表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブルーレゾナンス  作者: kiriiti
コルナ港へ
29/34

空を裂く影

「よし! じゃあコルナ港に行こう!」


 宿屋の前に出たティアが、いつものように元気よく宣言した。


「おう! ま、船があるか分かんねぇけどな。行ってみなきゃ分かんねぇし」


 ジオが肩を回しながら笑う。


「ああ、とりあえず着いてから考えるか」


 ガルウィンも静かに頷いた。


 三人はそのままクレリアットを後にする。

 目指すはコルナ港――新たな大陸へ繋がる地。



 街道を進み、しばらく歩いた頃。


 視界の先に、小さな村が現れた。


 入口には木製の看板が立っている。


 ――ケーリッヒ。


「少し休んでいくか?」


 ジオがそう言いかけた、その時だった。


 村の中心部から、ざわめきが聞こえてくる。


 ただの賑やかさではない。

 焦りと、不安と、恐怖が混じった音だった。


「何かあったのかな……」


 ティアが不安げに呟く。


「行ってみようぜ」


 ジオの言葉に、ガルウィンも頷いた。



 人だかりに近づくにつれ、断片的な会話が耳に入る。


「裏山に向かったらしい……!」


「ギルドに依頼を出すか……?」


「そんな時間ねぇだろ! 今この瞬間にも……!」


「でも俺たちじゃ……!」


 焦燥と無力感が、空気を重くしていた。


 ティアは人混みの後ろから声をかける。


「どうしたんですか?」


 村人たちが一斉に振り返る。


 その中の一人――顔色の悪い男が、縋るような目で叫んだ。


「あ、あんたら……冒険者か!?」


「はい。コルナ港へ向かう途中です」


 ティアが答えると、男は一歩踏み出した。


「頼む! 息子たちがいなくなっちまったんだ! 探してくれ!」


「えっ……!?」


 ティアの表情が一変する。


 男は必死に言葉を紡いだ。


 風邪で寝込んだ母親のために、子供たちが裏山へ薬草――ハレオンを取りに行ったという。


「薬は無かったのか?」


 ガルウィンが静かに問う。


「飲ませてる……だが効かねぇ! ハレオンなら効くはずなんだ……!」


 別の村人が口を挟む。


「だが、あの山にはグリフォンがいる……!」


 空気がさらに冷えた。


「ハレオン草を好む魔物でな……普段は依頼を出してから採りに行くんだが、今回は……」


「グリフォンって、Bランク相当だよな?」


 ジオが低く言う。


「ああ。子供では逃げることもできんだろう」


 ガルウィンの言葉が現実を突きつける。


 男はその場に崩れ落ち、頭を地面に擦り付けた。


「頼む……助けてくれ……!」


 その姿に、ティアは迷わなかった。


「ガルウィン、ジオ……行っていい?」


 その瞳には、すでに答えがあった。


「おう! 行こうぜ」


 ジオが拳を鳴らす。


「もちろんだ」


 ガルウィンも即座に応じた。


 男は何度も何度も頭を下げる。


「ありがとう……!」



 三人はすぐに裏山へ向かった。

 

 森を抜けたらすぐに高い山が見えた。


 道はある程度整備されているが、一般人には厳しい斜面だ。


 だが――妙に静かだった。


「モンスター、全然いないね」


 ティアが辺りを見回す。


「グリフォンのせいだろう」


 ガルウィンが答える。


「空からの捕食者だ。並の魔物では近づくことすらできん」


「……なら、急がねぇとな」


 ジオの声が引き締まる。



 中腹へ辿り着いた時、景色は一変した。


 木々は消え、岩と砂だけの荒れた地形が広がっている。


 その時――


「キィェェェェ!!」


 鋭い鳴き声が山を裂いた。


「今のは……!」


 三人は顔を見合わせ、即座に駆け出す。



 そこにいたのは――


 二人の子供。


 妹を庇うように前に立つ兄。


 そして、その先に。


 巨大な影。


 グリフォン。


 鋭い嘴、猛禽のような眼光。

 巨大な翼と、獣の脚。


 完全な捕食者の姿だった。


 グリフォンが腕を振り上げる。


 その鋭い爪が、振り下ろされる――


 その瞬間。


 ――ガンッ!!


 金属音が空気を裂いた。


 ガルウィンが割り込み、剣でその一撃を受け止めていた。


 衝撃が地面を震わせる。


 グリフォンの瞳が見開かれた。


 侵入者。


 しかも、自分の攻撃を止めた存在。


 警戒と本能がせめぎ合い――


 次の瞬間、翼を大きく広げた。


 風が巻き起こる。


 砂が舞う。


 そしてそのまま――空へ。


 グリフォンは距離を取るように飛び去った。



「大丈夫!?」


 ティアとジオが駆け寄る。


 子供たちは、ようやく恐怖から解放されたのか、その場に崩れ落ちた。


 妹は泣きながら座り込み、兄は震える手で――


 ガルウィンの足にしがみつく。


「うぅ……うぅぅ……」


 言葉にならない嗚咽。


 ガルウィンはゆっくりとしゃがみ、頭に手を置いた。


「……もう安心だ」


 静かな声。


 優しく撫でる。


 その仕草は、どこまでも穏やかだった。



 やがて子供たちの泣き声は、少しずつ落ち着いていく。


 ティアは妹の肩を抱き、優しく語りかけていた。


「大丈夫だからね。もう怖くないよ」


 ジオは空を見上げ、目を細める。


「……あいつ、逃げただけだな」


「様子見だろう」


 ガルウィンは短く答える。


 視線は空を捉えたまま。


「縄張りに入った以上、戻ってくる可能性は高い」


 ティアも真剣な顔になる。


「じゃあ……」


「ああ」


 ガルウィンの声が低くなる。


「ここからが本番だ」


 その一言で、空気が変わった。


 ジオがにやりと笑う。


「ようやく戦いって感じだな」


 ティアも槍を握り直す。


 その時。


 ガルウィンの内側に、あの声が響いた。


(ほう……懐かしいな。グリフォンか)


 レグナ。


(なかなか面白そうな獲物じゃの)


(黙って見ていろ)


 短い返答。


 だがその瞳は、すでに戦いを見据えていた。


 空の彼方――


 再び舞い戻るであろう脅威を。


 迎え撃つために。

今まで投稿した話しで、ん?となった部分を色々思い出したので後々修正します。

その場の勢いで書いてるので思う事はあるかもしれませんが広い目で見てもらえたら幸いです(-_-;)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ