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第十三公主ベアトリーチェの奇跡~魔女の嫁入り転生譚外伝~  作者: 坂崎文明


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第三話 天才軍師ルイ・パルス

「飛ぶよ。パミール、飛翔魔法、お願い!」


 べアトリーチェは公主軍副官パミール・フェノンに命令した。

 突如、公主軍一万騎は空に舞い上がっていく。


「天才軍師殿は、非常時を除いて『飛翔魔法使用禁止』と言ってましたが。使用すれば対策されるので切り札として秘匿(ひとく)したいのでしょうね。そもそも、公主軍が敵の主力の北狼国の重騎兵軍に突撃するとか、当初の作戦にありましたっけ?」


 副官パミール・フェノンは、べアトリーチェの命令に従いながらもぶつぶつと忠告と皮肉を混ぜた。

 栗色の髪に漆黒の瞳に彫の深い顔立ちで、軍馬にまたがる姿は実に精悍(せいかん)である。

 フェノン家は草原の民の出身だが、央国(オウコク)に古くから仕える忠臣であり、古代のレムリア、ムーア、アストランの三王国時代のムーア王国魔道騎士団にいた同姓同名の名将と同じ名前である。

 騎馬戦闘において輩出した資質を持っている。


「公主軍が北狼国の重騎兵軍に突撃して孤立無援になってるというこの状況こそ、非常時でしょう。それに、剣聖も重騎兵軍の手ごわさに飛翔魔法使わずにおれないでしょう。そもそも、天才軍師殿の作戦は手堅過ぎるのよ。確かに、戦力差ありすぎるので、カナール渓谷の永年、私が仕掛けている無数の落とし穴とか使うのは悪くないけど、一応、相手が思いもしない奇襲を仕掛けるのが戦いの醍醐味じゃない。そう思わない?」


 黒髪と(つぶ)らな瞳で、無茶苦茶な事を言い出す公主殿下の主張には慣れていたはずだが、パミールも流石に開いた口が塞がらない驚愕の主張である。


「あの、公主殿下殿。確かにこの作戦だと、剣聖殿は鬼の形相で公主殿下救出のため、北狼国の重騎兵軍に突撃するでしょうし、天才軍師殿もレン・ロンからの急報で涙目でこちらに軍馬を走らせている頃でしょう。でも、どう言い訳するんですか?」


 べアトリーチェは天使というか、悪魔のようににやりと微笑んだ。


「パミールちゃん、これこそ、背水の陣よ。もう、我が軍は敵の大将軍ログハンを倒すしかないのよ。空から敵本陣を急襲するとか、絵になると思わない?」


「たぶん、伝説になるでしょうね」


 パミールはもう反論をすっかり諦めた。

 べアトリーチェの聖天剣技<流星乱舞(メテオ・ドライブ)>により北狼国の重騎兵軍後衛の二十万騎が消滅し、瞬間的に、大将軍ログハンいる本陣が丸裸になっていた。

 このタイミングで背後から襲われると、重騎兵軍の誰も予想してなかっただろう。

 剣聖軍の絶大な(おとり)効果もある。

 大将軍ログハン近衛軍約千騎に対して、公主軍一万騎という数的優位が瞬間的に発生している。

 あとは時間との勝負である。

 ちょうど、そのタイミングで公主軍一万騎は着地して、全騎聖刀抜刀し、聖刀剣技<音速突撃(ソニック・チャージ)>で重騎兵軍本陣に突撃した。




            †




「レン・ロン、公主殿下は重騎兵軍本陣に突撃すると言ってたのか?」


 天才軍師ルイ・パルスは予想通り少し涙目になって軍馬を走らせながら、女忍びで配下の筆頭諜報部隊長のレン・ロンに事情を訊いた。

 国境警備軍の騎馬隊十万騎を率いて戦場に急行していた。


「公主殿下は工兵に命じて、北狼国の重騎兵軍の背後に抜けられる地下トンネルを秘かに掘っていて、剣聖軍の突撃に合わせて雲隠れしてトンネルをひた走り、重騎兵軍背後から聖天剣技<流星乱舞(メテオ・ドライブ)>をぶっ放して、大将軍ログハン敵本陣を丸裸にして、瞬間的に数的優位を作り出し、飛翔魔法で空から急襲して、聖刀剣技<音速突撃(ソニック・チャージ)>で突撃するからと言ってました」


 永年、ルイ・パルスは公主殿下との付き合いで彼女の過激な性格を理解しているつもりだった。

 だが、いつも彼女の行動はその予想を上回る。


「……それにしても、見事な奇襲作戦だ。これに比べたら、私の立てた作戦は手堅すぎるが、公主殿下がここまで危険を冒すのは何故なんだろう」


 天才軍師はため息をついた。

 瞬間的に数的優位を作り出せば、兵の総数は関係なくなるし、百戦百勝が現実になる。

 そのためには、兵の機動力、速度が肝要であり、第十三公主近衛軍の<光速軽騎兵>は最適解かもしれない。

 それに魔法や魔導を加えれば、古代の三王国時代のムーア王国魔道騎士団を再現できるかもしれない。

 後に、唯一無二の天才軍師と呼ばれる彼の才能はべアトリーチェに刺激を受けて開花する事になる。

 剣聖もまた、公主殿下を襲う暗殺者たちとの戦闘により、何度も毒などで命を落としかけるが、その剣技は神域に達していく。


「性格ですね。もう生まれついた天性のようなものです。あの方はそういう奇想天外なことを考えるのが好きなんです。もう、一生、治らない不治の病のような物です」


 レン・ロンは天才軍師を慰めるように言った。


「そうか……。それなら、私はそれについていくしかないか。私が公主殿下の盾となり、剣聖が公主殿下の剣となり、お守りするしかないか」


 天才軍師は唇をかみしめて、顔を上げて、軍馬をひた走らせながら新たな決意をした。

 もう、そのエメラルドグリーンの神秘的な瞳には涙は無かった。

 そして、その精緻な頭脳で作戦を練り直していった。

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