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Kizuna no Saisei  作者: Jair
PR
2/8

Lia

[アラーム]

ピピッ、ピピッ、ピピッ、ピピッ、ピピッ、ピピッ……


[タスキ]

うぅ……また一週間、授業か。


[ナレーター]

タスキはベッドの上で体を起こし、時計を見た。


[タスキ]

今何時だ? くそっ、六時四十五分!? 遅刻する!


[ナレーター]

タスキは急いで浴室に駆け込んだ。始業の時間が迫っていて、彼にはもう一分も無駄にできなかった。


[タスキ]

くそっ、石けんはどこだ? あった! 俺の美しい体から逃げられると思ったか? あははは。

タタタタ〜♪


[ナレーター]

タスキは体を洗い終えると、できるだけ急いでシャワーを浴びた。


[タスキ]

はぁ〜、気持ちいいお湯だ。


[ナレーター]

目を閉じたまま髪を整え終えようとしたとき、彼はタオルを取ろうと手を伸ばした。だが、彼の手は何もつかまなかった。


[タスキ]

嘘だろ……タオル忘れた! くそっ、素っ裸で部屋まで行くしかないのか。

でも運よく、リビングにも台所にも誰の声も聞こえない。

だったら、出て、さっと歩いて、それで終わりだ。オーケー? タスキ、行くぞ。


[ナレーター]

タスキは勇気を振り絞った。よく考えたあと、彼はドアノブをつかんでドアを開け、走り出した。

しかし走っている最中、彼は床にほうきの柄が転がっていることに気づかなかった。


[タスキ(心の声)]

うわあああっ! ちくしょう!


[ナレーター]

タスキは、これ以上ないほど情けない格好で床に転んだ。

そのとき、話し声が聞こえた。何人かが少し顔をのぞかせ、素っ裸で床に倒れているタスキを見た。

その姿を見て、みんなが笑い出した。

そこにいた人たちの中には、彼の叔母もいた。母方の叔母で、遊びに来ていたのだ。その日、二人は一緒に出かけて、近況をのんびり話すつもりだったが、タスキの転倒ですべてが台無しになった。


[タスキ(心の声)]

くそっ……なんで俺ばっかり。


[ナレーター]

タスキはわずかに残ったプライドとともに急いで立ち上がり、体を隠しながら自分の部屋へ走って戻った。


[タスキ]

神様、なんで俺なんだよ? 走ってたら、ちょうどそこにほうきの柄があって、素っ裸で転んで、しかもちょうど叔母さんがいるなんて、どんな確率だよ?

うぅ……しかも遅刻寸前だし。急がないと。


[ナレーター]

そのあいだに、タスキはデオドラントをつけ、Tシャツ、シャツ、ズボン、靴を身につけ、最後に眼鏡をかけた。

それから彼はリュックを手に取り、恥ずかしさを抱えたまま台所へ向かい、持っていく朝ごはんを用意した。

準備が終わると、彼は一言も話さずに家を出た。リビングでは叔母が、さっきの出来事をまだ話していた。

タスキは急いで階段を駆け下りたが、下に着いたとき、バスがもう行ってしまったことに気づいた。

彼には自転車で行くしか選択肢がなかった。

自転車置き場があったので、彼の自転車は下に置いてあった。タスキはヘルメットをかぶり、急いで学校へ向かってペダルをこぎ始めた。


[ナレーター]

自転車をこぎながら、タスキは先週あったことを思い出していた。


[タスキ(心の声)]

今週はちょっと大変だった。まだ友達と呼べるような相手はできていない。

みんな負け犬ばかりで、話しかける価値もない。

ルシアにも番号を聞いたけど、メッセージに返事がない。一週間ずっと忙しかったのかもしれない……女の子っていうのはそういうもんだ。

それから、俺に執着してる、めちゃくちゃうざいやつにも出会った。変な子だ。

父さんの具合も、少し悪そうに見える。俺にも妹にも何も言わないけど、何かがおかしいのは分かってる。

夜中に、痛みでうめいている声が聞こえるだけだ。

それなのに俺は、漫画を読んでばかりだった。

なんてつまらない人生だ……でも、これが現実だ。

俺はそんなにかっこよくないし、眼鏡をかけていて、外すとよく見えない。

こんな人生、大嫌いだ。何ひとつうまくいかない。

それに、自分がこの家族の重荷になっている気がする。

それでも毎日もっと頑張ろうとしている。もう、あまり力は残っていないけど。

孤独……

家族の中で、俺には役目がない。重荷になっている気がする。

こんな気持ちになるのが、大嫌いだ!

俺は何ひとつ、ちゃんとできない!


[ナレーター]

ペダルをこぎ続ける彼の目から、一粒の涙がこぼれ始めた。


[タスキ(心の声)]

いつも失敗ばかりだ!

自分から誰かに話しかけようとしても、うまくいかない。

いいことをしても、誰も見てくれない。みんな、俺の悪いところしか見ない。

どうしてだよ?

俺が何を間違えたのか、分からない。

神様は、なんで俺を生まれさせたんだ?

死んでいればよかった……

こんな人生、最悪だ。


[ナレーター]

タスキはさらに強くペダルを踏み込んだ。胸の中のすべてを抑え込もうとしながら、彼はハンドルを握りしめた。

そのとき、彼の目に、遠くの何かが映った。

何人かの男たちが、一人の少女に絡んでいた。

タスキは数秒間、彼らを見つめた。

彼の中にあった怒りが、再びふくらみ始めた。

深く考えることもなく、彼はそこへ近づいた。


[タスキ]

その子に何してんだよ!?


[ナレーター]

若者の一人が振り返った。

タスキは近づき、胸の中の怒りをすべて込めて、その顔を殴りつけた。

若者は地面に倒れた。

ほかの者たちは、それを見て逃げ出した。

だが、タスキは止まらなかった。

彼は倒れた若者に飛びかかり、何度も何度も殴り始めた。

胸の中にあった怒りも、自分自身への憎しみも、長いあいだため込んできた悔しさも、そのすべてが一気にあふれ出した。


[タスキ]

女の子にそんなことするんじゃねえ!

このクズが!

最低の野郎が!


[ナレーター]

若者の顔は血だらけで、ほとんど動けなくなっていた。

タスキの手も血まみれだったが、彼は殴るのをやめなかった。

彼の目は、変わっていた。

生まれて初めて、タスキは自分が正しいことをしたと感じていた。

女の子を襲ったあの若者に、報いを受けさせているのだと感じていた。


[少女]

もうやめて、お願い!


[ナレーター]

タスキは反応しなかった。

少女は彼に近づき、腰をつかんで後ろへ引っ張った。


[少女]

私はもう大丈夫だから!

やめて、お願い!


[ナレーター]

その暴力を目の当たりにして、少女は泣き出した。

タスキはようやく我に返った。

彼が下を見ると、自分の手が血で真っ赤に染まっていた。

タスキはその場で凍りついた。


[タスキ]

俺……俺、殺しちまった……


[少女]

行こう!


[ナレーター]

少女はタスキを動かそうとしたが、彼は今起きたことのせいで完全に固まっていた。


[少女]

行こう! 警察が来る前に、ここを離れなきゃ。


[ナレーター]

少女は若者の手当てのために救急車と警察を呼び、彼らが着く前にタスキをその場から連れ出した。

タスキの顔は真っ青だった。少女は力をこめて彼が歩くのを支え、すぐ近くにある自分の家へ連れていくことにした。

家に着いても、タスキはうつろな目のまま、何を考えればいいのかも分からずにいた。


[少女]

大丈夫?


[タスキ]

俺……俺、殺しちまった。


[少女]

え? 誰も殺してないよ。気を失っただけ。心配しないで。


[ナレーター]

少女はタスキに近づき、彼を抱きしめた。その腕のぬくもりに、タスキは守られているように感じて、泣き出した。

彼は力いっぱい彼女を抱きしめ返し、声を上げて泣きじゃくった。


[タスキ]

ごめん……俺は化け物だ。


[少女]

化け物なんかじゃないよ。あなたは私を助けてくれた。あの人たちにひどいことをされていたとき、守ってくれた。あなたは私の救世主だよ。それに、心の奥ではいい人だって、私には分かる。


[タスキ]

君は……本当に、俺のことをそう思ってるの?


[ナレーター]

少女は少しだけ体を離し、両手でタスキの頭を包んだ。そして、彼の目をまっすぐ見つめた。


[少女]

うん、そう思ってる。それに、すごく素敵な人だとも思ってる。でも……どうしてそんなに自分を疑うの?


[タスキ]

だって……みんな俺のことが嫌いなんだ。かっこよくもないし、いつも仲間外れにされるし、何をやってもうまくいかない。そのうえ、自分がみんなの重荷になってる気がする。

俺のことを不細工で情けないやつだと思ってるから、誰も関わろうとしない。

今週は全然楽じゃなかったし、本音を話せる相手もいない……俺は、ひとりぼっちなんだ。


[少女]

んー……こうして見ると、別に悪くないと思うけどな。

それにね、人っていつも見た目で判断して、中身を見ようとしないの。でも今の私には分かる。あなたは今日、いい日じゃなかった。それでも、あの人たちにひどいことをされていた私を助けてくれた。

地面に押さえつけられていたとき、助けてくれる人なんて誰もいなかった。でも、あなたが来てくれた。あなたが私を守ってくれるのを見て、安心できたの。

それに、少し申し訳なくも思ってる。こんなことに巻き込んで、ごめんね。


[ナレーター]

タスキの目は、涙でいっぱいだった。


[タスキ]

い……いいんだ、気にしないで。君を助けられて、俺は嬉しかったから。


[少女]

私のほうこそ、あなたに会えて嬉しい。

でも……名前、なんだっけ?


[ナレーター]

少女は目を閉じて嬉しそうに微笑み、タスキの答えを待った。


[タスキ]

俺の名前は……タ……タスキ。


[少女]

素敵な名前。じゃあ、今度は私の番ね。私の名前はリア。

よろしくね、タスキ。


[タスキ]

リア……ひとつ聞いていい? どうしてあいつら、君を地面に押さえつけてたんだ? それに……どうして一人がスマホで撮ってたんだ?


[リア]

えっとね、実は私、すごく人見知りなの。えへへ。

それに見ての通り、私の体ってすごく目立つでしょ。そのせいで、いつも変な男の人たちの目を引いちゃうの。困ってるんだ。

でも、話を戻すとね……あの人たち、みんなの前で私の服を脱がそうとしたの。学園に行こうと家を出たところで、あの人たちが現れて。

一人に強くつかまれて、服を脱がされそうになって、必死に抵抗してたの。でも、ちょうどそこにあなたが来てくれた。

私、力が弱くて自分の身を守れないの。それがいつも困るところで……特に、いつも一人でいるから。あはは……分かってもらえるかな。


[ナレーター]

タスキは、彼女の話に黙って耳を傾けた。リアがされたことを思うと少し腹が立ったが、同時に、彼は少しほっとしていた。

なぜか、彼女と話したあと、タスキの心は少し落ち着いていた。


[タスキ]

そっか……分かったよ。

でも正直に言うと、君がそんなに人見知りには見えない。むしろ、一人でいられるなんて、すごく勇気があると思う。

それに、リアはすごく素敵な人だと思う。


[リア]

本当? あ……えっと、私が一人でいるのはね、同い年の女の子たちって、可愛いからって理由だけで、ほかの人を見下すことが多いから。

可愛いからって、人をバカにしていいわけじゃないよね。中には、見た目を使って、努力しないで欲しいものを手に入れる子もいるし。

私、そういうのが好きじゃないの。だから、一人のほうがいいんだ。


[タスキ]

なるほどな。


[ナレーター]

タスキはスマホを見て、時間に気づいた。


[タスキ]

もう学園には間に合わないな。この時間じゃ、門も閉まってるだろうし。

それに、手が血だらけだ……君の服も汚しちゃったし。


[リア]

あ、気にしないで。

よかったら、うちのお風呂を使ってシャワー浴びて。そのあいだに、何か食べるものを頼んでおくから。

そのあと、家まで送ってあげる。いい?


[タスキ]

それは助かるよ。

ありがとう、リア。


[ナレーター]

タスキは、起きたことすべてを整理しようとしながら浴室に入った。


[タスキ(心の声)]

彼女、すごく綺麗だ……。中身じゃなくて、物みたいに扱われてるのが腹立つ。人見知りだって言ってたけど、俺と話してるときはそんなふうには見えなかった。

本当に、完璧な子だ。

さて、シャワーを浴びて、彼女に送ってもらって、家に帰って休もう。今日は驚きの連続だったな……あはは。


[ナレーター]

シャワーを終えて体を拭くと、リアが兄の服を用意してくれていたことに、タスキは気づいた。

タスキはそれに着替え、浴室を出る前に、リアが貸してくれたその服を見つめた。


[タスキ]

ありがとう、リア。


[ナレーター]

タスキは借りた服を着て、浴室を出た。


[リア]

おかえり、タスキ。いいお風呂だったみたいだね。


[タスキ]

ああ。これで百パーセント復活だ。


[ナレーター]

タスキは片手を上げながら、ヒーローのような口調でそう言った。

二人は笑い出した。


[リア]

あははは、おバカさん。

ご飯はもう少しかかるよ。もう頼んであるけど、そのあいだに二人分のジュースを作っておいたの。


[ナレーター]

タスキはリアの隣に座り、二人でジュースを飲み始めた。


[タスキ]

ん……このジュース、すごくうまいな、リア! どうやって作ったの?


[リア]

愛情たっぷりで作ったの。それに、秘密のレシピなんだよ。


[タスキ]

あはは、なるほどな。俺にレシピを隠そうってわけか?


[ナレーター]

タスキは立ち上がり、リアのほうへ手を伸ばした。


[リア]

何するの、タスキ? だめっ! あはははっ!


[ナレーター]

タスキはリアをくすぐり始めた。


[タスキ]

レシピを教えないってんなら、これでもくらえ! くすぐり攻撃に耐えられるかな?


[リア]

絶対教えないもん! やめて、タスキ! あはははははっ!


[ナレーター]

二人が笑っていると、玄関のチャイムが鳴った。


[リア]

ご飯、来たみたい。


[ナレーター]

リアは急いでドアを開けに行った。そこにいたのは配達員だった。

リアは料理を受け取ってリビングに戻った。料理はたくさんあって、お寿司もあった。

リアは料理をテーブルに並べ、タスキに手伝ってもらいながら、二人の前にある小さなテーブルを整えた。二人は映画を見ながら、話をしながら、食事を始めた。


[タスキ]

なあ、リア。いろいろあったけど……どこの学園に通ってるの?


[リア]

んー……私はカスワード学園に通ってるよ。タスキは?


[タスキ]

俺も同じだ。


[リア]

え、本当に!?


[タスキ]

ああ! 何組なの?


[リア]

私はC組。


[タスキ]

へえ、そうなんだ。俺はA組。

でも、今週一度も見かけなかったな。休み時間とか、外に出ないの?


[リア]

あんまり出ないかな。朝早く来て、教室で絵を描いてるほうが好きなの。

でもね……明日、一緒に行かない? 私は全然いいよ。タスキがよければだけど。


[タスキ]

もちろん、全然問題ない。むしろ光栄です、女王様。


[リア]

何言ってるの? あはははは!


[ナレーター]

二人は笑い出した。

二人は映画を見ながら食事を終えた。遅くなってきたころ、二人は片づけをして、リアの家を出た。

二人はタスキのアパートまで一緒に歩いた。二人は歩きながら、自分たちのことや、子どものころの話をもう少しした。

そして、二人はタスキのアパートに着いた。


[タスキ]

えっと……リア、送ってくれてありがとう。本当にいい子だな、君は。


[リア]

え、えっと……あ……あ、ありがとうは、こっちのほうだよ。今朝、助けてくれて。タスキ。


[ナレーター]

リアの顔が赤くなった。


[リア]

ゆっくり休んでね、タスキ。また明日ね?


[タスキ]

ああ、リア。気をつけて。


[ナレーター]

リアは自分の家へ向かって歩き出した。遠ざかっていく彼女の姿を、夕方の光が照らしていた。

タスキは数秒間、彼女の後ろ姿を見つめていた。

彼の心の奥で、今までどんな女の子にも感じたことのない何かが生まれていた。

本当に久しぶりに、誰かが彼を特別な存在だと感じさせてくれたのだ。

タスキはアパートの階段を上り、ドアを開けた。家には誰もいなかった。妹も、父も、母もいなかった。

タスキがスマホを確認すると、母からメッセージが届いていた。


[母(メッセージ)]

妹とお父さんと買い物に出かけてるね。必要なものを買ってくるから。帰りにアイスを買っていくよ :)


[ナレーター]

タスキは微笑みながらメッセージを読んだ。その日いろいろなことがあったのに、彼の心は穏やかで、幸せだった。

タスキは自分の部屋へ行き、リュックを脇に置いた。彼はかなり疲れていたので、ベッドに横になり、数秒間天井を見つめた。

やがて、彼はゆっくりと目を閉じ、小さな笑みを浮かべたまま眠りについた。


第2話、更新しました!

第1話を読んでくれた皆さん、本当にありがとうございます!

スペイン語版ではすでに第1アークが完結して、これから第2アークに入ります

日本語版も少しずつ追いついていきます!

ちなみに、この物語では1話ごとに作中で約1週間が進みます

日本語版は言葉の壁もあって、翻訳や確認に時間がかかってしまいますが、できるだけ丁寧に届けていきたいと思っています

「Kizuna no Saisei」をこれからもよろしくお願いします☺️

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