表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブルーレゾナンス  作者: kiriiti
青の覚醒
6/34

澄める草

AIを一部使用しています。ご理解のうえお読みください。

翌朝。


 二人は冒険者ギルドへと向かっていた。


 扉を開けると、相変わらずの活気。


「まずは依頼だな」


 ガルウィンはクエストボードに視線を向ける。


 並ぶ依頼書。


 討伐、護衛、採取――


(……報酬が高いものは)


 自然とそこに目がいく。


 だが。


「ガルウィンさん!」


 ティアが勢いよく戻ってくる。


「これ、どうですか!?」


 差し出された依頼書。



 ――澄める草の採取(20本)


 報酬:3万ゴールド+澄める草5本



「……」


 

 ガルウィンはしばらくそれを見つめる。


 

「……15本でいいのではないか」


「え?」


 

「報酬に5本付くのなら、この依頼主が欲しい数は15本だろう?」


 

 極めて合理的な疑問だった。



 だが――

 

「……!」


 ティアの目が、きらきらと輝く。


 

「そんなのどうでもいいです!」

 

「見たことない薬草です!」


 食い気味だった。



「きっとこの辺りにしか生えてないんですよ!」


 

「……」


 ガルウィンは一瞬、言葉を失う。



「……なぜ、そんなに嬉しそうなのだ」


 

「え?」


 ティアはきょとんとした後――


「珍しい薬草とかお花、好きなんです」


 少し照れたように笑う。

 

「これは……絶対に受けたいです」


 

 その目は、完全に決まっていた。

 

(……譲らないな)


 ガルウィンは小さく息を吐く。


 本来なら。


 Cランク以上はクエストブックから依頼を選べる。


 だが――


(……まあ、いいか)


「……それにしよう」


「やった!」

 

 ティアは素直に喜んだ。



 受付で場所を聞き、街の外へ。


 しばらく歩くと――



「……沼地か」



 ぬかるんだ地面。


 湿った空気。



 周囲には――


 


 カエル型の魔物。


「来ます!」


 

 ティアが槍を構える。


 

「任せる」


「え?」


 一瞬戸惑うが――


「……はい!」



 踏み出す。



 炎を纏った突き。


 風で敵の動きを鈍くする。



 以前よりも動きがいい。



「……成長しているな」



 ガルウィンは静かに呟く。


 

 数体を倒し、道を切り開く。



 そして――


 

「あれです!」



 沼の端。


 淡く光る草。


「……これが」


 澄める草。


 

 ティアは嬉しそうに近づく。



「綺麗な光…」


 

 そっと手を伸ばし――


 


 引き抜いた。


 

 その瞬間。


 


「――――っ!?」


 

 世界が、終わった。


 

 鼻を突き抜ける、異臭。


 

 腐敗と発酵と何かが混ざった、説明不能な臭い。


 

「なっ……!?」


 

 ガルウィンですら、一歩後退する。


 

「な、なにこれぇぇぇぇ!?」


 

 ティアが叫ぶ。



 だが――


 

 臭いは、一瞬で消えた。


 

「……」



 沈黙。


 

「……今のは」


 

「……分かりません……」


 

 ティアの顔が引きつっている。



「……」



 ガルウィンは冷静に言う。


「今なら、街に戻れる」


「……え?」


「キャンセルして、別の依頼を受ける時間はある」


 極めて合理的な判断だった。


「……どうする?」


 ティアは――


 少しだけ、震えながら。


「……依頼、なので……」


 泣きそうな顔で。



「……やります」


「……そうか」




 それからは、地獄だった。



 一本。



「うっ……!」


 

 二本。



「うぅ……!」



 三本。



「む、無理かも……!」


 

 そのたびに、あの臭い。


 ガルウィンは――

 

 一歩。


 また一歩と。


 距離を取っていく。


 

 十五本目。



 気がつけば――



 木の陰にいた。


「……」



 合理的判断である。




 そして。


 

 最後の一本。


 

 ティアは、ふらふらと近づき――



「……これ、で……」


 

 手を伸ばし。



 ――そのまま、崩れ落ちた。

 


「おい……」



 ガルウィンは木の陰から顔を出しティアに近づく。


 しばし、沈黙。


 ティアは苦悶の表情で気絶している


 

「……はぁ」



 小さく息を吐く。



 ゆっくりと歩み寄り――



 澄める草を掴む。



 一瞬、躊躇う。



 だが――



「……仕方ない」



 引き抜いた。



 ――地獄、再び。



「…………」



 無言で耐えた。




 帰り道。



 ガルウィンはティアを背負っていた。


 

 軽い。


 

 しばらくして――


「……ん」


 ティアが目を覚ます。



「……あれ……?」



「終わったぞ」


 

「……最後の一本……」



「私がやった」


 

 ティアは少しだけ目を見開き――



「……ありがとうございます」



 静かに言った。


 

「……気にするな」




 ギルド。


 

「依頼達成ですね」


 受付嬢が報酬を渡す。



「三万ゴールドと、澄める草五本です」


 

「……これ、食べられるらしいですよ」


 ティアが言う。


「料理すると美味しいらしくて」


「……あれがか」


 ガルウィンの眉がわずかに動く。




 宿の厨房。


 

 バターを溶かし。



 狼肉を焼く。



 そこに――


 澄める草を加える。


 

「……匂いは普通ですね」



「……不思議なものだ」

 


 出来上がりを皿に盛る。





 部屋。


 恐る恐る一口食べる。


 

「……」

 


「……あれ?」

 


 ティアの目が開く。


「美味しい……!」


 狼肉は柔らかく。


 澄める草は、風味を引き立てる。



「……確かに、悪くない」



 ガルウィンも頷く。


「……あの苦労、報われましたね」


 

「……そうだな」



 自然と、笑みがこぼれる。


 


 満腹。


 満足感。


 二人は、そのまま眠りにつく。


 今日の疲れと――


 少しの達成感を胸に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ