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ブルーレゾナンス  作者: kiriiti
青の覚醒
11/34

ザイル

AIを一部使用しています。ご理解のうえお読みください。

夜。


 ゆっくりと、意識が浮かび上がる。


 まぶたを開くと、最初に目に入ったのは揺れる焚き火の明かりだった。


「……」



 ガルウィンはしばらく、ぼんやりと天井代わりの夜空を見つめる。


 それから少しずつ、今までのことを思い出していった。


 エント村で過ごした静かな日々。


 ティアが訪れ旅に出た日。


 冒険者ギルドに登録し依頼をこなす。


 そして暗殺者たちの襲撃。


 木々の上を駆けたこと。


 返り血。


 震える手。


 蘇った記憶。


「……そうか」


 小さく呟き、身体を起こす。


 傍らには、ティアが眠っていた。


 焚き火の明かりに照らされた寝顔は穏やかで、無防備で。

 

 ガルウィンはティアに自身の掛けられていた毛布をそっと掛ける。


 ガルウィンは、ほんの少しだけ微笑んだ。


 

「起きたか」



 低い声がした。


 顔を上げると、少し離れた場所に座っていたガッドがこちらを見ていた。


「だいぶ寝てたね」


 エルも杖を抱えたまま、つまらなそうに見えて実は少し安心したような顔で言う。


「……すまない」


 ガルウィンは静かに頭を下げた。


「気絶するとは思わなかった」


「気にすんな」


 ガッドが即座に言う。


「誰だって、調子の悪い時はある」


「そうそう」


 エルも肩をすくめた。


「それより、そこのお姉さんにお礼言った方がいいよ」


「……ティアに?」


「おじさんの血塗れの服、洗って綺麗にしてくれたんだから」


「……」


 ガルウィンは一瞬だけ黙り、それから冗談めかして言った。


「……脱がしたのか?」


「ガッドがね」


 エルが即答した。


「おう」


 ガッドが豪快に笑う。


「鍛え抜かれた、いい身体してたぜ」


「……そうか」


 ガルウィンは微妙な顔になった。


「セルディオは?」


「荷馬車で寝てるよ」


 エルが顎で馬車を示す。


 ガルウィンは小さく頷き、火のそばへ座り直した。


「……残りは私が見張る」


「いいのか?」


 ガッドが聞く。


「迷惑をかけたからな」


 ガルウィンは短く答えた。


「なら、お言葉に甘えようかな」


 ガッドはそう言って横になる。


 エルもあくびを一つしてから、ふと思い出したように言った。


「シチュー作ってあるから、あとで食べたら?」


「……シチュー?」


「セルディオが材料をくれたんだよ。守ってくれたお礼にって」


「……そうか」


 ガルウィンは小さく頷いた。


「後でいただこう」


 それを聞くと、二人も眠りについた。


 



 深夜。


 ぱち、と薪が爆ぜる音がした頃。



「……ん」


 小さく身じろぎして、ティアが目を覚ました。


「……おはようございます」


 寝ぼけた声で言う。


「まだ深夜だ」


 ガルウィンが静かに返す。


「……本当だ」


 ティアはくすっと笑った。


 しばし、沈黙。


 火の揺れる音だけが二人の間を満たす。


 やがて、ティアがぽつりと口を開いた。


「……驚きました」


「何がだ」


「ガルウィンさんが、倒れたことです」


 その言葉に、ガルウィンは火を見つめたまま黙る。


「私、勝手に思ってました」


 ティアは少し困ったように笑った。


「あれだけ強いんだから……盗賊とか、そういう人も、今までたくさん倒してきたんだろうなって」


「……昔はな」


 ガルウィンはそう答えた。


 それきり少し黙る。


 ティアは、続きを待つように静かに座っていた。



「……今は」


 やがて、ガルウィンが低く言う。


 

「人を殺すのが怖い」



 ティアは目を伏せた。


 その言葉の重さを、うまく受け止めきれないまでも、軽く扱ってはいけないと分かった。


「……」


 悲しそうな横顔だった。


 だからティアは、少しでも空気を和らげようとして言う。


「……シチュー、食べますか?」


「……いただこう」


 ティアは立ち上がり、鍋を火にかける。


 器によそい、ガルウィンへ差し出した。


「どうぞ」


「ありがとう」


 一口、口に運ぶ。


「……美味いな」


 短いひと言。


 だが、ティアはそれだけで少し嬉しそうに微笑んだ。




 朝。


 あれから、なかなか寝ようとしないティアをなんとかなだめ、少しだけ休ませた。


 一番最初に起きてきたのはセルディオだった。


「おはようございます」

 

「……おはよう」


 ガルウィンも挨拶を返す。


 他の者たちがまだ眠っている間に、ガルウィンは気になっていたことを口にした。


「一つ聞きたい」


「なんでしょう」


「なぜ、暗殺ギルドに狙われている」


 セルディオは少しだけ目を細めたが、隠す様子はなかった。


「私は、クーパー商会の会長です」


「……クーパー商会?」


 ガルウィンには聞き覚えがない。


(後でティアに聞くか)


 そう思いつつ、続きを促す。


「この大陸で一番大きな商会です」


 セルディオは穏やかな笑みのまま言った。


「今回の貿易で、少し珍しい魔石を手に入れまして」


「それを国王に献上し、謝礼金を得る予定です」


「……なるほど」


「その資金で、さらに商会を大きくできる」


 セルジュはそこで少しだけ肩をすくめた。


「快く思わない同業者がいても、おかしくはありません」


「それで依頼を出された、と」


「おそらくは」


 ガルウィンは頷いた。


「だからオーレリアまで着けば、大丈夫というわけか」


「ええ。あそこまで行けば、さすがに手は出しにくいでしょう」


 そこで他の者たちも起き始め、会話は終わった。


 野営の片付けを済ませ、一行は再び出発する。



 その日。


 

 昼も、夕方も、大きな危険はなかった。


 

 だが、それが逆に不気味だった。



「静かすぎるな」


 ガッドが斧を担ぎながら呟く。


「油断はできねえ」


「ですね」


 ティアが頷く。


 そして夜。


 再び野営の準備に入る。


「とりあえず、ご飯にしましょう」


 ティアが荷を下ろし、火を起こそうとしたその瞬間。


「ティア!」


 ガルウィンの声が鋭く飛ぶ。


 ティアの動きが止まる。


 同時に、ガルウィンは剣を抜いた。


「……近い」


 かなり近い距離まで、気配を殺して近づかれていた。


 その場の空気が一変する。


 ガッドが斧を構える。


 エルが杖を握る。


 ティアも槍を持つ。


 そして――


 

 暗闇の中から、一人の男が姿を現した。


 

 細身。


 曲刀を片手にした、異様な気配の男。

 

 動きやすさを重視した様な黒い軽装の鎧に身を包んでいる。


 その目は気怠そうにこちらを見ている。


「この中で、一番強いやつは誰だ?」


 言うが早いか、男は一瞬で距離を詰めた。


 最初に狙ったのはガッドだった。

 


「っ!」


 曲刀が振り下ろされる。


 ガッドは大斧で間一髪で受け止めるが――重い。


「ぐっ……!」


 男は斧に張り付くようにして、至近距離からガッドの顔を覗き込む。



「……違う」



 次の瞬間、ふっと身を離す。


 今度はすぐ隣のエルへ。


 少年を覗き込み――



「……違う」



「な、なにこいつ……」


 エルが顔を引きつらせる。


 男はさらに飛び退き、ティアへ向かった。


 ティアがとっさに槍を振るう。


 だが男は、その槍を跳び越えながら。



「……違う」



 まるで品定めをするように呟いた。


 そして最後に。


 男はガルウィンの前へ降り立ち、そのまま斬りかかってきた。


「っ!」


 ガルウィンが剣で受ける。


 重い。


 一撃の圧が、今までの刺客たちとは明らかに違う。



「お前が、一番強いな」



 男が笑った。


 ガルウィンはわずかに狼狽える。


「……なんだ、こいつは」


 その時。


 

「ザイル! 勝手な行動をするな!」


 暗闇の向こうから声が飛ぶ。


 続いて、五人の暗殺者が姿を現した。



「……」


 

 ザイルと呼ばれた男は、ガルウィンから離れ、その仲間たちの元へ軽やかに着地する。


 

 次の瞬間。

 


 ――斬った。



「がっ……!?」


 自分を止めた味方の一人を、何の躊躇もなく。



「……っ」


 


 エルが目を見開く。


「こいつ、味方を……」


「なに……この人……?」


 ティアの声もわずかに震える。


 ガッドでさえ、冷や汗を浮かべていた。


 ザジは血の付いた曲刀を軽く振り、吐き捨てるように言う。


「これから面白いところだってのに、邪魔するんじゃねぇよ」


 その目は完全に味方にも敵意を向けていた。


 

 そして。



 曲刀の先を、まっすぐガルウィンへ向ける。


「俺の名はザイル」



 口の端を吊り上げて笑う。


「お前を殺す者だ」



 ガルウィンは静かに剣を構え直した。


「……名前は、もう聞いた」



 ザイルが走る。


 同時に、周囲の暗殺者たちも動こうとする。



「こいつの狙いは私だ!」


 ガルウィンが叫ぶ。


「他のやつらは任せていいか!?」


「了解だ!」


 ガッドが吠える。


「任せて!」


 ティアが槍を構える。


「……やるしかないね」


 エルも杖を掲げた。


 

 その直前。


 

 ガルウィンはティアにだけ聞こえるように言った。


「ティア。危なくなったら、すぐ逃げろ」


 ティアは、ほんの一瞬だけ目を細め――


「ガルウィンさんが勝ったらね」


 そう返した。


「……」


 ガルウィンは小さく微笑む。


 ガルウィンは鋭くザイルを見る。


 そして、迫るザイルを迎え撃つため地を蹴った。

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