バニラと楽しいお菓子作り
「それでは今日の話し合いは終わりです! 引き続き頑張りましょう!!」
「はい、ありがとうございました!」
講義終了の鐘の音に合わせてわたしがそう言うと、皆は片付けを始める。ちらりとレオナの方を見ると、いまだに他の学生と話をしており中々忙しそうだ。
「レオナ様、ここの飾り付けはどうしましょう?」
「そうですわね……もう少し細かい部分まで考えてみませんこと? まだ時間はありますもの、しっかり考えてより良い出し物を作りますわよ!」
「はい!」
レオナは流れる髪をかき上げながら机の上に広げられた設計図を見つめている。しっかり指揮を執れているので、やはりレオナを中心にしたのは間違いなかったようだ。
「レオナはしっかりしていますね!」
「ああ、魔獣が絡まなければレオナは優秀だ」
「クリスティア殿下、少しよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫ですよ! どうかしましたか?」
スピネルと一緒に片付けながらレオナのことを褒めていると、バニラに声をかけられた。
「放課後のお菓子作りについてですが、昼食を終えたら調理室まで来てもらえますか?」
「はい、分かりました! 準備などでお手伝い出来ることはありますか?」
「いえ。準備は私がしますので、殿下はゆっくりいらしてください」
「分かりました! ありがとうございます!」
どうやらお菓子作りの準備は全てバニラがやってくれるようだ。至れり尽くせりで申し訳ないが、バニラがそう言うのであれば今回は厚意に甘えさせてもらおう。
わたしの言葉を聞いたバニラは頬を緩め、優しい微笑みを浮かべる。
「それではお二人とも、また後ほどお待ちしておりますね」
「はい! 楽しみにしていますね!」
バニラに別れを告げたわたし達は、昼食のため一旦寮へと戻ることにした。今日は研究会を休むことを会長に伝える必要があるので、帰りの会話は自然と会長の話になる。
「会長はちゃんと寮で昼食をとっているでしょうか?」
「この間セレスタ殿下に注意されたばかりだから規則正しく過ごしていると思うが……」
「そうですね……もしいなければ研究室に行ってみましょう!」
会長の暮らしぶりについて二人で話しながら食堂へ入ると、カウンターのところで食事を受け取っている会長の姿を発見した。どうやらわたし達が研究室に向かう必要はなくなったようだ。
わたし達も食事を受け取ると、会長の座っているテーブルへと向かう。
「会長、こんにちは! ご一緒してもよろしいでしょうか?」
「やあ、クリス。もちろん大丈夫だよ。何か用かな?」
「はい、実は――」
今日はバニラとお菓子作りをするため研究会には行けないことを伝えると、会長は快く了承してくれた。ついでに食事をしながら昨日町へ行った話をすると、会長は目を輝かせて聞いてくれた。
「へえ、宝石飴に魔導箱か……そんな面白い物が売ってるなんて知らなかったな。今度私もその魔道具店に行ってみるね」
「はい、是非行ってあげてください! 店主も喜ぶと思います!」
「それじゃあ俺は魔導箱を取ってくるか」
「よろしくお願いします、スピネル!」
先に食事を終えたスピネルは席を立ち、自分の部屋へ魔導箱を取りに戻る。今回会長に貸し出すのはスピネルが購入した二つの魔導箱である。会長はスピネルの帰りが待ち遠しいようで矢継ぎ早に質問を繰り出してきた。
「魔導箱はどうだった? クリスでも難しかったのかな?」
「はい! 小さい方はそこまで難しくはないですが、大きい方は数分かかりました!」
「それなら私でも遊べそうだね。どのくらいで開けられるか楽しみだよ」
「アレキサンダーお兄様より早く開けられるよう頑張ってくださいね!!」
「あはは、流石にそれは無理かな……」
会長と楽しく会話をしていると、両手に魔導箱を持ったスピネルが部屋から戻ってきた。
「お待たせしました、会長」
「お! これが魔導箱だね……!」
スピネルがテーブルの上に魔導箱を置くと、会長は食事もそっちのけで魔導箱を確認し始めてしまった。スピネルはそんな会長の様子を見て、小さく溜息を吐く。
「会長、先に食事を終わらせてください。話はそれからです」
「分かったよ……」
そう言うと会長は素早く食事を終えて食器を片付ける。わたしはまだ食べ終わっていないので、二人が話している間にのんびりと食べることにしよう。
数分後、スピネルの指導を受けた会長が小さな魔導箱を開けられるようになる頃には、わたしの食事もすっかり終わっていた。わたしが食器を片付けてテーブルに戻ると、スピネルと会長が楽しそうに話をしているところだった。
「やった! 出来たよ、スピネル!」
「おめでとうございます、会長」
「あれ? 中に何か入ってるけどこれは……?」
「ああ、それは魔導箱を開けたご褒美の宝石飴になります」
「お、かっこいいことしてくれるねえ。ありがたく頂いておくよ!」
会長は箱の中から宝石飴の包まれた紙を取り出し、包み紙を剥がすと口の中へと放り込んだ。口には出さないが、表情を見るに気に入ってくれたようだ。
「それにしても……小さい魔導箱でも結構難しいね。大きい魔導箱に至っては今日開けられるか分からないくらいだよ」
「そうですね。クリスやアレキサンダー殿下が楽々と開けられたのを見て、俺も頑張らないといけないと思いました」
「楽々ではありませんよ、スピネル! わたしだって頑張ったんですからね!!」
わたしも『精神活性』を強めに発動したおかげで開けることが出来たのだ。決して楽ではなかったことを二人にも伝えておかなければならない。わたしが頬を膨らませて難しかったことを主張すると、スピネルと会長は顔を見合わせて溜息を吐く。
そんなこんなで会長と楽しく話していると約束の時間が近づいて来た。そろそろバニラの元へ向かわなければならない。
わたしとスピネルが立ち上がると、片手に魔導箱を持った会長はひらひらと手を振って送り出してくれた。
「二人はお菓子作り楽しんできてね。研究会のことは気にしないで良いから」
「ありがとうございます、会長。クリスの面倒は俺がしっかり見ておくので安心してください」
「それではまるでわたしが手のかかる子供みたいではないですか!? 撤回してください、スピネル!!」
「はは、二人は仲が良いなあ。それじゃあ私は魔導箱に挑戦してみるね」
難しい顔で魔導箱を触り始めた会長に別れを告げて、わたしとスピネルは講義棟にある調理室へと向かって歩き出した。
「なあ、クリス。機嫌を直してくれよ……」
「ふん、です!」
調理室に向かう道すがらスピネルが話しかけてくるが、わたしは先ほど言われたことをまだ許していない。わたしは手のかかる子供ではないのだ。ぷいっと顔を背けると、スピネルは困った顔で両手に抱えたむーちゃんの機嫌を取るために話しかける。
「なあ、むーちゃんももう少し軽くなっても良いんだぞ? 後で宝石飴やるから……」
「む゛ー!」
わたしをからかった罰として、スピネルには飛行の魔法を応用して重くなったむーちゃんを運んでもらっている。むーちゃんの鳴き声も雰囲気作りのためかいつもより重そうな感じだ。
スピネルを懲らしめるためむーちゃんには少しだけ重くなるように指示してあるが、普段から鍛えているスピネルならそこまでの負担にはならないだろう。罰には軽いかもしれないがわたしが怒っているということを形で示すのが大切なのだ。
「よし、到着だな」
調理室の前まで到着するとスピネルの罰は終了だ。わたしは両手を差し出してむーちゃんを返すようスピネルにお願いする。
「ありがとうございました、スピネル。それではむーちゃんを返してください」
「ああ、いいぞ。だが、その前に……」
スピネルは両手を前に突き出すと、むーちゃんから手を離す。スピネルに抱えられていたむーちゃんは魔法を解除するのが遅れたようで、ズドンという重たい音が響くと同時にむーちゃんの悲鳴も廊下に響く。
「いったーい!!」
「むーちゃん! 凄い音がしましたが大丈夫ですか!?」
「お尻打った……痛いよ~!」
床に激突したむーちゃんはすかさず飛行の魔法を使ってわたしの元へと飛んでくる。軽くなったむーちゃんを両手で受け止め、お尻の辺りを優しく撫でる。しかし、わたしが指示した体重であればここまで強く床にお尻を打ち付けることはなかったはずだ。むーちゃんの身に何が起こったのだろう。
不思議に思ったわたしはむーちゃんに向かって話しかける。
「むーちゃん、一体何があったのですか? わたしはいつもより少しだけ重くするように言いましたよね?」
「分かんない! スピネルが平気そうだったからどんどん重くしていったの!」
「ええ!? そんなことをしてはダメですよ!」
スピネルを見ると平気そうな顔で手を振っているが、むーちゃんの言っていることが正しければかなりの重さになっていたはずだ。わたしは慌ててスピネルの方へ向き直る。
「まさかそんなことになっているとは知らず……大丈夫でしたか?」
「良い訓練になったから気にするな。それより、これでさっきのことは許してくれるよな?」
「むしろわたしが謝らなければなりませんね。すみません、スピネル……」
「気にするな、クリス」
わたしが謝罪をすると、スピネルは笑顔でわたしの頭をくしゃくしゃと撫で回す。
「そんなことよりそろそろ入らないとバニラ達が待ちくたびれてるぞ」
「そうですね、早く入りましょう!」
「お尻が痛いよ~~」
「むーちゃんは少し反省してください!」
自業自得で涙目になっているむーちゃんのお尻をさすりながら調理室へ入ると、お菓子作りを担当している学生達が既に集まっており、わいわいと楽しそうに話していた。
「わあ! 皆、楽しそうですね!」
「そうだな。俺もお菓子作りはあまりやったことがないから楽しみだ」
きょろきょろと周りを見回すと、テーブルの上には様々なお菓子作りの道具が並べられており、お菓子作りへの期待が高まっていく。そんなわたし達に気が付いたのか、バニラがわたしの元へ駆け寄って来た。
「お二人とも、ようこそお越しくださいました」
「お招きいただきありがとうございます、バニラ! 今日はよろしくお願いしますね!!」
「よろしくな、バニラ」
「ええ、殿下もスピネル様もよろしくお願いします。それではお二人ともこちらへいらしてください」
ニコニコと楽しそうなバニラに案内されて奥の方へ進むと、そこには何枚もの綺麗なエプロンが用意されていた。水色、橙、黄緑、枯草色……様々な色や模様のエプロンがあり、ついつい目移りしてしまうのも仕方のないことだろう。
「わあ……可愛いですね!」
「ふふ、ありがとうございます。さあ、どうぞお好きな物をお選びください」
「それじゃあ遠慮なく選ばせてもらうか」
「はい!」
バニラの言葉に従いわたしとスピネルはそれぞれのエプロンを選ぶことにした。わたしの選んだエプロンは薄い水色のもので、ところどころに白い小さな花が刺繍されているのがとても可愛らしい。
「どうですか、スピネル! 可愛いでしょう!!」
エプロンを着用したわたしは枯草色のエプロンを身にまとったスピネルに向けて、くるりと一回転する。可愛らしいエプロンを見せたらスピネルも喜んでくれると思ったのだが、わたしの想像に反してスピネルは苦笑いを浮かべていた。
「確かに可愛いが、後ろの紐が解けてるぞ。ほら、結び直してやるから後ろを向いてくれ」
「そうでしたか? ありがとうございます、スピネル!」
「殿下は髪も後ろでまとめましょう。お菓子作りの邪魔になってしまいますからね」
「分かりました! 紐は上手く結べませんでしたが、髪なら自分で結べます!」
スピネルにエプロンの紐を結んでもらい、髪を後ろで一つ結びにしたらお菓子作りの準備は完了だ。エプロンを着用したわたしがバニラの方へ目を向けると、彼女はニコニコと微笑みを浮かべて楽しそうにしている。
「それではそろそろ始めましょうか。殿下方はあちらのテーブルへお願いします」
「分かりました! むーちゃんはこちらで待っていてくださいね!」
むーちゃんにうろちょろされるとお菓子作りの邪魔になってしまう。そのため今日はむーちゃんもここで待機してもらうことにした。
「えー……」
いつもは元気なむーちゃんも先ほど床に思い切りぶつけたお尻が痛むようでしょんぼりしている。自業自得とはいえ流石に可哀そうになってきたので、わたしは頭を撫でながらむーちゃんと約束をする。
「良い子で待っていたら美味しいお菓子をあげますよ!」
「本当!? それならここで待ってる!」
わたしの言葉を聞いたむーちゃんは指示された椅子にちょこんと座ってくれた。現金なものだが、むーちゃんのためにも美味しいお菓子を作らなければ。
「お待たせしました、スピネル!」
「ああ、むーちゃんは大丈夫そうか?」
「少しお尻が痛むようですが、大丈夫だと思います!」
「そうか……それじゃあ向かうとするか」
バニラに指定されたテーブルに到着すると、卵にバター、小麦粉や砂糖、追加で入れるためのチョコレートや木の実などの材料が並んでいた。他にお菓子作りの道具も揃っており、後はお菓子を作るだけという状態だ。教室内を見回すと他のテーブルも同じように準備されていたので、きっと先に来たバニラ達が用意してくれたのだろう。
「これは全部バニラ達が準備してくれたのでしょうか……?」
「恐らくそうなんだろう。バニラには今度礼をした方が良いかもな」
「そうですね! 何か考えておきましょう!」
バニラへの感謝の気持ちをどのように伝えれば良いかスピネルに相談していると、調理室の前方からパンと軽快な音が聞こえてきた。どうやら教壇に立ったバニラが両手を打ち鳴らしたようで、わたし達は慌ててそちらに顔を向ける。
「皆様、お集まりいただきありがとうございます」
バニラはいつものように微笑むと、良く通る声で部屋にいる全員に向けて話しかける。
「初めて参加する方もいらっしゃいますが、大魔法祭に向けてお菓子作りの練習頑張りましょうね」
「はい! よろしくお願いします、バニラ様!」
バニラはここ最近お菓子作りに興味のある学生をまとめてくれていたので、他の学生もバニラの言うことはきちんと聞いているようだ。学生達の元気な返事を聞いたバニラはニコニコと微笑みながら話を続ける。
「早速ですがお菓子の作り方を説明していきますね。本日作るお菓子はクッキーです」
バニラが作り方を説明し始めると、皆が彼女の言葉に耳を傾ける。クッキーは以前にもスピネルやセレスタお姉様と一緒に作ったことがあるので恐らく大丈夫だと思うが、油断は禁物だ。わたしも改めて作り方を確認しておく。
「――説明は以上になります。それでは皆様、本日もよろしくお願いします」
バニラが説明を終えると、静かだった部屋の中が急に賑やかになる。周りは皆ワイワイと話しながらお菓子を作っており、とても楽しそうだ。これはわたし達も負けていられない。わたしは両手を握りしめるとスピネルの方へ顔を向けた。
「よし、頑張りますよ! スピネル!」
「気合十分だな、クリス。それじゃあ作るとするか」
「はい、一緒に美味しいお菓子を作りましょうね! ……あれ?」
スピネルに元気良く返事をしてからテーブルに視線を向けると、見慣れない道具があることに気が付いた。わたしは両手でそれを持ち上げると、色々な角度から見回してみた。
「これは一体何でしょう? スピネルは知っていますか?」
「俺もこの魔道具は知らないな……」
どうやら魔道具のようだが以前セレスタお姉様とお菓子を作った時には、こんな魔道具は使わなかった。隣で見ていたスピネルも分からないようで、わたしと同じように首を傾げている。
その魔道具は平べったい三つの円盤が横に並んだような形をしていた。中央の円盤には渦巻きのような絵が描かれており、左右の円盤には小さな魔石がついている。見た目からしてこの左右の魔石に触れることで作動するようだが、一体お菓子作りのどこでこの魔道具を使うのだろうか。
「う~ん……分からない物は仕方ありませんね、バニラに確認してみましょう!」
このまま二人で首を傾げていても仕方がないので、わたしは教室内で学生達のお菓子作りを見て回っているバニラに声をかけた。
「バニラ、少しよろしいでしょうか?」
「いかがなさいましたか? クリスティア殿下」
わたしの声に気が付いたバニラがテーブルへと近づいてくる。
「この魔道具の使い方が分からないのですが……」
「ああ、それでしたら『攪拌の魔道具』ですね。お菓子の材料を混ぜるのに使う魔道具ですよ。便利そうだったのでロキオン様のお店で一つだけ買ってみたのです」
わたしがテーブルの上に置かれた魔道具を指差すと、バニラは微笑みながら魔道具について説明してくれた。どうやらこの正体不明の魔道具は『攪拌の魔道具』と言うらしい。ロキオンの魔道具はわたしも全て確認したわけではないが、バニラはこの魔道具も購入していたようだ。
「使い方を説明しますので少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか?」
「もちろんです! よろしくお願いします!!」
「かしこまりました」
そう言うと準備のためバニラは一度わたし達のテーブルから離れ、少しした後ボウルを抱えて戻って来た。
「お待たせしました」
「わざわざありがとうございます、バニラ! それより、そのボウルには何が入っているのですか?」
わたしが好奇心からバニラの手元にあるボウルを覗くと、中にはテーブルの上に並んでいるものと同じクッキーの材料がまとめて入っていた。しかし、これはわたしの知っているクッキーの作り方とは違う気がする。ボウルの中身を見たわたしは首を傾げる。
「あれ? 以前お姉様とクッキーを作った時は材料をそれぞれ混ぜていたような記憶があるのですが……」
「ええ、おっしゃる通りです。普通に作るのであればそれが正しいです」
「つまり『攪拌の魔道具』があれば、その手順を省略できると言うことか?」
「はい、その通りです。その理由を今からお見せしますね」
そう言ってバニラは『攪拌の魔道具』の中央部分、渦巻きの描かれた円盤の上に自分の持っていたボウルを乗せ、左右の円盤の魔石に手を当てて魔力を流し始める。
「おお……」
「粉がぐるぐる回っています!!」
バニラが魔力を流し始めると中央に乗せられたボウルの中では風魔法が発動しているのか、材料がぐるぐると切り刻まれながら混ざり合うように回転し始めた。しばらくそのままにしておくと、ボウルの中に入っていた材料は一つにまとまっていき、あっという間にクッキーの生地が完成してしまった。
「これでクッキーの生地は完成になります」
「あっという間に出来てしまいました……凄いです!!」
「喜んでいただけたようで私も嬉しいです」
『攪拌の魔道具』を実演してくれたバニラは満足そうに微笑みを浮かべている。以前セレスタお姉様と一緒に作った時は結構時間がかかったので、こんなにも簡単に生地が作れてしまうのは驚きだ。
「これがあればたくさんお菓子を作ることが出来ますね!」
「はい。今日は簡単なクッキーにしましたが、練習していけば他のお菓子も楽に作れるようになると思います。そうすればカフェに来てくれたお客様にももっと喜んでもらえますね」
「もちろんです!」
そう口にするバニラの目はキラキラと輝いており、人を喜ばせるためにお菓子を作りたいという気持ちがよく伝わってきた。バニラは本当にお菓子作りが大好きなようだ。
「それでは私は失礼しますね。また何かございましたらお声がけください」
「はい、ありがとうございました! わたし達も頑張って美味しいお菓子を作ります!!」
わたし達のテーブルから離れたバニラは他に困っている学生がいないか探すため、再び教室の中を歩き始めた。バニラがあれだけ頑張っているのだ、わたし達も負けてはいられない。
気合を入れ直したわたしは隣に立っているスピネルを見上げる。
「スピネル! わたし達も頑張りましょう!!」
「そうだな。それじゃあ早速作るとするか」
「はい!」




