表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブルーレゾナンス  作者: kiriiti
青の覚醒
4/34

夜の記憶

AIを一部使用しています。ご理解のうえお読みください。

山道を下り、森へと入る。


 

 木々の間を縫うように、二人は進んでいた。



 ぬかるんだ地面。


 湿った空気。


 

 そして――



「来ます」


 

 ティアが小さく告げる。


 

 次の瞬間、茂みの奥から飛び出してきたのは――


 

 スライム。


 

 青い粘液の塊が、地面を滑るように迫る。


 

「……任せろ」


 

 ガルウィンが前に出る。


 一歩。


 踏み込み。


 

 振り抜く。



 ナイフの一閃。


 

 それだけで、スライムは二つに裂け、動きを止めた。


 

「……さすがですね」


 

 ティアが小さく苦笑する。


 

 その直後――


 

 遠吠え。



 今度はウルフドッグ。


 

 凶暴な狼型の魔物が、2匹。


 

「二体、来ます!」


 

「……分かっている」


 

 ガルウィンは視線だけで動きを読む。


 

 右。


 左。


 

 一体目の飛びかかりを最小限の動きでかわし、喉元へ刃を滑り込ませる。


 

 そのまま体を捻り、二体目の牙を躱す。


 


 ――速い。


 


 そして、無駄がない。


 


 最後は、首筋への一撃で終わった。


 

「……終わりだ」


 

 血の匂いが、風に流れる。


 


 ティアは少し呆れたように息を吐いた。



「本当に……ナイフ一本でやるんですね」


 

「問題はない」


 

 淡々とした返答。


 

「……あ、そうだ」


 

 ティアは何か思い出したように、腰のポーチからナイフを取り出す。


 

「素材は回収しておきましょう」


 

「……素材?」


 

 ガルウィンはその言葉に首を傾げる。

 


「見ててください」


 ティアは銀色の装飾が施されたナイフを持ち告げる。ナイフには刃がなく明らかに切る目的で作られたものではなかった。

 ティアは倒れたウルフドッグにナイフを当てる。


 

 その瞬間――


 

 ナイフが白く淡く光った。

 

 次の瞬間。


 魔物の体が、音もなく分解される。


 皮。牙。肉。


 綺麗に分かれ、地面に並んでいた。ご丁寧に紙袋の様な物に包まれている。


「……」


 ガルウィンは、わずかに目を見開く。


「便利なものだな」


「ですよね」

 

 ティアは少し得意げに笑う。


「これ、素材ナイフって言うんです」


「……三百年前とは、大違いだ」


 ぽつりと呟く。


「え?」


「……いや、何でもない」


 視線を逸らす。

 

「それにしても……」


 ティアは首を傾げる。


「これも見たことないなんて……本当にすごい山奥にいたんですね」


「……そういうことにしておこう」


 ガルウィンは静かに答えた。


 


 日が沈み、夜になる。


 森の中。


 二人は小さな焚き火を囲んでいた。


 ティアが手をかざす。


「――エレフレイム」


 炎の魔法。


 薪に火が宿り、ぱちりと音を立てる。

 

「……便利だな」

 

「え?」


「火を起こすのに、手間がいらない」


「ああ、そういうことですか」


 ティアは少し笑う。


「そういえばガルウィンさんって……」


 首を傾げる。

 

「ずっとナイフで戦ってますけど、何の魔法が得意なんですか?」


 自然な問いだった。

 だが――


「……私は、魔力を持っていない」

 

 静かに、答える。


「……え?」


 ティアの動きが止まる。


「え、いや……え?」

 

 明らかに混乱していた。


「えっと……その、みんな何かしら魔法は……」


「……ああ」


「だが、私は例外だ」


 それ以上は語らない。


「……そんなこと、あるんですね……」


 ティアは呆然と呟く。

 だが、次第にその表情は変わっていく。


「それなのに……あんなに強いんですか」


 純粋な尊敬の目。


「魔力があったら……とんでもないことになりそうですね」


「……だろうな」


 ガルウィンは小さく答える。


 脳裏に浮かぶのは――


 かつての自分。


 そして、すべてを壊したあの日。


「……」


 炎が揺れる。

 それ以上、その話は続かなかった。


 


 やがて、食事の準備を始める。


 出立の際に村人からもらったパン。

 そして、先ほど手に入れた狼肉を焼く。


「……固いですね」


ティアが顔をしかめる。


「噛み応えがあるとも言う」


「いや、これはちょっと……」


 思わず苦笑する。


「早く街に行って、美味しいもの食べたいです」

 

「……慣れれば美味い」


「本当ですか?」


「……たぶんな」


 わずかに間があった。


「怪しい……」


 ティアは小さく笑う。

 空気が、少しだけ柔らかくなる。



 食事を終え、火も落ち着いた頃。


「……見張りは、私がやる」


 ガルウィンが言う。


「え、でも……」


「眠りが浅い」


 短く告げる。


「だから問題ない」


 ティアは少し考え――


「……じゃあ、眠くなったら起こしてください」

 

「……ああ」


 ガルウィンは頷く。


 ティアは横になり、ほどなくして寝息を立て始めた。


 静かな夜。

 

 風の音。


 そして――


「……」


 ガルウィンは、ティアを見る。


 眠る顔。


 その姿が、重なる。



 ――エレア。


 

 笑っていた顔。


 怒っていた顔。


 最後に見た、あの瞳。

 


「……似ているな」


 

 ぽつりと呟く。


 

 手を伸ばしかけて――


 

 止めた。


「……」


 

 ゆっくりと、拳を握る。


 焚き火の火が、小さく揺れる。



 その光の中で。


 ガルウィンは、ほんのわずかに――


 悲しそうに目を細めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ