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クリスは楽しく過ごしたい!  作者: かるた
第三章 大魔法祭を楽しく過ごしたい!
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魔導箱の開き方

「魔導箱ですか?」

「ああ、良く見えるようにここに置くぞ」


 聞き覚えのない魔道具の名前にわたしが首を傾げていると、ロキオンは笑顔で魔導箱をテーブルの上に置いた。


 コトリという可愛い音に反応し、皆がテーブルの上に置かれた箱に目を向ける。


 見た目は細かで綺麗な装飾がされた箱にしか見えないが、これが本当に魔法を練習するための魔道具なのだろうか。


 魔導箱をじっくり確認しようとわたしがテーブルへ近づくと、横からレオナの弾んだ声が聞こえてきた。


「まあ! 随分と可愛い箱ですわね!」

「ええ、これなら大事な物を入れるのにも良さそうですね」

「確かにそうですね! ロキオン、開けてみても良いですか!?」

「ああ、どうぞ」


 レオナやバニラと話しながらロキオンに尋ねると、彼はニヤニヤと笑いを堪えるような顔で箱を開ける許可をくれた。


 わたしにはロキオンの表情の意味は良く分からなかったが、皆も楽しみにしているようなので、彼のことは気にせず魔導箱を開けてみることにした。


「それでは早速……ってあれ?」


 ロキオンの許可を得たわたしは皆の視線を受けながら箱の蓋部分に手をかける。そして、ぐっと力を込めて箱を開けようとしたところで蓋が全く開かないことに気が付いた。


「おかしいですね……」


 わたしの開け方が悪いのかと思い、角度を変えたり力を強めたりするが蓋はうんともすんとも言わない。


「ダメです、上手く開きません……」

「貸してみろ、クリス。もしかしたらクリスの力が弱いだけかもしれない」

「分かりました! お願いします!」


 わたしではどうしようもなさそうなのでスピネルに箱を手渡したが、スピネルも上手く開けられないようで首を傾げている。その後もレオナ、バニラ、ウィルが順番に箱を手に取るが、全員箱を開けることは出来なかった。


「これは一体どういうことでしょうか……?」


 不思議に思ったわたし達は全員でロキオンの方へと目を向ける。


「ははは、済まない。皆がどんな反応するかと思ってしばらく見てたんだ」


 そう言って笑いながら魔導箱を手に取ると、ロキオンはわたし達ではびくともしなかった蓋を簡単に開ける。


 その時ほんの一瞬だったが、魔力が流れてカチリという音が鳴ったのをわたしは見逃さなかった。


「なるほど! 魔力を流さなければ開かなかったのですね!」

「ああ、決められた通りに上手く魔力を流さないと開かない仕組みになっているのさ。これなら楽しく魔力制御の練習が出来るだろう?」


 ロキオンは笑いながら魔導箱の説明をすると、わたし達にも見えるよう蓋を開けたままテーブルの上に魔導箱を置いてくれた。


 残念ながら中身は空っぽだったが質素ながらもしっかりとした作りをしているので、バニラの言っていた通り大事な物を入れるとちょっとした宝箱にもなりそうだ。


「へえ、面白いな……」

「これならわたくしも欲しいですわ!」

「ロキオン! もう一度試してみても良いですか!?」

「ああ、構わないぞ。ただ……クリスに開けられるかな?」


 挑戦的にそう言うとロキオンは再び魔導箱の蓋を閉じる。カチリという音が聞こえると、その後はロキオンが蓋を開けようとしてもびくとも動かなくなった。


「さあ、どうぞ。是非挑戦してみてくれ」

「そこまで言われてはこちらも黙っていられませんね……スピネル! お手本を見せてください!!」

「俺か!? 別に挑戦するのは構わないが……」


 わたしの指名を受けたスピネルは驚きながらも楽しそうな様子で魔導箱を手に取った。


 最初は魔導箱の使い方が分からなかったので開けられなかったが、先ほどロキオンが魔力を流すところを見ていたので、恐らく今のわたしが挑戦したらすんなりと開いてしまうだろう。


 なので今回はわたしに次いで魔法の扱いが得意なスピネルに魔導箱へ挑戦してもらったというわけだ。


「ん……あれ? 上手くいかないな……」


 スピネルは首を傾げながら魔力の流し方を試行錯誤しているようで、唸りながら魔導箱を両手で持ち上げて回したりしている。


「こうじゃないのか……だとしたらこうか?」

「箱全体に魔力を流していくと魔力が通りやすい場所が見つかるはずだ。それが鍵になっているからまずはそこを探してみてくれ」

「分かった。やってみる」


 ロキオンの助言を受けながら数分ほど経っただろうか、カチリという音がして魔導箱の蓋がゆっくりと開いていく。どうやらスピネルは魔導箱を開けることに成功したようだ。


「ふう、ようやく出来た……」


 スピネルは大きく息を吐いて、手に持った魔導箱をゆっくりとテーブルに置く。


 わたしは無事魔導箱を開けられたスピネルに労いの言葉をかける。


「やりましたね、スピネル! 凄いです!」

「ああ! 結構集中したから疲れたぞ……」


 スピネルは魔導箱が開いたことに安堵の息を吐く。よほど集中していたのだろう。今は達成感よりも疲労感の方が強いようで、額にも少し汗が浮いている。


「驚いたな。まだスピネルには難しいと思っていたんだが……」


 助言はしていたが開けられるとは思っていなかったようで、ロキオンは目を丸くしてスピネルと魔導箱を交互に見る。


 スピネルが魔導箱を開けられたのは、わたしとしても自分のことのように嬉しい。この機会にスピネルの凄さをロキオンにも知ってもらおう。


「どうですか! スピネルは凄いんですよ!」

「えっへん! 凄いでしょう!」


 わたしとむーちゃんが胸を張ってそう言うと、ロキオンは少し呆れたような顔でちらりとこちらに目を向ける。


「どうしてクリスが得意気なのかは分からんが確かに驚いた。これならもう少し難易度を上げても良さそうだな」


 ロキオンは小さく呟くとテーブルの上にある魔導箱を軽く撫でて蓋を閉じる。


「他の魔導箱を持ってくるから少しの間待っていてもらえるか? 魔導箱の開け方が知りたければスピネルに聞いてくれ」


 そう言い残すとロキオンは再びお店の奥へ引っ込んでいった。また別の魔導箱を探してきてくれるようなので魔導箱に挑戦して待つことにしよう。


「それではわたしもやってみましょうか!」


 わたしはテーブルの上にある魔導箱に目を向ける。スピネルも開けることが出来たので、今度はわたしが挑戦する番だ。


「待て、クリスは後回しだ」

「え?」


 気合も十分に魔導箱へと手を伸ばすと、スピネルから静止の言葉が飛び出した。


「俺が出来てクリスに出来ないわけがないからな。まずはレオナに試してもらおう」


 スピネルはそう言うと魔導箱をレオナに渡す。レオナはきょとんとした顔でわたしのことを見つめてくる。


「殿下ではなく、わたくしが先でいいんですの?」

「購入するつもりなら、今のうちに練習するのも悪くないと思うんだ。ロキオンが難しい魔導箱を持って来てくれるみたいだし、クリスにはそっちの方が良いだろう?」

「そうですね……」


 スピネルの言う通り、恐らくわたしならこの魔導箱は開けることが出来るだろう。それならばレオナに練習してもらった方が良いのかもしれない。


 それにスピネルの言う通り、高難易度の魔導箱にも興味があるのだ。同じ初めてなら折角なので難しい魔導箱に挑戦したいと思う。


「そういうことでしたら大丈夫ですよ! わたしは難しい魔導箱に挑戦させてもらいます!」

「ありがとう、クリスならそう言うと思ってた。それじゃあレオナ、早速試してみようか」

「分かりましたわ! ありがとうございます、クリスティア殿下、スピネル様!」


 わたし達の言葉を聞いたレオナは目を輝かせながら魔導箱を見つめている。レオナが嬉しそうなので、わたしも先を譲った甲斐があったというものだ。


 それからしばらくの間、レオナがスピネルに教わりながら魔導箱に挑戦していると、両手に魔導箱を持ったロキオンがお店に戻って来た。


「遅くなって済まない。中々難しい魔導箱が見つからなくてな……」

「いえ、大丈夫ですよ! 今はレオナが魔導箱に挑戦しているところです!」

「ほう……楽しんでもらえてるようで何よりだ」


 わたし達が魔導箱の周りに集まっているのを見て、ロキオンは嬉しそうに頷く。


 ロキオンはそのまま接客用のカウンターに魔導箱を並べながら、わたし達へと声をかける。


「スピネルとクリスはこっちに挑戦してみないか?」

「少し待ってくれ、ロキオン。レオナ、もう大丈夫か?」

「ええ、何とか分かってきたところですわ! もうしばらく練習させてくださいませ!」

「分かった。頑張ってくれ」


 まだ魔導箱に挑戦しているレオナの力強い言葉を聞いて、大きく頷いたスピネルはわたしの方へ顔を向ける。


「それじゃあクリス行こうか」

「はい! わたしもスピネルには負けていられません!!」

「おお、二人ともやる気満々だな……」


 レオナ達から離れてわたし達はロキオンが並べた魔導箱の元へと向かった。


 ロキオンが新しく持ってきた魔導箱は二つあり、一つは古びた小さな魔導箱、一つは先ほどわたし達が挑戦した物より少し大きな魔導箱だ。


「二つもあるんですね! 楽しみです!!」

「ああ、どっちが難しいんだろうな」


 わたし達が期待に目を輝かせていると、一度咳払いをしてロキオンは大きな方の箱に手を置いた。


 ロキオンはこの魔導箱に相当な自信があるようで、随分と得意気な顔をしている。


「こっちの大きな魔導箱がおすすめだな。程良い手応えを感じるように作ってある」

「へえ……」


 スピネルは魔導箱の説明を聞くと、ちらりとわたしに目を向ける。


「クリス、出来そうか?」

「もちろんです! 必ず開けて見せます!!」


 わたしもスピネルの言葉で気合が入ったので、意気揚々と魔導箱へ手を伸ばす。すると慌てた様子でロキオンがわたしのことを止めてきた。


「おい、ちょっと待ってくれ。スピネルじゃなくてクリスが挑戦するのか?」

「はい! 頑張りますよ、ロキオン!!」

「いや、そうじゃなくて……大丈夫なのか?」


 ロキオンは不安そうな顔でこちらを見てくるが、わたしには彼が何を心配しているのか良く分からない。わたしが首を傾げていると、スピネルが代わりに返事をしてくれた。


「心配しなくても大丈夫だ、ロキオン。クリスは俺より魔法が上手いからな」

「何? そうなのか?」

「わたしもスピネルと一緒に勉強していますからね! 魔法は大の得意です!」


 わたしが胸を張ってそう答えると、ロキオンは安心したようにホッと息を吐く。


 どうやらロキオンはわたしの腕前を心配していたようだ。確かにこのお店に来てから魔法は使っていないので、ロキオンが不安に思うのも無理はないだろう。


「うーん……それならクリスにやってもらうか。楽しみにしてくれたみたいだしな」


 スピネルの話を聞いたロキオンは納得したような顔をして、大きい魔導箱をこちらに差し出してきた。


「やり方はさっきスピネルが開けた魔導箱と同じだ。出来そうか?」

「それなら大丈夫だと思います!」


 先ほどは止められてしまったが、今は目の前の魔導箱への挑戦を阻む者は誰もいない。わたしは魔導箱に手を伸ばして、早速『精神活性』を発動する。


「それではいきます!」


 まずは先ほどスピネルが受けていた助言通り、魔導箱の構造を確認するために軽く魔力を流してみることにした。蓋に手を当てると、魔力を全体に行き渡らせていく。


 すると、箱の一部に魔力が通りやすい場所を見つけたので、そこを中心に魔力を多めに流す。それにより、さらに内側まで魔力が通るようになっていくようだ。


 この魔力が通りやすい場所がロキオンの言っていた鍵なのだろう。そう感覚的に理解したわたしはどんどんと内側へと魔力を流していく。


 二度、三度と鍵を開けていくうちに段々と楽しくなってきて、魔力を流す速度も上がっていく。何度目かの鍵を開けるとカチリという音が室内に響き、魔導箱はその口を大きく開けた。


「ふう、何とか開けることが出来ました……!」


 きちんと箱が開いたことを確認して、わたしが魔導箱から離れると横からスピネルの拍手が聞こえてきた。


「おめでとう、クリス。早かったな」

「ありがとうございます、スピネル! スピネルもやってみますか?」

「そうだな、折角だから俺も試してみるか。なあロキオン、俺もやってみていいか?」


 わたしとスピネルが喜びの声を上げてロキオンの方を見ると、彼は呆気にとられた様子でぽかんと口を開けている。


「どうかしましたか? ロキオン」


 わたしが声をかけるとロキオンはハッと正気に戻った。こちらを見つめるその目には驚きが含まれている。


「あ、ああ。済まない。こんなに早く出来るとは思わなかったから驚いただけだ……」

「そうですか? 先ほどのスピネルと同じくらい時間がかかってしまったので、わたしもまだまだだと思っていたのですけど……」


 わたしが首を傾げていると、その横ではスピネルが魔導箱に手を当てて溜息を吐いている。


「おい、クリス。こんな難しい魔導箱は俺じゃすぐには開けられないぞ」

「ええ! どういうことですか!?」


 わたしが驚いてロキオンを見ると、ロキオンはバツが悪そうに頬を掻いている。


「あー、済まない。クリス、スピネル。実はその魔導箱はさっきのと比べてもかなり難しいんだ。まさか本当に開けられるとは思わなくてな……」


 どうやらロキオンは開けられそうにない魔導箱を持って来て、わたし達をぎゃふんと言わせるつもりだったようだ。


「ロキオン……」

「じー……」


 わたしがじっとりとした視線をロキオンに向けると、近くを飛んでいたむーちゃんも真似してロキオンを見つめ始めた。


 少ししてわたし達の視線に耐え切れなくなったのか、ロキオンは両手を上げて軽く頭を振る。


「悪かった! 悪かったからそんな目で見ないでくれ!」

「これに懲りたら俺達をからかうのはやめてくれよな……」


 呆れた様子のスピネルがロキオンに文句を言ってくれたので、わたしからは何も言わなくていいだろう。全くロキオンにも困ったものだ。

すみません、終わりませんでした。

次こそは必ず学園に帰ります。

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