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凋落の怨嗟 ⑧

「かなり早朝に来たんだけど、人影が見えるね。向こうも随分早起きなようで」


サキユの背に乗りながら元フウシャ村上空に近づいた。

流石に子供とは言え人影が上に在れば気付かれるかもしれないので慎重に近づいたけど、あまり気にしては居なさそう。


「魔導士が居るかどうか、この距離じゃ分からないな・・・仕方がない。エリア姉様達はもう準備出来てるみたいだし、すぐに始めようか」


俺の仕事は根城を消すこと。人は無視して基本的には家屋の破壊を優先する。

ついでに敵のあぶり出しと物資の破壊。


「木造の家屋しか無いし、良く燃えそうだ」


森なども近いからあまり火は使いたくも無いけど、もっとも被害が出そうなのも火なので仕方ない。


「始めるよ、サキユ」


「はい!」


元フウシャ村に、魔法の火が、降り注ぐ。





-----∇∇∇-----





「来たね、クロアの合図だ。全員準備は良いかい!」


「「はいっ!」」


「エリアも、大丈夫かい」


「当たり前よ!私達を襲いに来たことを後悔させるわ!」


「いいねぇ、その意気だ!」


ギガムとエリアは数人の兵と共に待機している。

クロアの攻撃が終わり次第、村へと強襲する予定だ。


「しっかし、ほんとに怖い子だね。あの歳で村を焼き払うかい普通」


ギガムが感心していると、エリアが話す。


「・・・昔からずっと、あいつは気づいたらなんでも出来てたの。知らないうちに魔法を扱えて、知らないうちに畑なんかを改良して、私よりずっと早く文字なんかも覚えて、だからちょっと悔しいけど、あいつは私達イストフィース家の自慢よ!」


「アンタらは、家族が大好きなんだね。このご時世では珍しい家族だよ、ほんとに」


クロアとサキユがこちらに手を振っているのが見えた。


「終わったみたいだね、全員行くよ!!」


「「おおっ!」」


燃え盛る村へと、駆けて行く。





-----∇∇∇-----





「敵襲です、空から魔法が降って来てますね。どうしますか団長」


傭兵団のカルガンと呼ばれた男が団長らしき者へ報告に来た。


「おいおい、予定より早いじゃねぇか。敵は何人だ?」


「今見えるのは一人・・・いや正式には二人です。空から魔法を降らせています」


「二人ぃ?しかも魔法ってことは例の子供と・・・空って事はハーピィと一緒か」


「そうみたいですね、どうします?皆結構浮足立ってますけど」


「魔法には魔法だ、こっちの魔導士にも反撃させておけ。お嬢さんはなんか言ってるのか?」


「何も、なんなら話も聞かずに武器を取りに行っちゃいましたよ」


「まぁ、お嬢さんにとっては目標が来てくれたって事だからな。しゃぁねぇな、俺達も取り合えず反撃だ。もう一つの部隊はどうしてる?」


「すでに出撃してます。こちらに主力が居た場合何とかなるでしょうけど、どうですかね」


「こっちに主力が全員来てたら寧ろ勝ちだろ。そうなりゃ俺達が危ないがな」


「一応逃げ道は確保しておきますか?」


「命あっての物種だからな、そうしたいのは山々だが・・・あのお嬢さんが逃げるなんてしないだろうからな。となると俺達は勝つしかない」


「こんな事なら前の仕事でやめておくべきだったか・・・」


「連れねぇことを言うなよ、勝って金貰って上等な酒でも飲もうぜ」


「飲める身体で居れる事を願っておきます」


二人の男が傭兵団に声を上げる。


「おめぇら!!見ての通り敵だ、反撃するぞ!」


焼けている地面を剣で消しながら、兵士の声がする方向に向かって行く。





-----∇∇∇-----





「随分ともろいね・・・こいつらほんとに統率が取れているのかい」


ギガムとエリアが蹴散らしていると、そんな疑問が湧いてきた。


「この程度にグラハ達が後れを取ったと思わないね、それに・・・」


武器も含めてなんだか貧相だ。とてもじゃないがクロスボウを持っている様な者達に見えない。


「確かに、何だか変。戦いに慣れてる人じゃない」


エリアも違和感しか無かった。まるで戦いを知らない素人が武器を持たせてもらって、無理やり戦っている感覚。


「そりゃ、そいつらは俺の部下じゃないからな」


声と同時に二人、男がこちらに向かってくる。

剣と剣が、ぶつかり合う。


「ん?子供で女?つーことはお前さんが長女か次女か」


「なにおじさん、私のファンなの?それとも変態?」


「はっ!生意気な娘だ!」


「っ!?」


男の纏っていた白い外套が光り出し、エリアの身体強化が、消える。

男の足がエリアを吹き飛ばす。


「エリア!」


「おや?貴方は情報に在りませんでしたね」


ギガムにカルガンが襲い掛かる。


「え」


「何だいアンタ、軽いね?」


「ぐっ!」


逆にカルガンが吹き飛ばされる。


「おいおい!女だからって手加減したのかカルガン・・・なーんて、俺と同じ体格の女なんて初めて見たぜ」


「エリアを軽く吹き飛ばすなんて、やるねアンタ。それともその外套に何かタネがあるのかい」


「さてね、やってみれば分かるんじゃねぇか?」


「私の名前がギガム、死ぬ前に名乗る事を許すよ」


「お優しいね、俺はジルガ、この傭兵団の団長だ!」


二人の剣がぶつかり合う、それと同時にジルガはニヤッと笑う。


「身体強化なら俺には・・・!」


そこで気付く、目の前のこの女の異質さに。


「身体強化が、なんだって?」


「ぐっ!アンタ例外者(エクセプション)か!?」


「もしかして、私と相性悪かったかい!!」


ギガムの剣がジルガに迫る。


「ちぃ!」


「やるね!」


距離をとるジルガ、この女にはこの魔道具が意味をなさないと理解する。


「大方、魔力をどうこうする外套なんだろそれ。でも悪いね、生まれてからそんな魔力(もの)に頼った事が無くてね!」


「こりゃ誤算だな。アンタみたいなのがあの領に居たとはな!」





「団長も楽しんじゃって・・・どうします?僕はこのまま眺めてても良いんですけど?」


「ふざけんじゃないわよ」


エリアとカルガンが構えている。


「子供な上に女の子・・・最悪だ」


「何、アンタ。女に手を上げないとは言う情けないタイプ?」


「子供にまで情けないと言われるとは・・・はぁ。割と普通だと思っているんですけどね。好き好んで子供も殺したがる奴なんて異常者ですよ」


やれやれと、ため息をつくカルガン。


「でも」


「!?」


エリアが構え直す、わかる。

目の前のこの男は決して弱くないと。


「僕も生きるために、戦うしかないなら戦いますよ。相手が子供であってもね」


戦火は広がっていく。





-----∇∇∇-----





「ほとんど燃えたか、一体俺達は戻って報告に行こうか」


「はい!・・・でも援護しなくて大丈夫でしょうか?」


「まぁ味方を巻き込むかも知れないからね、広範囲の攻撃は出来ないよ。敵の魔導士も結構潰せたし、一旦俺達は状況の報告に」


瞬間、クロアの目の端に何かが写る。


「避けろサキユ!!」


「え」


サキユの身体を無理やり引っ張る。が、サキユの足に攻撃が掠った。


「痛った!!」


「サキユ!」


「だい、じょぶです!」


高度が少し落ちたが何とか維持する。


「今のは・・・!」


クロスボウか何かと思ったが、明らかにそんな大きさでは無い。飛んできたのは槍だった。


「っ!?サキユ動き続けろ!」


「は、い!!」


下から槍が数本立て続けに飛んでくる。


「サキユ、一人で戻れ。下の奴を処理してくる」


「でも!クロア様、この高さじゃ!」


「大丈夫、あの魔法を使うから。あの時見ただろ?」


「でも・・・」


「命令だ、一人で戻って父上達に状況の報告、そして怪我の治療をしてこい」


「っ・・・!」


「わかったな?」


「・・・はい!」


その言葉を聞いて、サキユの背から落ちる。


「クロア様、絶対に怪我しないで下さい!」


サキユの声が聞こえた。


「うお」


とんでもない速度で落ちる。これが空中からの落下か。ぶっつけ本番だが何とかして見せる・・・!



グラビティ(闇属性魔法)



地面の近くで無理やり身体を引っ張る、結構きつい・・・!

だけど。


「ふぅ、何とかなったな」


無事着地、村から大分離れているけど、どこから槍が飛んできていたかは分かっている。

そしてすでに、その張本人が目の前まで来ていた。


「お前、が・・・!」


目の前の少女は明らかな殺意を持って、こちらを見ていた。


「恨まれる筋合いが無いとは言えないけど、君が誰か聞いても許される?」


「・・・子供とは思えない魔力、ムカつくほど綺麗な翡翠色の目、キメラ花のような色をした髪色・・・お前が、イストフィース・リーゼ・クロアか!!!」


「その通りだね。それで、君は?」


「ザーロ・ドルモ・バーナ、お前らイストフィース家を殺す為に私はここに来た!!!!」


やはりか、と思うクロア。


「なる程、それは、恨まれてもしょうがないな」


「ここで!死ね!!」



激情が、クロアへと襲い掛かる。


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