第862話 リッコにとって永遠の後始末
「どうやら敵が片付いたようですね」
映像では地平線が明るくなってきている、
モグナミさん言葉通り、敵はもう居ないみたい、
そしてデレスちゃんは巨女、巨悪女ニィナに崖の上へ誘導される。
(あれっ、私の出番は?!)
颯爽と私が駆けつけて、
デレスちゃんを助け出すシナリオは、
いったいどこへ? ていうかあの甘い雰囲気は何なのよ!!
「……ねえ、私って『デレスフライヤーズ』の、リーダーよね?」
その問いに、誰も答えてくれない。
「ねえフラウ」「……」
「ミジューキ」「今って、どうなのかな」
「あの、その、ハービィ」「冷静に考えてよ、奴隷と奴隷じゃないのが一緒のパーティーに居て、どうなるか」
……と、いうことは。
「それじゃあ」「そもそもデレスが、ううん、デレスさんが居ないのにデレスフライヤーズって、
永遠に十字架を背負って生きていくってことだよね」「い、いつかデレスちゃんが戻って来た時のために」
「いまだにそんなこと思っているの、リッコだけだよ」「でも本当に嫌なら断っているは」「もうそれすら嫌なんじゃない?」
目の前の映像では、
朝日が昇ろうとしている……
そ、そんな、あのニィナとかいう悪女が、デレスちゃんと、見つめ合って……!!
(あれは、デレスちゃんと私がするはずだった、『朝日を迎えての幸せなキス』では!!)
そう、全てを終えてのハッピーエンド、
デレスちゃんを生涯ウブな身体にするための、
あれこれが恋愛の最終目的地だって擦り込んだ……!!
「ど、どうしてあの女なのよ、ねえ?!」
それに答えてくれるのは、モグナミさんだった。
「私もかつて、本気で愛した幼馴染がいました、
でもその彼を愛するライバルが多すぎて、そして彼は、
たった一人しか選ばなかった……八人いえ九人いえ十人も選んだデレスさんは立派ですよ」
モグナミさんの視線を見ると、
ドワーフの姫マリウが大きく頷いている。
「だったら私も」「それは永遠に無いですね、今までしてきた事、
デレスさんへの酷い仕打ち、裏切り、罪、それを償うために貴女は生かされているのです」
「そ、そんなあ」「貴女に自由はもう無いでしょう、さんざん好き放題してきたのですから、残りの人生は、後始末ですね」
朝日が昇る、
あっ、デレスちゃんが上になって、
あの女に、あの悪女に、自らキスを……!!
(こんな悪夢、見たくない!!)
でも、でもなぜか、
目を逸らす事ができない、
これを見せられるのが、私の……罰?!
「あぁ、デレスちゃんが、汚されていく……」
「汚れているのは貴女ですよ、汚らわしいのは貴女です」
「だってそんな、私はデレスちゃんの純潔を守るため」「まだそのようなことを、本当に醜い……!!」
あぁ、涙が溢れて止まらない、
私は、私はデレスちゃんを、貰ったデレスちゃんを、
婚約者のデレスちゃんを、好きな様に、私が本当に好きなようにしたかっただけなのに!!!
「あの女だって、欲望のまま、デレスちゃんを!!」
「そうでしょうね、でも、デレスさんも欲望のままに」
「嘘よ!」「あの幸せそうな表情が全てです、愛し合っているからこそです」
必死に涙を腕でぬぐう私、
私だって、デレスちゃんと、
あんなに愛し合っていたのにい!!
「デレスちゃんは私を好きで、だから、私は」
「いえ、デレスさんが今、愛しているのはご覧の通り」
「じゃあなんであんなに全て言う事を、あれだけ躾けてあげたのにっ!!」
本当に心の底から幸せそうなデレスちゃん、
あんな表情、昔から、今まで一度も見た事ない、
もしあれが、あれが本当に『幸せ』であるなら、私は、私は……!!!
(どうしたら……ねえ、どうしたらいいの?!)
今からでも、
私がすべき行動は……!!
「わかったわ、私にここから、デレスちゃんを取り戻せと」「無理ですね」
「じゃあどうしたらいいのよ」「デレスさんに詫び続けて、本当に反省して下さい、
自分の罪を本当の意味で理解する所ですね、感情で生きてきた貴女には難しいことでしょうが」
ここでハービィがなぜか笑っている。
「無理だね、だってそういう人間なんだもん、
最終的に本当に心の底から謝るとか想像つかないね、
だって、女としてどう見てもクズだもん、それに従っていたボクたちも……だけど」
その言葉にミジューキも泣いている。
「デレスちゃんごめんなさい、幸せになって下さい」
そしてフラウも。
「途中で気付くべきだったわ、「
でも、だからこそあえて言わせて頂戴、
リッコ、あなたのせいよ、私のせいであり、リッコのせいよ!!」
全身の力が抜け、
四つん這いになる私、
眼鏡に涙が溜まる……ううぅ……
「ねえデレスちゃん、どうして『間違ってる』って、途中で教えてくれなかったの……??」
「それをできなきさせたのも、また貴女でしょう」「モグナミさん……」「戻ってきたら結婚式だそうですよ」
「ウチの、実家で」「ええ、またそこで惨めな、情けない思いをするでしょう、覚悟して下さい」「そんな、そんなぁ」
こうして救いのない、
あらゆる意味で救いようのないリッコは、
寿命まで『後始末』という名の地獄を味わい続けることとなるのであった。
――そして、十年後。
ごめんなさい、リッコの後日談を書いてシメたいので、
もう1話だけ続けさせていただきます、申し訳ありません。
ちなみに連載中作品『ハーレム崩壊、十二年後』も、いよいよ最終章に突入しますので是非。




