第856話 リッコ回想 あのときアイツに騙されさえしなければ 後編
その日、いつも通りの私に、突然の報せが届いた。
「ええっ、クロウ様が、捕まった?!」
「そうよリッコ、冒険者ギルドによると、勇者じゃなかったって」
「嘘?! だって勇者剣を」「同じパーティーとして話を聞きたいから、すぐ来いって」
フラウに言われてアジトを出ると、
すでに衛兵が待っていた、しかもフル装備で。
「デレスフライヤーズのリーダー、リッコさんですね?」
「そ、そうですけれども」「婚約者の方が勇者を騙っていました」
「私には、最初から勇者って」「彼の名前は」「クロウ=イータッカですが」
私は思わず眼鏡がずれた。
「いえ、彼の本当の名前です」「えっ、あるんですか?!」
「そのあたりもお聞きしたいので、皆さん一緒に」「は、はい」
「長くなると思うので、他の方やペット、ティムモンスターなどは」「後はミジューキとハービィが」
こうして冒険者ギルドから聞かされた話は、
信じられない、とんでもないものだったわ……ヤツは最初から勇者じゃなかった、
勇者クロウを殺し、勇者剣プライドソードと冒険者カードを奪って成りすましていた。
(つまり私は、いえ私達は、だまされていた……!!)
デレスちゃんを追放してから勇者から受けるはずの恩恵スキル、
能力向上を一切感じられなくなった、そういう勇者も居るって言われたけど、
それ以降はクロウは完全に暴君と化した、手始めにハービィが大切にしていたケルピーを売ってしまった。
(お金は全部、アイツが持って行った……)
その後も詐欺まがいのことや、
冒険者としては相当不味いことを命令されてやった、
そうやっていれば、デレスちゃんが慌てて戻ってくるからと……
(結局、デレスちゃんは戻ってこなかった)
そして働きに働かされて、
心身ともに疲弊しきったところで、
勇者クロウが実は偽物で、嫌われ者ポーターのジャンゴであったことが判明した。
(何もかも証言したわ、でも結局、アイツとは会わず終い……)
それどころか仲間だったことにされた私達に、
賠償請求が送られてきた、同じパーティーだったというだけで共犯扱い、
確かに命令には従ったわよ、もうそうするしかなかった、他に方法は無かったから!!
(私達も一時逮捕され、懲罰クエストを受ける条件で何とか解放されたわ)
ジャンゴに渡していたお金は全て浪費されていた、
デレスちゃんを探すお金、結婚後の運用資金、冒険者ギルドへの裏金、
様々な理由で私から、私達から搾取していたお金はヤツの快楽に使われていた。
(何よ、私達、完全に被害者じゃない!!)
末期はデレスちゃんの名前を出すだけで怒り狂っていた、
冒険者ギルドがクロウ本人を呼んでいると言っても私になんとかしろと、
私が頭に来ると、いつもアイツは……クロウは、ベッドで、いえジャンゴね。
(そしてやっと、ようやく会えたと思ったら……遺骨だった)
受け取った外で、
みんなで地面にばらまいて、
踏みつけてやったわ、涙が止まらなかった……
(そこから後は、デレスちゃんを探そうと思ったわ)
懲罰クエストも終わり、
何とかお金を捻出して、
冒険者ギルド経由でデレスちゃんを呼びだそうとした。
(そう、『アヤマラセテ』の言葉とともに)
この言葉だけでデレスちゃんは来てくれるはず、
会いさえすれば謝らなくても、その瞬間にまた昔の、
デレスちゃんとこの私リッコとの関係に戻るはず、そう信じていた。
(なのに、なのに……あの悪女に、たぶらかされていたなんて!!!)
ここからが私達の、
デレスちゃんを取り戻す物語、
そうなるはずだったのに……だったのにい! きいいいいいいいいいい!!!
(何よあのドワーフ! 何よ決闘なんて! 私が持ちかけたのだけれども! デレスちゃんは、デレスちゃんは私の……!!!)
回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回回
……と回想をしているうちに、
また画面の前に人が集まってきたわ、
どうやら目的のダンジョンに到着したみたい。
(高い山、その頂上に入口があるわ)
そこに降りたつ私のデレスちゃん。
あぁ、あぁどうか、どうか神様お願い、
私の本当の、ほんっっっとうの婚約者のデレスちゃんが、ピンチになって私が助ける展開になりますように!!
(そのあとは、私がめいっぱい、愛してあげなくっちゃ!!)




