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凋落の怨嗟 ⑥

「これで四度目か、明らかに多いですね」


「少なくとも、自然に起きたと言うには多すぎるな」


クロアとウィンが魔物の討伐報告を聞いている。

普段であれば、一日に多くて二回、少なければ何も起きない事もある。

開拓作業をしている時であれば必然的に多くなるので、あくまで普段通りの仕事をしている時ではあるが。


「それに凶暴化している魔物も報告されている。クロアの言っていた様に何者かが裏で手を引いているのは明らかだろうな」


「それについて、少し報告があります」


インチェンス侯爵のおかげで、相手の情報を掴めた。


「ウーロアロ伯爵が、やはり活発に動いているようです」


「西の方だったか、しかし何故我々に目を付けたのだろうな」


「我々が名声を得ているのが気に食わないのでは?」


「・・・なるほど。久しくなかったが、厄介な事だな」


元々何かとやっかみを受けていた父上は、この頃安定していた。

カランクレス公爵との共闘や、俺がこの頃インチェンス侯爵に気に入られているとの噂が流れているらしく、そのおかげなのかは分からないがあまり邪魔されずに過ごしていた。

しかしここに来てかなり直接的な妨害である。ただの妨害であれば良かっただろうか。


「このままでは被害が出るのは時間の問題だな。今は何とか返り討ちに出来ているが」


「確たる証拠が欲しいですね、それか王家に直接報告した方がよろしいかと」


「王家への報告も悪く無いかも知れないが、何の対価も無しに願いを聞いてはくれないだろう。我々に今渡せる物は特にないからな・・・」


開拓領らしく、新たな鉱山なり発見できれば対価としては申し分ないかも知れないが。

残念ながら今はそれが出来ないので困っているのだ。


「クロアには悪いが、お前にも巡回に加わってもらう」


「構いませんよ、その為の模擬戦でもあったのでしょう?」


あれから色んな人に魔法を教えて欲しいと頼まれる様になった。

俺はもっと怖がられるとかと思ったりもしたのだが、意外にも皆あっさりと受け入れてくれた。

子供達からは何なら信仰されているようにも感じた。


「私も参加しよう、このままではヴォルフォ達が夜も眠れなくなってしまう」


そんな相談をしていた時だった。


「クロア様ー!!」


サキユの大声が窓から聞こえる、と言う事は。


「どうしたの、サキユ」


窓を開けてサキユに尋ねる。


「トント達がやられちゃったの!」


「!?」


俺と父上はサキユの案内された場所へ急ぐ。





-----∇∇∇-----





「道を開けてくれ!」


案内された場所に少し人だかりが出来ていた。


「隊長!坊ちゃんも!」


ヴォルフォが先に来ていた。

人だかりを抜けるとユリズさんもすでに治療を初めてくれていた。


「皆、無事か」


「何とか犠牲者は居ません、けれど今回のは明らかな敵対行為でした」


この部隊の指揮を執っていたグラハが報告してくれる。


「我々は人に襲われました、しかも魔物との戦闘中にです」


「つまり、意図的に狙われたか」


「恐らくは」


領地の周りを巡回していたグラハ達。近くの魔物が興奮状態だったらしく、討伐に打って出た所に人の集団と挟み撃ちされる形での戦闘になったらしい。


「数人取り逃してしまい申し訳ございません。奴らは統率が取れているようでした」


「いや、皆無事だったのだ。良く帰って来てくれた」

「敵の特徴などはあったか?」


「少なくとも魔導士はおりませんでしたね。剣を扱う者がほとんどでした、しかしこんな物を使ってきて焦りましたね」


そう言って、グラハが見せてくれたのはクロスボウ。


「また高価な物が出てきましたね」


「その話は保留にしよう。怪我人をまずは運ぶぞ」


「「はっ!」」


全員で怪我人を移動させ、ユリズさんと護衛としてヴォルフォがそのまま診てくれる事になった。


「さて、では聞かせてくれ」


「はい。敵の数は七人、剣士が五人にこのクロスボウを使うのが二人でした」


「クロスボウを二丁も、随分と羽振りが良いな」


三人で話していると、一人の女性がこちらに来ていた。


「私も混ぜてもらって良いかい」


「教官」


ギガムさんが来ていた。


「グラハからちょっとだけ話を聞いてね。少しだけ探索に出てみたんだが・・・」

「明らかに人が居るね、しかも結構な数だ。どこかに根城があると思った方が良いね」


「ありがとうございます。しかしそう言うのは事前に報告して頂きたいのですが・・・」


「悪かったね、でも教えていただろう?戦いで時間とは大事なんだよ」


「分かっています。それに教官なら見つかる事もないでしょう」


それは正しい。例外者(エクセプション)の特筆するべき強みだ。


「しっかし懐かしいね。クロスボウなんて久々に見たよ」


魔法が日常のこの国にとって、クロスボウとは高価なだけの武器として評価されている。

近距離ではあまり使い物にならず、かといって遠距離からの攻撃なら魔法の方が強力だ。弓と比べると連射力が劣るうえに、矢に魔力を纏わせて放つ事も出来るので、威力も弓より低い場合が多い。

クロスボウに魔力を込めても装填された矢まで魔力が届きずらく、ほとんど意味が無い。

その為、威力でも劣り、変えもきかないくせに弓より遥かに製作が難しく高価になる事が多いので好んで使う者は少ない。

しかし俺はある一点に置いてクロスボウは非常に厄介な武器だと思っている。


「こんな物を盗賊が持っているとは思えませんね、明らかに誰かからの刺客ですね」


「そうだろうねぇ。しかも結構な人数だ、何したんだいウィン?」


「私的には何かしたつもりはありません」


「じゃぁクロアか」


「・・・否定はしません。事実心当たりが無くも無いので」


「えぇ・・・ほんとかい?」


「ですがあれはクロア様は悪く無いかと」


「あとで教官にもお話しますよ。我が息子の容赦のなさをね」


「それは楽しみだけど、これからどうする気だい?」


「まずは敵を捜索しよう、後手に回ってばかりでは被害が増す一方だ」


「俺も賛成ですね、こんな物まで使う辺り奇襲されそうですから」


俺が思うクロスボウの強みはその精密性と静音性。

実際クロスボウの威力は弱くはない、が魔力循環を体得し身体強化を行っている者には少し弱いだろう。

だからと言って一切ダメージが無いわけでは無い。その上身体強化をしていなかった場合は致命傷にだってなるだろう。

暗殺するにはこれ以上の武器は無いと思う。

何より武器としての扱いやすさが一番の強みだと言えるだろう。誰が使っても同じ威力が出るのだから。

剣は心得が無ければ、弓は弦を引く力が無ければ、魔法は修練をしなければ扱いが難しい。

しかしクロスボウは、心得が無くとも、力が無くとも、魔力が無くとも。

最悪の例えかも知れないが、子供が使っても人を殺せるのだ。


「暗器として使われたら正直たまったもんじゃないですから。速めに手を打つ必要がありそうですね」


「怖い事を言うねクロア。でもその考えは正しいね、私もこれを暗殺に使うのが一番強いと思うね」


「部隊の編成をする、ヴォルフォとディンも集めるとしよう」


「私は一度住民への勧告をしに行きます。動けますのでこれぐらいはさせてください」


「なら私はもう一回探してくるかね。クロア、あのハーピィの娘貸してくれないかい?」


「サキユですか、空から偵察するのは現状危険では?」


空中には撃ちずらいとは言え、クロスボウを持っているなら良い的にしかならないだろう。


「いや、単純に森や道の案内が一人欲しくてね。私はまだまだこの地に慣れていないからね」


「そういう事でしたらまぁ、無事に帰して下さいね?」


「分かってるよ、態度を見ればクロアが大事にしているのは分かるからね」


「茶化さないで下さい。サキユにも伝えておきます」

「俺は一度ユリズさん達の所に戻ります。兵士の皆にも、もう一度状況の確認と今後説明をしてきます」


「では各自行動を開始しよう。よろしく頼む!」


父上の一声で各々が動く。

イストフィース家が何をもって貴族になったのか、相手に教えるとしよう。


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