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ブルーレゾナンス  作者: kiriiti
コルナ港へ
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鍛錬の時間

 クレリアットに滞在してから、数日が経っていた。


 いくつかの依頼をこなしたことで、路銀もそれなりに貯まっている。

 ティアはそろそろ次の目的地――コルナ港へ向かうことを考えていた。


「よし……そろそろ港に向かおう」


 部屋で一人、小さく拳を握る。


 その時。


 コンコン、と扉を叩く音がした。


「ティア、今時間あるか?」


 ガルウィンの声だ。


 今日は依頼を受けず、それぞれ自由に過ごす日だった。

 とはいえ、特にやることもなく持て余していたティアはすぐに返す。


「うん、どうしたの?」


 扉越しにそう答えると、ガルウィンは少し間を置いて言った。


「今からジオを鍛えるんだが……よかったら、ティアも魔法の練習でもしないか?」


 休みの日だというのに、相変わらずの真面目さである。


 だがティアはぱっと顔を明るくした。


「うん! する!」


 勢いよく扉を開ける。


 目の前のガルウィンが一瞬だけ驚いた顔をしたが、すぐにいつもの落ち着いた表情に戻った。


「……じゃあ街の門で待っている。準備ができたら来てくれ」


「すぐ行けるから、待っててくれる?」


「そうか? わかった」


 ガルウィンは小さく微笑んだ。



 ティアは急いで準備を整える。


 冒険用のズボンに履き替え、槍を手に取ると、そのまま外へ飛び出した。


 宿を出ると、ガルウィンが待っている。


 二人は並んで街の門へ向かった。


 門の前にはすでにジオの姿があった。


「ようやく来たな。待ちくたびれたぜ」


 腕を組みながら、少し大げさに言う。


「そんなに待ってないでしょ」


 ティアが苦笑する。


「じゃ、行こうぜ」


 三人はそのまま街の外へ出た。



 人気のない草原まで歩く。


 そこは見渡す限りの緑が広がり、大きめの岩が点在している。

 風が草を揺らし、どこか心地よい匂いが漂っていた。


 遠くにはクレリアットの街が小さく見える。


「ここなら大丈夫だろう」


 ガルウィンはそう言って荷物を下ろした。


 そして剣を抜く――が、鞘はつけたままだ。


「ジオ、早速かかってこい」


 構えは無駄がなく、隙もない。


「よっしゃ! 行くぜ!」


 ジオは軽く身体をほぐすと、勢いよく地面を蹴った。


 一直線にガルウィンへ突っ込む。


 だが――


「ティアはその間、合成魔法の訓練だ」


 ガルウィンはジオの攻撃をいなしながら、平然と指示を出す。


「合成魔法?」


 ティアが首を傾げる。


「ああ。炎と風を使える者は、爆発系の魔法を習得しやすい」


 ジオの拳を軽く受け流しながら続ける。


「ティアのファイアーボールも、時折わずかに爆発している」


 その瞬間。


「甘いぞ」


 ガルウィンの鞘がジオの足を叩いた。


「痛ってぇ!?」


「攻撃の後、足が疎かだ」


 淡々と指摘する。


 そしてすぐにティアへ視線を向ける。


「無意識ではなく、意識して風の魔力を加えてみろ」


「う、うん……やってみる」


 ティアは頷き、手のひらに魔力を集める。


「ファイアーボール!」


 火球が生まれ、目の前の岩へ向かって飛ぶ。


 ――ドンッ!


 着弾と同時に、わずかに爆ぜた。


「……!」


「よし、いい」


 ガルウィンが短く評価する。


「そのバランスのまま、少しずつ魔力量を増やせ」


 一方でジオが再び突っ込んでくる。


「隙あり!」


 拳がガルウィンの顔面を狙う。


「甘い」


 軽く身体を捻り、横腹に一撃。


「ぐっ……!」


「逆の腕が上がりすぎだ。隙になる」


 完全に指導である。


 ジオは涙目になりながらも食らいつく。


「くそっ……まだまだ!」


 その様子を横目に、ティアも集中を深める。


 再び火球を放つ。


 今度は――


 ドォンッ!


 明らかにさっきより強い爆発。


「ガルウィン! できた!」


 嬉しそうに振り返る。


「いいぞ。では次は逆だ」


 ガルウィンは即座に次の課題を出す。


「風の比重を上げろ。威力ではなく拡散を意識しろ」


「うん!」


 ティアは再び魔力を練る。


 その間も、ジオは殴りかかる。


「豪掌!」


 重い掌打が放たれる。


 ガルウィンはそれを正面から受けることなく、腕を取って流した。


「いい技だが、タメが長い」


 そのまま動きを崩す。


「慣れれば見切られる」


「マジかよ!?」


 ジオが目を見開く。


 ガルウィンはわずかに口元を緩めた。


「教え甲斐がある」


 その声には、ほんの少し楽しさが混じっていた。



 気がつけば、日は傾いていた。


 草原は夕焼けに染まり、影が長く伸びている。


「はぁ……はぁ……もう無理……」


 ジオがその場に座り込む。


「つ、疲れた……」


 ティアも膝に手をつきながら息を整える。


 対してガルウィンは、ほとんど息も乱れていない。


「もうそんな時間か」


 あっさりとした一言だった。


「化け物かよ」


 とジオが息を切らしながら言う。


 その時。


 ふわり、と青い煙が立ち上る。


「儂も暇じゃ〜」


 レグナが顔を出した。


 ガルウィンは呆れたようにため息をつく。


「お前、人目がないからといって遠慮がなくなってきたな」


「退屈なんじゃ」


 レグナはふてくされたように言う。


 ジオは肩をすくめる。


「もう驚かねぇな」


 ティアも苦笑した。


「慣れって怖いね……」


 レグナはそんな二人を見て満足げに頷く。


 ガルウィンは小さく息を吐き――


「……帰るか」


 短くそう言った。


 三人と一匹は、夕焼けの中を街へと戻っていく。


 それぞれに、少しだけ強くなった手応えを感じながら。

ジオは書いてて楽しいキャラになってきました。

いつかジオを主人公にして書いてみてもいいかもなと思いはじめてます。


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