取り戻す方法なら、知ってるわよ。
話をする気になった?
[ナレーター]
ラヴェリスが片手を動かすと、タスキを縛っていた鎖が消えた。
タスキは、少しずつ落ち着いていった。
それから彼はもう一つの椅子まで歩いていき、話をするために彼女の向かいに座った。
[ラヴェリス]
いい子ね。
さて、あなたはきっと、私に家族を取り戻すだけの力が本当にあるのか、って考えているんでしょう。
その考えは正しいわ。
でも、あなたにしてもらいたいことがあるの。
[タスキ]
俺に何をしてほしいんだ?
[ラヴェリス]
そうね、退屈させないように単刀直入に言うわ、タスキ。
[ナレーター]
彼女が自分の名前を知っていることに、タスキは驚いた。
[ラヴェリス]
あなたの家族には、二度目のチャンスが与えられる。
でも、あなたにはひとつ、はっきりした目的がある。
魔女エラリスを殺すこと。
彼女を倒すことができたら、あなたの家族を返してあげると約束するわ。
[ナレーター]
タスキは自分の手を見つめ、それから周りを見回し始めた。
[タスキ]
でも、ここはどこなんだ? なんで全部、暗く見えるんだ?
[ラヴェリス]
ブッブー、教えてあげない。タスキ、私は本気で話してるのよ。家族を取り戻したいの? 取り戻したくないの?
[タスキ]
取り戻したい……ほかに道はないから。
[ラヴェリス]
よろしい。じゃあ、手を伸ばして。
[タスキ]
なんのために?
[ラヴェリス]
私と契約を結んでもらうわ。
この契約は破れない。この契約のもとで約束を破れば、あなたは死ぬ。
[ナレーター]
タスキは戸惑い、ひどく落ち込んでいるように見えたが、彼にはほかに選択肢がなかった。
魔女の条件が何なのかも知らないまま、彼は契約を受け入れた。
[ラヴェリス]
よろしい。始めましょう。タスキ、私との契約を受け入れなさい。私が頼んだことを果たせば、あなたの家族を取り戻してあげると約束するわ。
でも、あなたの新しい人生では、私があなたを支配する。
[タスキ]
ああ……
ちょ……え? 俺を支配する!?
おい、待てえええええっ!
[ナレーター]
突然、いくつもの閃光が走り、二人の腕のあいだを、とても強い光が流れ始めた。
すべてが、真っ暗になった。
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