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第4話:姉の近くが定位置になる
それからというもの、フェンリルの生活リズムの基準は完全に「姉の居場所」に最適化されていった。
姉がキッチンでマグカップにコーヒーをいれていれば、その背後にぴたりと影のように立ちふさがり、他の人間が近づかないように威圧的なプレッシャーを放つ。
姉がリビングのテーブルで調べ物をしていれば、その足元に丸くなるか、少し離れたソファの端を陣取って、時折じっと姉の横顔を観察する。
「ねえ、フェンリルくん。私よりお姉ちゃんがいいわけ?」
「当然だ。お前は五月蠅いし、脂っこい匂いがする」
「ひどっ!? 私、昨日ちゃんとシャンプーしたよ!?」
妹が悲痛な叫びを上げても、フェンリルは「うるさい」とばかりに耳をパタンと伏せるだけ。
姉の周りだけは、驚くほど静かで、穏やかな時間が流れていた。
メーカー保証の「観賞用(触れ合い不可)」というスペックはそのままに、なぜか逆にフェンリルが姉を観賞しはじめてしまったのである。




